折りたたみスマホが“ごく普通の選択肢”に 「Galaxy Unpacked」で示した新トレンド:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
2023年のGalaxy Unpackedで中心に据えられていたのは、縦折り型のフォルダブルスマホであるGalaxy Z Flip5だった。そのスペックを強調するのではなく、セルフィーやカバーディスプレイのユーザーインタフェース、カメラ機能などを中心に紹介。Galaxy Z Flip/Foldは特殊な端末ではなく、ごく普通の選択肢として訴求していることが伝わった。
Samsung Electronics(サムスン電子)は、7月26日に新製品発表イベントの「Galaxy Unpacked」を、韓国・ソウルで開催した。
既報の通り、Unpackedでは「Galaxy Z Fold5」や「Galaxy Z Flip5」に加え、タブレットの「Galaxy Tab S9」シリーズやスマートウォッチの「Galaxy Watch6」シリーズを披露している。翌日には、日本を含む世界各国の直営店や期間限定イベントで最新モデルを展示している。
強まる韓国のソフトパワーを生かしたUnpacked、中国メーカーとの差別化にも
韓国を代表するメーカーのサムスンだが、意外なことに、Unpackedを同国で開催したのは初めてのこと。これまでは、スペイン・バルセロナや米サンフランシスコ、ニューヨークなど、欧米にこだわってきた。当初はMWCやIFAなど世界的な規模の展示会に合わせてきたが、Galaxyブランドの力が十分ついた後は、米国で単独イベントとして開催されることが増えている。米国は、同社にとって最大規模の市場だからだ。
一方で、ここ数年、韓国映画やドラマが各国でヒットを飛ばしている他、BTSをはじめとするアーティストも世界を席巻している。韓国のソフトパワーがグローバルに拡大するなか、サムスンもその力を生かす方向にかじを切ったことがうかがえる。ティーザーとして公開した画像や会場の展示にも韓国文化をモチーフしたものが多く、戦略的にそのイメージを活用していることが見て取れるイベントだった。
ゲストの布陣も豪華だった。会場にはBTSのSUGA(シュガ)やStray Kids、女性アイドルグループIVEのメンバーであるウォニョンが招かれ、Galaxyの発表を見守った。ウォニョンやSUGAやイベント注に大型スクリーンにライブで映り、ウォニョンはGalaxy Z Flip5のセルフィーを、SUGAはGalaxy Z Fold5をそれぞれアピールしている。お膝元である“地の利”を生かした演出に、会場は歓声に包まれた。
また、翌日には廃工場を生かした再開発が進むソウル市内の聖水洞(ソンスドン)で、カフェやコンビニなど、複数の店舗を貸し切った製品展示イベントを開催。Galaxy Z Flip5を中心に据えつつ、3.4型に大型化したカバーディスプレイのカスタマイズ機能や、メインカメラで撮影できることを売りにしたセルフィーなど、そのユースケースをアピールした。この貸し切り店舗は、28日から一般公開されている。
こうしたソフトパワーを生かせる点は、グローバルで競合する他メーカーとの差別化にもつながる。特に、勢いを増す中国メーカーに対する優位性を発揮できる部分だ。中国もソフトパワーは比較的強いものの、国内からアクセスできるサービスに大きな制約があり、Googleはもちろん、X(旧Twitter)、FacebookなどのメジャーなSNSも利用するのが難しい。
同様のイベントを中国メーカーが中国で開催しようとしても、いわゆる西側諸国のメディアやインフルエンサーをここまでの規模では集めづらいはずだ。いくらYouTuberを招待しても、肝心のYouTubeにその場からアクセスできないのでは本末転倒になってしまう。その意味では、バックグラウンドも含め、サムスンの持てる強みを最大限生かしたイベントだったといえる。
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