「Pixel Fold」は折りたたみスマホ市場を変える存在になるか? 実機を試用して見えた可能性:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
スマートフォンの“進化系”と目されてきたフォルダブル端末は、その存在感を徐々に高めている。日本で折りたたみスマホ市場をリードしてきたのはサムスン電子だが、ここにPixel Foldが加わる。“Google参入後のフォルダブルスマートフォン”の行方を占っていきたい。
Googleは、同社初のフォルダブルスマートフォン「Pixel Fold」の予約受付を6月20日に開始した。同モデルを取り扱う、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社でも、現在、予約をすることが可能だ。発売は7月下旬を予定。価格は販路によって異なるが、おおむね25万円から。ストアクレジットや自社経済圏のポイントを還元するキャンペーンも実施されている。
スマートフォンの“進化系”と目されてきたフォルダブル端末は、その存在感を徐々に高めている。この市場をリードしているのは、Galaxy Z FoldやGalaxy Z Flipシリーズを投入してきたサムスン電子。日本はもちろん、海外でもそのシェアは高く、フォルダブルスマートフォンは同社の寡占状態といえる。
一方で、中国メーカーを中心に、フォルダブル端末に参入する会社も増えてきた。Googleも、そんなメーカーの1社。サムスン寡占の市場に割って入ろうとしている。ここでは、Pixel Foldを試用した印象や現時点での市場動向を踏まえ、“Google参入後のフォルダブルスマートフォン”の行方を占っていきたい。
フォルダブル市場で先行できたサムスン、一方で海外では中国メーカー台頭の兆しも
サムスン電子が初代「Galaxy Fold 5G」を発売したのは、2019年のこと。発表後に構造上の欠陥が発覚し、一部機構の再設計を余儀なくされたが、紆余(うよ)曲折を経て市場に投入されている。日本では、auが独占提供して話題を集めた。当初は試験投入的な色合いも濃く、仕様はグローバル版に近かった。おサイフケータイに非対応だったのはもちろん、一部周波数も利用できなかった。
そこから世代を経るに従い、Galaxy Z Foldシリーズは徐々にその完成度を高めていく。第3世代目となる「Galaxy Z Fold3 5G」では、ついに防水やSペンでの手書きに対応。日本市場では、auに加えてドコモも取り扱うようになり、その販路を拡大している。おサイフケータイに対応したのも、Galaxy Z Fold3 5Gからだ。この端末の魅力は、閉じるとスマートフォン、開くとコンパクトなタブレットとして使えるところに集約される。
こうしたコンセプトをいち早く打ち出していたこともあり、日本ではフォルダブルスマートフォン市場はサムスンの独占状態になっている。フリップ型のGalaxy Z Flipまで含めたシェアは99.9%。モトローラも、フォルダブルスマートフォンとして「razr 5G」を2021年に発売したが、Galaxy Zシリーズには対抗できていない状況だ。スマートフォン全体の中でのシェアはまだ小さいものの、着実にその存在感を高めている。
グローバルでも、フォルダブルスマートフォンはサムスン電子の独壇場だ。米調査会社のDSCCが2023年2月に発表したフォルダブルスマートフォンのメーカー別シェアを見ると、2022年の第4四半期に、サムスン電子が8割以上のシェアを占めていたことが分かる。初代Galaxy Foldと同時期にフォルダブルスマートフォンの「Mate X」を投入したHuaweiも、2021年ごろまではサムスン電子に対抗できていた一方で、米国の制裁による影響もあり、シェアは急落。以降、サムスン一強状態が続いている。
先行者利益を生かしてシェアを高めているサムスンだが、競合も徐々にフォルダブルスマートフォンを投入し、結果を出し始めている。特に中国メーカーが、キャッチアップに余念がない。中でも影響力が大きいのは、OPPOだ。先に挙げたDSCCが5月に発表したデータでは、2023年第1四半期のサムスンのシェアが5割弱に急落。代わって、OPPOが2割以上までその比率を伸ばしている。
OPPOは、フォルダブルスマートフォンとしてFind Nシリーズを展開しており、フリップ型の第2弾となる「Find N2 Flip」は、お膝元の中国だけでなく、欧州でも発売。2023年2月に開催されたMWC Barcelonaでは、その発売イベントを開催した。Galaxy Z Foldと同じ横開き型のFind Nシリーズは、中国市場にとどまっているが、まずはユーザーの支持を集めつつあるフリップ型を国際展開した格好だ。フォルダブルスマートフォンの占める比率はまだまだ低く、新製品1つでシェアのバランスが大きく変動してしまう状況にあるといえる。
また、Huaweiからスマートフォン事業を引き継いだHONORも、MWCでグローバル版の「HONOR Magic Vs」を発表。同展示会では、こちらは、開くと6.45型の大画面になる横折り型のフォルダブルスマートフォンで、折りたたんだときに隙間ができず、薄さも12.9mmに抑えられている。同展示会では米国でのシェアが高いTECNOも、同社初のフォルダブルスマートフォンとして「Phantom V Fold」を発表。15万円前後と、縦折り型の端末の中では群を抜く安さをアピールしている。
他にも、海外ではXiaomiやモトローラといったメーカーがフォルダブルスマートフォンを続々と投入しており、サムスンの牙城を切り崩そうとしている。GoogleのPixel Foldも、そのような端末の1つだ。同モデルは、5月に米カリフォルニア州マウンテンビューで開催された「Google I/O」で発表され、日本市場にも導入される。Androidの本家ともいえるGoogle純正の端末なだけに、注目度は高い。
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