割引上限4万円に引き上げ検討にメーカーの本音は?――シャープ・小林繁通信事業本部長に聞いてみた:石川温のスマホ業界新聞
総務省が、省令などで制限している回線とひも付いた利益提供(≒端末代金の値引き)の上限額を税別2万円から4万円に引き上げる検討を進めている。メーカー視点に立つと、この増額検討はどう映るのだろうか。シャープの携帯電話端末事業の責任者に話を聞いてみた。
7月3日、シャープはスマーフォン「AQUOS」シリーズの新CM完成披露イベントを開催した。同社の通信事業本部、小林繁本部長に聞きたかったのが、「割引規制のルール変更についてどう思っているか」という点だ。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年7月8日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
総務省のワーキンググループでは現在、端末の割引上限規制を2万円から4万円に引き上げようとしている。当然のことながら、割り引きできる金額が増えると言うことで、メーカーにとっては追い風になるのではないだろうか。
小林本部長は「個人的な意見」としつつ「4万円になったら、例えばAQUOS senseシリーズなど、満足度の高いものを手軽な価格で手に入れられるようになる。メーカーとしてもブランドイメージを高めることができる」と期待する。
確かに、AQUOS wishシリーズは、割引上限が2万円ということで、誕生したといえる。そういったスペック的に制限のある機種よりも、AQUOS senseシリーズのように「これで十分」といえる満足度の高い機種を気軽に買えるようになるのは大きいだろう。
一方で、小林本部長は悲観的な見方もする。
「2万円の割引でもユーザーが端末を購入することをキャリアが理解している。いま、2万円で作れているのだから、わざわざ4万円のスマートフォンを作り、売る必要はないのではないかと考えてもおかしくない」というわけだ。
仮に割引上限が2万円から4万円になったとしても、現場では今後も2万円割引が常態化する可能性もゼロではないという。
キャリアとしても、「いかにARPUを上げるか」に腐心しているところもあり、本来であれば、サクサクと動く5Gスマートフォンを普及させ、ユーザーにデータを使いまくってもらうというのが本筋だろう。
本来であれば、割引上限規制は取っ払うべきだし、仮に4万円に改定されるのであれば、AQUOS R8やAQUOS R8 Proのようなハイエンドスマートフォンを普及させ、ARPUをじゃんじゃん上げる方向に持って行くのがキャリアのやるべき事だろう。
小林本部長は「特定の端末に対して大量の金額が投下される状況はあまり幸せにならない」と釘を刺した。このままでいくと、iPhone SEのような端末に4万円の割引が適用される一方で、他のAndroidスマートフォンは渋い割引設定ということになりかねないだけに、そこは避けるような仕組みが必要なのかも知れない。
関連記事
シャープに聞く「AQUOS R8 pro」「AQUOS R8」 2モデルに分けた意義、画期的な進化点
シャープが2023年夏に投入する「AQUOS R8 pro」「AQUOS R8」。見たままを表現できるカメラを備えるR8 proに対し、ハイエンドながら性能を抑え、気兼ねなく使えるモデルのがR8となる。そんな2モデルの違いや開発意図、カメラ、ディスプレイについて、シャープで設計に関わった方々にインタビューした。「AQUOS R8 pro」のカメラは“速く+賢くなった” 高画質の1型センサーをストレスなく使える
1型センサー、ライカと協業したレンズで人々を驚かせた「AQUOS R6」から2年、「AQUOS R8 pro」のレンズは大きな進化を遂げた。主にソフト面をぐっとアップデートした印象で、被写体に応じたAI処理が豊かになり、動物のポートレート撮影もできるようになった。シャープ、SIMフリー版「AQUOS wish3」を7月21日以降に順次発売 3万円台前半
シャープは、7月21日以降にSIMロックフリー版「AQUOS wish3」を順次発売。前モデルから再生プラスチック材使用率を向上させ、子ども向けの「ジュニアモード」を新搭載する。税込み価格は3万円台前半を想定。ドコモとauの「AQUOS sense7」、Android 13へアップデート
NTTドコモとKDDIは、3月23日に「AQUOS sense7」をAndroid 13へアップデート。より多彩なスタイルを選択できる「Material You」や、アプリごとの言語設定などが可能となる。大型センサーを積んだ「AQUOS sense7」のカメラはどう? AQUOS R7と比較しつつ試す
シャープのカメラといえば1型センサーを搭載した「AQUOS R7」だが、そのAQUOSシリーズの売れ筋は「sense」だ。さらにその新作「AQUOS sense7」はカメラに力を入れており、画質が向上している。好みが分かれるところだが、特徴的な空の青い写り方もチェックしよう。
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.