KDDIのメタバースサービス「αU」は何が新しいのか? ビジネスとして成功するカギは?(1/3 ページ)
KDDIは3月7日、新しいメタバース・Web3サービスとして「αU(アルファユー)」の提供を開始した。まずは5つのサービスを提供し、仮想空間でライブやショッピングなどを楽しめる。3年間で少なくとも1000億レベルの投資を行うという。
KDDIは3月7日、新しいメタバース・Web3サービスとして「αU(アルファユー)」の提供を開始した。発表会ではKDDI 代表取締役社長の高橋誠氏や各サービスの担当者、パートナー企業が登壇し、コンセプトやサービス内容を紹介した。
リアルとバーチャルの線引きはもうない
KDDIは「KDDI Digital Twin for All」というコンセプトで、全てのものをデジタルツインで実現するという取り組みを進めている。デジタルツインとは、リアルの世界で収集したデータを使ってバーチャルの世界でシミュレーションし、そのシミュレーション結果をリアルの世界に適用することによって、リアルの世界をよりよくしていこうというものだ。
高橋氏は、コンシューマービジネスでは「リアルとバーチャルを自由に行き来する世界になっていく」と予想している。
「若い方たちの生活を考えると、例えば友達同士で位置情報を常時共有していたり、つなぎっぱなしの『リモート同棲』を楽しんでいたりする。実はこれが、デジタルツインのコンシューマーサービスを作るための基本的な考えなのではないか。リアルの世界とバーチャルの世界の線引きは、もうないのではないか」(高橋氏)
そのような考えのもと始めるのがαUだ。コンセプトは「もう、ひとつの世界。」「もう、ひとつの」は「もう1つ別の」という意味ではなく、「既に1つの」という意味だ。
通信業界を振り返ると、3Gの世界はWeb1.0だった。このとき初めてモバイルインターネットが始まり、KDDIではEZWeb、ドコモではiモードが始まった。4GはWeb2.0の世界といわれ、スマートフォンが浸透し、動画配信などがどんどん拡大していった。そして5GはWeb3.0時代。KDDIは、この時代はメタバースが重要なキーになるという考えのもと、αUを提供するという。
5つのサービスから提供 仮想空間でライブやショッピングなどを楽しめる
αUでは、まず5つのサービスを提供する。
中心となるのは「αU metaverse」だ。バーチャル空間に再現された渋谷や大阪の街を舞台に、アーティストによる音楽ライブや、利用者同士での会話を楽しむことができ、さまざまなコミュニティーに参加できる。ユーザーはアバターとなって、音声でコミュニケーションできるのが特徴。より自然な会話ができるようにこだわったという。
αU metaverseでは、バーや居酒屋、カフェといったスペースに集まってコミュニケーションが可能。カラオケを楽しむこともできるという。音楽ライブや著名人のトークライブ、クリエイターの展覧会なども開催される。
街とは別に用意された自分の部屋(マイルーム)は、家具や購入したNFTアイテムなどで飾って自分らしさを表現できる。
2つ目は「αU place」。これは「デジタルツインでショッピングが体験できるもの」(高橋氏)で、リアルの店舗や商品をバーチャル上に再現する。ユーザーは現実の街で買い物するのと同様に、αU place内を散策し、店舗に入店することができる。ビデオ通話で店舗スタッフから商品説明も受けられる。
「αU market」は、デジタルアート作品(NFT)などが購入できるマーケットプレース。ユーザーはNFTを購入するだけでなく、自身の作品を出品することもできる。
そして「非常に重要になってくる」と高橋氏が指摘するサービスが「αU wallet」で、購入したNFTや売買に使用する暗号資産の管理が可能だ。将来的には、複数のメタバース間を行き来するIDとして重要な役割を担うことになるという。「簡単、安心な次世代のウォレットを作っていく」(高橋氏)とした。
「αU live」は、現実では体験できないような特別な演出が楽しめる次世代のライブ体験サービスだ。360度・自由視点映像で視聴できる。アーティストと会場をバーチャル空間に再現し、バーチャルヒューマン、リアルで活動するアーティスト問わず、さまざまなライブが楽しめる。これはGoogleとの技術連携で実現されているという。
新しいプラットフォームにふさわしいアーティストを積極的に創出したいとの考えから、アソビシステムとActiv8が設立した合弁会社ANNINと提携。新しいスターを生み出し、世界に向けて配信していきたいと意気込んだ。
当初はこの5つのサービスでαUはスタートするが、今後は「どんどんサービスを増やしていく。Web3時代の新しいプラットフォーム上で、新しい経済圏が広がっていくようなイメージをしていただければ」(高橋氏)と語った。
オープンでグローバルなメタバースへ
αUはオープンでグローバルなメタバースを目指す。そこで必要になるのがパートナーだ。「新しい体験を作るため」「世界に広げるため」「クリエイターを育てるため」に協力していく企業としてGoogle CloudとWPP、ANNINが紹介された。
Google Cloudとは、最新のクラウド技術とYouTubeの活用で、新感覚のライブ体験を共同創出する。高橋氏は「メタバースの世界、アプリケーションの中で、こういうライブを実現しようとすると、どうしても無理がある。今回はクラウドレンダリングの技術を使って、より新しい感覚、没入感のあるライブを届けられると思う」と期待した。
WPPとは、発表会同日、戦略的パートナーシップの基本合意書を締結した。「彼らには、われわれがメタバースで作り上げていこうとしている世界観を世界に広げていっていただく」(高橋氏)という。2023年度上期にαUをグローバル展開する他、日本以外の地域でのビジネスモデルを構築していく。
「botみたいなものがバーチャル空間に存在して、そこにChatGPTみたいなものが搭載されると、bot自体が人間性を持てる。それに加えて、ジェネレーティブAIを活用すると、全ての言語を話せるバーチャルアバターが出現して、グローバル展開時に活躍する。こういうことをWPPと先週、ロンドンで話をしてきた。グローバル展開していく際の非常に重要なパートナーとなる」(高橋氏)
さらに、αUと同じくZ世代をターゲットにしたサービスということで、povoの新たなトッピング「SNSデータ使い放題(7日間)」を3月下旬に期間限定で提供することも発表した。
3月8日から12日にかけて東京・渋谷でαUの各サービスを体験できる「αU spring week 2023」が開催される。「Hz Shibuya」ではサービスを実際に体験できるとともに、注目のクリエイターによる特別展示も行われる。「渋谷 ZERO GATE」では、深澤直人氏がデザインした「METAVERSE WATCH concept」が3D映像で展示されている。
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