「docomo Open House'23」で披露された最新技術 6G時代のコミュニケーションから、触覚共有、羽根のないドローンまで(1/2 ページ)
オンラインで開催中の「docomo Open House'23」に先駆けて、報道陣に、リアル会場での展示を公開。5Gやその次の世代の通信規格「6G」に向けたネットワーク技術、昨今注目されているメタバースに関する新たな取り組みも披露。触覚を再現する人間拡張の新たな取り組みも興味深かった。
NTTドコモは2023年2月2日から2月28日まで、同社の先進技術を中心とした取り組みを紹介する「docomo Open House'23」をオンラインで開催しているが、その開催に先駆けて同社は報道陣に、リアル会場での展示を公開。5Gやその次の世代の通信規格「6G」に向けたネットワーク技術だけでなく、昨今注目されているメタバースに関する新たな取り組みも披露するなど、幅広い分野の研究や新技術が勢ぞろいした中から主な取り組みを紹介していこう。
メタバースの課題解決に向けた技術を詰め込んだ「MetaMe」
今回のdocomo Open HouseでNTTドコモが最も力を入れていたのは、メタバースの技術開発だ。実際、同社は2023年2月1日に新しいメタコミュニケーションを体験する「MetaMe」というサービスを開発、Relicという企業から2023年2月中にβ版を先行提供するとしている。
イベント会場では、常務執行役員(CTO) R&Dイノベーション本部長である谷直樹氏が、MetaMeの開発経緯や狙いについて説明。谷氏によると、メタコミュニケーションは6G、そしてNTTグループが取り組む光技術を軸とした新しい固定ネットワーク「IOWN」が導入される時代に向けた新たなコミュニケーションであり、共感や貢献などの価値交換を通じた新しいアイデンティティーやコミュニティーを形成するものになるという。
だが、メタコミュニケーションを実現する上では、多くの人が同じ空間に同時接続できないことや、他の人と偶発的な会話のきっかけを作り出すのが難しいこと、そしてユーザー同士が継続的につながってコミュニティーを形成するに至るインセンティブが少ないことなどが課題になっていると谷氏は話す。そこでNTTグループの技術を活用し、これらの課題を解決する場として開発を進めてきたのがMetaMeとなる。
MetaMeの見た目は3D空間上でアバターを通じコミュニケーションする、一般的なメタバースのサービスに見えるが、先に挙げた課題を解決する複数の技術が組み込まれている。その1つ同時接続数の課題解決に向けた技術だ。
従来のメタバースサービスではクラウドの負荷を考慮し、参加者が多い場合は空間を複製してユーザーを分割したり、空間自体を分割したりするなどの対応が取られ、実空間のようにユーザーが同じ体験を共有できないことが弱点となっていた。そこでMetaMeでは、同一空間上で不特定多数のユーザーを収容する仕組みを実現、1万人を同時に収容して同じ体験を共有できる空間を実現したという。
もう1つは、コミュニケーションの課題解決に向けた技術である。MetaMeでは利用者が動物などの「ペット」を持つことができるのだが、谷氏によるとそのペットに発話内容や他人との関係性、表情などから人の内面を理解する「価値観理解技術」と、それをもとに解析した情報を用いて高精度なマッチングを実現する「行動変容技術」が導入されているという。
そしてペットが自分と相性の良い人を見つけて案内してくれたり、他の人のペットと話をして、話が合いそうだと思ったらフレンド申請をしたりできるとのこと。価値理解や行動変容などの技術を、ペットを通じて提供することにより、より自然な形でコミュニケーションの輪を広められるのが特徴だ。
触覚を再現する人間拡張の新たな取り組み
もう1つ、NTTドコモが6G時代に向けて力を入れているのが、人間の感覚をネットワークで拡張する「人間拡張基盤」だ。人間拡張基盤は2022年のdocomo Open Houseでも打ち出されたものだが、今回はその新たな取り組みとして「FEEL TECH」が公開されている。
これは人間拡張基盤を通じ、人がモノに触れたときの触覚を、相手の感覚に合わせて共有するというもの。今回披露されたデモは事前に取得した触覚を人間拡張基盤、そして触角を再現する専用のデバイスを通じて他の人に伝えるというものだ。
専用デバイスは半球型のものを2つ組み合わせた形状で、それらを両手に持つと目の前の映像に合わせてデバイスが振動し、触覚を再現してくれる。実際に試してみると、バドミントンのラケットを振ったり、琴を演奏したり、髪を切ったり……と、さまざまな映像に合わせてデバイスが適切に振動し、視覚と触角が一体となることで自分が実際に触れているかのような感覚を味わえる。
映像によっては左右の手が入れ替わるなどして触感と映像がリンクしなくなり、混乱してしまうこともあったが、布の手触りなどシンプルな触覚は非常にリアルな感覚を得ることができた。ちなみにこのデバイスを利用する際は、事前に自身がどの形の振動を感じやすいかチェックする必要があるのだが、これはチェック内容から個々に応じた感度の特性を把握することで、より感じやすいよう触覚を調整するためだという。
関連記事
ドコモ、屋外建物の足元エリア化手法を拡充 透過型メタサーフェスでミリ波帯がつながりやすく
NTTドコモは屋内のミリ波帯(28GHz帯)の電波をフィルム形状の「透過型メタサーフェス」で曲げ、屋外の建物の足元をエリア化する実証実験に成功。設置が容易かつ透明化も可能で、他の周波数帯に影響を与えずに利用できる。ドコモとYKK APが「電波の窓」を開発 電波品質改善と高断熱化を目指す
NTTドコモとYKK APは、エアロゲル素材を用いた「電波の窓」の実証実験を開始。高断熱化に伴い高周波の電波が屋内へ入りにくくなる課題を解消すべく、電波品質の改善と高断熱化の両立を目指す。モノに触れた感覚を共有できる「FEEL TECH」 6Gの超低遅延で実現、ドコモらが開発
NTTドコモらは人間の感覚をネットワークで拡張可能にする「人間拡張基盤」で、モノに触れた時の触覚を相手の感じ方に合わせて共有する技術「FEEL TECH」を開発した。ドコモ、映像投影できる小型プロジェクターを搭載した「羽根のないドローン」開発
NTTドコモは、機体に搭載したプロジェクターで映像を表示できる新型機体「羽根のないプロジェクションドローン」を開発。安定した飛行ができるよう推進力を向上させ、投影映像のリアルタイム伝送を実現している。宇宙に自律的な通信インフラを ドコモ5G Evolution & 6Gの取り組み
「ワイヤレスジャパン 2022」が5月25日から27日まで開催された。26日にNTTドコモの常務執行役員(CTO) R&Dイノベーション本部長の谷 直樹氏が講演。「サステナブルでWellbeingな社会の実現に向けて」と題し、5G、さらに6Gに向けたドコモの取り組みを紹介した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.