「MNPワンストップ方式」がモバイル業界に与える影響 流動性はどこまで高まるのか:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
総務省が導入を後押ししていた「MNP(携帯電話番号ポータビリティ)ワンストップ方式」が、5月24日に開始される。当初、この仕組みを導入するのはドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの大手キャリア4社が中心だが、MVNOでは日本通信もここに参画する。手続きの簡易化によってMNPが促進されれば、競争激化の契機になりそうだ。
総務省が導入を後押ししていた「MNP(携帯電話番号ポータビリティ)ワンストップ方式」が、5月24日に開始される。当初、この仕組みを導入するのはドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの大手キャリア4社が中心だが、MVNOでは日本通信もここに参画する。また、ソフトバンクがY!mobile回線を提供し、回線卸の形でサービスを提供しているジャパネットたかたも、MNPワンストップ方式の対象になる。
これまで、MNPで電話番号を他キャリアに移すには、転出元で予約番号を取得した後、転入先でその番号を入力するなどして、新規契約する必要があった。ユーザーにとって、文字通り二度手間になっていた。MNOワンストップ方式が導入されると、移りたいキャリア側で手続きするだけで電話番号をそのまま移せるようになる。手続きの簡易化によってMNPが促進されれば、競争激化の契機になりそうだ。
MNPのハードルを取り除くワンストップ化、各社がオンラインで対応
総務省は、2020年に公表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」で、MNPのワンストップ化を提案していた。その後、具体的な検討が進み、2022年にはワンストップ化の想定スケジュールが発表されていた。転出を予定しているキャリアに予約番号の発行を依頼する際に翻意を促す引き留めがあり、これが競争を妨げているというのが導入を決めたおおよその経緯だ。
2021年には、手数料を廃止するとともに、MNP予約番号発行時の引き留めを禁止。かつてはWebや電話で手続きを進めようとした際に、ポイントやクーポンが発行される例も散見されたが、ユーザーがMNPの意思を示した場合にはそれができなくなった。一方で、MNP予約番号は有効期間が15日間しかなく、転出先での対応状況によっては1週間程度しか猶予がないケースもあり、時間が限られていたユーザーには手続きが煩雑だった。MNPのワンストップ化は、そんな手間を軽減するための措置といえる。
MVNOによっては規模が小さく、システム的な対応がすぐにできないことや、ユーザー保護の観点から、現行の「ツーストップ方式」を併存させることも当時から決まっていた。MNP予約番号自体がなくなるのではなく、移転先のキャリアが移転元キャリアの用意したAPIから半自動でそれを発行できるようにするというのが、ワンストップ化の中身だ。
6社が発表したMNPワンストップ方式は、ここでの検討に沿った形で導入されている。対象となるのはオンライン契約のみで、店舗ではMNP予約番号の利用を継続する。例えばドコモの場合、ドコモオンラインショップやahamoの新規契約でのみ、MNPワンストップ方式が適用される。対応する6社の場合、相互に予約番号なしで転出・転入が可能になる。
総務省の「携帯電話ポータルサイト」には、その流れがイラストで記載されている。基本的には、移行先のキャリアで手続きするだけだが、申し込みの途中で契約中のキャリアのマイページにアクセスする必要もある点には注意が必要だ
2006年に開始されたMNPだが、利用率は低迷していた。調査会社MMD研究所が2023年3月に発表したデータでは、MNPの経験があるユーザーは全体の24.6%にとどまっていた。こうした状況の中、総務省がMNPするためのハードルを下げようとしているのは、この制度がキャリア間やキャリアとMVNO間の競争を促進することにつながるからだ。MNPで他社に移るユーザーが増えれば、料金値下げが起こる可能性がある。また、ユーザーを自社にとどめておくためのサービスが拡充するキャリアも出てくるだろう。
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