楽天モバイルとKDDIの思惑が一致した「新ローミング契約」 ただし通信品質の改善は未知数?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
楽天モバイルが5月12日に新料金プラン「Rakuten最強プラン」を発表した。最大の特徴は、KDDI回線を使うローミングエリアでの通信が、楽天モバイルの自社回線と同様、容量無制限になることだ。これで合算の人口カバー率は99.9%にになるが、注意点もある。
楽天モバイルとKDDIは、5月11日に新たなローミング契約を締結したことを発表した。これを受け、楽天モバイルは12日に記者会見を開催。新料金プランとして、「Rakuten最強プラン」を導入することを明かした。
同プランはこれまでと同様、既存ユーザーにも6月1日から自動で適用される。最大の特徴は、KDDI回線を使うローミングエリアでの通信が、楽天モバイルの自社回線と同様、容量無制限になることだ。ここでは、その特徴や新料金プランの提供に至った背景を解説しつつ、今度の行方を占っていきたい。
料金は据え置き、ローミング時の5GB制限は撤廃に
新料金プランと銘打たれたRakuten最強プランだが、ベースとなる料金自体は、2022年7月から提供してきた「UN-LIMIT VII」から変わっていない。3GBまでは1078円(税込み、以下同)、20GBまでは2178円、以降は無制限で3278円だ。楽天市場でのポイント付与率が最大2%上がる契約者特典も変わっていない。最大の特徴は、パートナー回線のローミングにある。
新規参入のため大手3社と比べて基地局が少ない楽天モバイルは、その穴を埋めるため、KDDIにローミングし、サービスを提供していた。この期限は、2026年3月に設定されている。一方で、当初から自社回線が比較的整備されていた東京、名古屋、大阪などの屋外はローミングをしていなかった。また、ローミング費用がかさんだこともあり、楽天モバイルは基地局整備を前倒しした上で、パートナーエリアを次々と終了していた。
ただ、楽天モバイルが4G用に使う周波数は1.7GHz帯のみ。800MHz帯などのいわゆるプラチナバンドと比べると浸透率が低い電波特性もあり、東京23区のような大都市圏でも、地下にある店舗や高層ビルなどで一部つながらないスポットが点在していた。また、都道府県単位で見るとローミングを縮小しているものの、人口の少ない地域などには、依然として楽天モバイル回線が提供されていないことがある。
こうした中、楽天モバイルとKDDIは新たなローミング契約を締結したことを11日に発表。新協定は6月1日に開始され、終了期間も2026年3月から2026年9月に約半年間延長された。既存のローミングエリアの期間を延ばしただけでなく、サービスイン当初から自社回線だけでエリアを構築していたいわゆる東名阪でも、新たにローミングを開始する。Rakuten最強プランは、この新ローミング協定を反映させたものだ。
ローミングエリアの変更に合わせ、パートナー回線接続時のデータ容量は5GBから無制限に拡大する。UN-LIMIT VIIまでは、楽天モバイル回線のデータ容量は無制限だった一方で、ローミング時には5GBという上限が設けられていた。この容量を超えると、通信速度は1Mbpsに制限される。同じ料金ながら、ユーザーがいるエリアによってネットワークの使い勝手が変わってしまっていたというわけだ。
楽天グループの会長兼社長三木谷浩史氏も「5GBを上回ったら1Mbpsに落ちるということだったが、かなりの方が(追加でデータ容量をチャージせず)1Mbpsの設定のまま使っていたが、そうなるとKDDI回線に行くと遅くなってしまう」と語る。「そのスロットリングがなくなるので、他社と同じ水準に持っていける」(同)というのが、新料金としてRakuten最強プランを導入する狙いの1つだ。
関連記事
- au網ありきの楽天モバイル「最強プラン」 三木谷氏「可及的速やかにネットワークを構築する必要はなくなった」
楽天モバイルが、新料金プラン「最強プラン」を6月1日より提供する。au網のローミングサービスの利用範囲を拡大し、6月以降に人口カバー率99.9%を達成するとしている。オンライン申込手続きをシンプルな手順で行えるサービス「ワンクリックお申し込み」も開始する - 楽天モバイル、新料金プラン「Rakuten最強プラン」発表 KDDI回線も無制限で利用可能に
楽天モバイルが5月12日、新料金プラン「Rakuten最強プラン」を発表。6月1日から提供する。パートナー回線(KDDI回線)の制限を撤廃し、無制限でデータ通信を利用可能になる。 - KDDIと楽天モバイルが「新たなローミング協定」を締結 東京23区などの繁華街もローミング対象に 期間は2026年9月まで延長
KDDI、沖縄セルラー電話、楽天モバイルの3社が、新しいローミング協定を締結したことを発表した。新協定ではローミングサービスの提供対象外だった東京23区、名古屋市、大阪市を含む都市部の繁華街で新たにローミングサービスを提供する他、既存の提供エリアにおける提供期限も延長している。 - KDDIが楽天モバイルを「新たなローミング協定」で救済? 高橋社長の見解は
KDDIが11日に実施した決算会見では、楽天モバイルと締結した新たなローミング協定への質問が殺到した。今回の協定は当初のローミング協定の内容を改定し、ローミングを行う場所を拡大する内容となる。 - 楽天モバイル“0円撤廃”で業界に波紋 常識を覆す新プランは受け入れられるのか
楽天モバイルが新たに発表したプラン「UN-LIMIT VII」への反響は、これまでとは様相が異なっている。ネットでは「改悪」との声が多く、料金プランが自動移行されることに対しても批判が集まっている。悪い意味で“常識を覆す”モットーを実行してしまった楽天モバイルだが、挽回のチャンスはあるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.