「MNPワンストップ方式」がモバイル業界に与える影響 流動性はどこまで高まるのか:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
総務省が導入を後押ししていた「MNP(携帯電話番号ポータビリティ)ワンストップ方式」が、5月24日に開始される。当初、この仕組みを導入するのはドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの大手キャリア4社が中心だが、MVNOでは日本通信もここに参画する。手続きの簡易化によってMNPが促進されれば、競争激化の契機になりそうだ。
いち早く料金を改定した日本通信、大手キャリアの解約率は変化するか
相互接続でサービスを提供するMVNOとして、開始当日からMNPワンストップ方式に対応するのが日本通信だ。同社の代表取締役社長、福田尚久氏は「引き留めに対する大きな効果になる」と期待をのぞかせる。日本通信は、4月に日本通信SIMの「合理的みんなのプラン」を改定。料金は1390円(税込み)に据え置きのまま、データ容量を6GBから10GBに拡大した。また、1カ月70分の無料通話を含んでいた音声通話も、1回5分までの準通話定額を選択肢に加えている。
この合理的みんなのプランは、大手キャリアのメイン回線を乗り換える際の受け皿になる料金プランとして導入された。日本通信では、MNPワンストップ方式の開始を受け、そのニーズがさらに高まると判断したという。福田氏は「MNPのワンストップがなければ、このタイミングで出していなかったかもしれない。総務省で5月19日に発表することになったので、そこに向け、1カ月ぐらい前にローンチしておこうということで急きょ改定した」と経緯を振り返る。
MNPの利用促進に向けた総務省の各種施策は効果が徐々に上がり、市場の流動性が高まっている。その証拠になる指標の1つといえるのが、各社の発表している解約率だ。ドコモは、回線全体とは別に、スマートフォンや携帯電話の解約率を開示しているが、2020年3月期は0.44%、21年3月期は0.4%、22年3月期は0.53%、23年3月期は0.61%と、数値は徐々に上がっている。対するKDDIもau解約率からマルチブランド解約率に指標を変えた21年3月期が0.58%だったのに対し、22年3月期は0.85%、23年3月期は0.99%まで数値が上昇している。
ソフトバンクは主要回線全体とスマートフォンに限った解約率を開示しているが、前者は20年3月期が0.96%、21年3月期は0.93%とわずかに低下している一方で、22年3月期は1.1%まで上昇。5月に発表された23年3月期の数値も1.1%と高止まりしている。各社とも、解約の全てがMNPでの転出というわけではないものの、MNPの手数料無料化や引き留めの禁止などが、効果を発揮しているのは事実といえる。流出するユーザーの穴を埋めるには、新規契約を増やすしかない。競争が激化するのは、そのためだ。
MNPワンストップ方式の導入に合わせ、いち早く新料金プランや契約の簡易化を発表した楽天モバイルや日本通信だが、他社もここに対抗してくる可能性はある。ドコモは、「小容量のところについては、これからも激しい競争が続く」(井伊氏)として、エコノミープランの強化を示唆した。KDDIやソフトバンクは、対応策を明かしていないが、新規ユーザー獲得の主力となっているUQ mobileやY!mobileがどう動くのかに注目したい。
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