「Pixel Fold」は折りたたみスマホ市場を変える存在になるか? 実機を試用して見えた可能性:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
スマートフォンの“進化系”と目されてきたフォルダブル端末は、その存在感を徐々に高めている。日本で折りたたみスマホ市場をリードしてきたのはサムスン電子だが、ここにPixel Foldが加わる。“Google参入後のフォルダブルスマートフォン”の行方を占っていきたい。
いよいよ登場するPixel Fold、その真価はランドスケープの画面にあり
Pixel Foldは、Galaxy Z Foldと同様、閉じるとスマートフォン、開くとコンパクトなタブレットになるフォルダブル機構が最大の特徴。一方で、開いたときのメインディスプレイのアスペクト比はGalaxy Z Foldのそれとは大きく異なる。Galaxy Z Foldが縦長のままサイズを拡大しているのに対し、Pixel Foldは横長のランドスケープモードに画面が切り替わる。閉じたときと開いたときで、縦横の比率が逆転するというわけだ。
縦横だけの違いと思いきや、端末を手に取ってみると、その差が使い勝手に大きな影響を与えていることが分かる。例えばPC版のWebサイトは、一般的に、PCのディスプレイに合わせ、ブラウザを横長にしたときに最適化されている。縦を2列や3列に画面を分け、左右にリンクや周辺情報を配置しつつ、メインのコンテンツを中央に表示するデザインは多くのサイトでおなじみだ。ITmediaも例外ではなく、記事の右には広告やタイアップコンテンツ、アクセスランキングなどの情報が表示されている。こうしたサイトを閲覧する際に、横長のディスプレイは有利だ。
また、電子書籍アプリは、その多くがランドスケープモードに見開き表示を割り当てている。こうしたアプリをPixel Foldで使おうとすると、画面を開くだけで見開き表示に切り替わる。Galaxy Z Foldで同様のことをする際には、画面を開いたうえで、本体を回転させる必要があり、ひと手間増えてしまう。GmailやGoogleカレンダーといった、Google純正アプリにも、画面を分割するランドスケープモードのUIが備わっており、横長で使える利便性は高い。
一方で、横UIのないアプリを開くと、左右にいわゆる“黒帯”が表示されてしまうのが、横長ディスプレイならではのトレードオフだ。閉じたときのアスペクト比はGalaxy Z Foldより横長で、キーボードなどが十分なサイズで表示できる。細長くなってしまうGalaxy Z Foldでは、文字がはみ出したり、改行が入って別の要素と重なってしまったりと、アプリのレイアウトが崩れてしまうケースもあったが、Pixel Foldではそのような心配も少なくなりそうだ。
閉じたときに画面と画面がぴたりとつき、ほぼ隙間がないのもGalaxy Z Foldに対する優位性だ。このヒンジや折りたたみの機構は、本体の薄型化に貢献する。Pixelシリーズで培ってきたコンピュテーショナルフォトグラフィーも受け継がれており、暗所での描写が優秀なのも、差別化のポイントといえる。逆に、大画面を生かした手書き入力に対応している点は、Galaxy Z Foldに軍配が上がる。
【訂正:2023年7月1日9時40分 初出時、Galaxy Z Foldのみ防水対応とする記述がありましたが、誤りでした。おわびして訂正いたします。】
開いたときの画面が横長のランドスケープモードになるのは、Pixel Foldが初ではない。グローバル展開はしていないものの、OPPOのFind Nシリーズも初代モデルから同様の仕様を採用していた。一方で、Google純正モデルであるPixelでの対応は、アプリのエコシステムにとってもインパクトが大きい。Nexusシリーズのころとは異なり、Pixelシリーズはレファレンスモデルという位置付けではないものの、Googleの考えるタブレットなりフォルダブルスマートフォンはランドスケープモードが基本というメッセージになる。
実際、6月に発売したPixel Tabletも、横長のランドスケープモードで利用するよう設計されている。こうした端末に対応していくには、縦に長いUIではなく、画面の広さや幅を生かしたUIの開発が求められる。Google自身でスマートフォンを投入することで、画面サイズが可変するフォルダブル対応のアプリが増えるのは、ユーザーにとってもメリットになりそうだ。対iOSという視点で見たとき、こうした柔軟性はAndroidの強みになる可能性もある。
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