楽天モバイルとKDDIの思惑が一致した「新ローミング契約」 ただし通信品質の改善は未知数?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
楽天モバイルが5月12日に新料金プラン「Rakuten最強プラン」を発表した。最大の特徴は、KDDI回線を使うローミングエリアでの通信が、楽天モバイルの自社回線と同様、容量無制限になることだ。これで合算の人口カバー率は99.9%にになるが、注意点もある。
合算人口カバー率は99.9%に、東名阪でのつながりにくさも解消へ
もちろん、ローミングを再強化すれば楽天モバイルのエリアも広がる。楽天モバイル自身も急ピッチで基地局を建ててきたが、4月末時点での人口カバー率は98.4%にとどまり、限りなく100%に近い大手3社とはまだ開きがある。ローミング分を合算することで、この数値を99.9%まで引き上げることが可能だ。また、人口カバー率は国勢調査の500m区画で50%以上通信可能な場合の数値を積み上げて計算しているため、この指標に表れないエリアの違いもある。参入からまだ間もない楽天モバイルは、ここが弱い。
4月に楽天モバイルの代表取締役共同CEOに就任した鈴木和洋氏は、「定額で無制限に使えるのは本当に助かる、ポイントがもらえるのはうれしいという声がある一方で、やっぱり地方だとつながりが悪い、東京でも地下鉄や建物内、繁華街でつながりが悪いのでなんとか改善していただけないかというお声をいただいている」と語る。三木谷氏も、「(ユーザーの)加入ついては計画通りだが、一方で脱退(解約)がある。その理由のほとんどがカバレッジ」と語り、エリアの拡大が課題だったことを認める。
KDDIのパートナーエリアが広がり、しかもその際のデータ容量が無制限になるというのが、Rakuten最強プランの真骨頂といえる。ユーザーにとって、エリアの心配が少なくなることは朗報だ。三木谷氏は解約抑止効果に重きを置いていたように見えたが、エリアの広さが評判になれば、料金の安さと相まって、ユーザー数の拡大にも貢献するはずだ。同時に、楽天モバイルは楽天市場などの契約者情報とeSIMを使ったワンクリック契約を開始し、契約者獲得に向けアクセルを踏んでいく構えだ。
ただし、楽天モバイルのエリアがKDDIとイコールになるわけではない点には注意したい。KDDIによると、楽天モバイルにローミングで貸し出すのは、これまでと変わらず「800MHz帯のみ」(KDDI広報部)。ローミングを提供するエリアも、協定によって地域ごとに決められている。そのため、もともとローミングをしていない場所や、KDDIが他の周波数帯だけでエリア化している場所では、基本的には楽天モバイル回線につながる。その場所でもし、楽天モバイルもエリア化ができていなければ、圏外のままであることに変わりはない。
また、三木谷氏は「非常に混雑しているエリアがあり、繁華街(の通信品質を)どう解決するかが課題だった」としながら、その対策としてローミングに期待を寄せていた。一方で、KDDIは「局所的にトラフィックが多いところはローミングの対象外」(同)としており、あくまでエリア対策の一環であることを強調している。
実際、いくらKDDIとはいえ、800MHz帯のLTEは10MHz幅または15MHz幅しかなく、この周波数帯だけでは都市部のユーザーをさばくことは困難だ。局所的にトラフィックの多いターミナル駅周辺などで他社のユーザーを受け入れてしまうと、auやUQ mobile、povoのユーザーに悪影響を与えてしまう恐れもあり、ローミングの対象外にしているのは合理的だ。エリア対策にプラスに働くのは間違いないものの、通信品質に寄与するかは未知数といえる。
【訂正:2023年5月14日23時30分 初出時、「800MHz帯のLTEは10MHz幅しかなく」としていましたが、正しくは「10MHz幅または15MHz幅しかなく」でした。おわびして訂正いたします。】
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