「NTTの考えは詭弁」「楽天モバイルにバックホールを貸す議論をしてもいい」 ソフトバンク宮川社長が熱弁(2/2 ページ)
ソフトバンクが第2四半期の決算を発表。モバイル事業が下げ止まって、想定よりも早く回復していたこと、エンタープライズ事業やLINEやヤフーのメディア・EC事業が好調なことから利益が拡大した。宮川潤一社長が、NTT法や楽天モバイルのプラチナバンドについての考えも述べた。
NTT法は国会で議論すべき、楽天モバイルのインフラ構築で手助けの考えも?
NTT法の見直し議論が進む中、NTTの島田明社長は7日の決算説明会で、公社時代から継承したネットワークなど資産は、民営化で株主である政府に帰属しているとの説明をしていた。宮川社長は、この資産を保有しているのはNTT東西で、その株式を100%保有しているのはNTT(持株)であるとして、「詭弁(きべん)にすぎないと考えている」と一刀両断。
「NTT自身は資産に関係がないという主張で、継承資産の重要性の意識や当事者意識が希薄なら非常に残念で、それなら一度(資産を)国に返すべき」と強く批判した。
NTT法を廃止するのであれば、あくまで法律なのだから自民党プロジェクトチームではなく国会で議論すべきこと、というのが宮川社長の主張で、「NTTとNTT以外で意見が対立している。(廃止に)押し切られたとしたら最後まで腹落ちしない」と宮川社長は訴える。
「(そうなったら)ずっとNTTが嫌いなポジションになる。通信会社は今まで協力し合えるところは協力して技術もお互いに語り合って、通信という文化を引っ張ってきた。ちゃんと議論をして次のステージに行かないと、しこりが10年や20年では取れなくなる」と宮川社長は強調した。
700MHz帯のいわゆるプラチナバンドの新規割り当てを受けた楽天モバイル。開設計画では2026年3月のサービス開始だが、できるだけ早期の運用を目指す形。とはいえ、そのスケジュールでは「遅い」というのがKDDI高橋誠社長の考え。それに対して宮川社長は、「さみしい計画」だと話す。
700MHz帯の3MHz幅と狭い領域しか割り当てられていないが、宮川社長は「楽天モバイルが貧乏くじを引いたとは思っていない」という。それは「(プラチナバンドを)持っているのと持っていないのでは似て非なるもの」(同)だからだ。
ソフトバンクもあとからプラチナバンドを割り当てられた経験があるため、「3MHz幅があれば相当エリアは違う」と、エリア拡大に有効に活用できると指摘する。しかし、ユーザー数が1000万を超えるようになってくると足りなくなるため、「まずは使い方を良く検討した方がいい。トラフィック対応の1.7GHz帯と隙間を埋める700MHz帯(の組み合わせ)は、チューニングに相当ノウハウが必要」というのが宮川社長のアドバイス。
ただ、楽天モバイルの計画にある10年間で1万局設置、500億円の設備投資という数字は「さすがにできるとは思わない」と否定的。
ソフトバンク自身は900MHz帯の獲得に対して「ばかみたいに騒いでもらった」(同)あと、「3年間はCAPEXで2兆円」(同)という莫大な設備投資を行った。それでも当時は「つながらないソフトバンクと言われた」(同)ほどだった。その後は細かなチューニング作業を10年間行って、「ようやくそこそこのインフラになった」と宮川社長は振り返る。
しかも楽天モバイルはKDDIとのローミング契約は2026年9月まで。宮川社長は、開設計画ではサービス開始後半年ほどでローミング契約が途切れるため、それまでに700MHz帯でエリアを構築できるのか、という点も問題視する。
「この(開設計画の)ペースでは700MHz帯は生きない。1.7GHz帯と700MHz帯を組み合わせるときに、ソフトバンクの基地局の場所が適しているというのであれば議論に応じる、と宮川社長。「バックホールを貸すことについても議論してもいい」(同)。
かなり踏み込んだ回答をした宮川社長だが、真意を問われて「楽天モバイルと何か話したわけではなく、思いつきで話しただけ」と回答。バックホールや基地局を設置するためのビルのオーナーとの交渉ごと、基地局移転時に次の移転先を見つける難易度の高さなど、ソフトバンクが苦労してきた点を踏まえて、「(楽天モバイルに貸せるような)対象物があるなら協力してもいいかなと思って話した」というが、「ラブコールではない」とのこと。
楽天モバイルに対して宮川社長は、「できれば参入しなかった方がわれわれも戦いやすかった」と正直な回答をしつつ、「本当に手ごわい、なかなかの強敵だと日々感じている」というのが実感のようだ。
そんなモバイル事業では手ごわいライバルの楽天モバイルだが、「NTTのいろいろなワガママからスタートして、通信事業者がみんな集まって、これは許せんという話をいろいろしている。(楽天モバイル会長の)三木谷さんは本当に正論を言われる方で、経営者として尊敬できるので、(楽天モバイルには)なくなってほしくない」(同)。
その中で楽天モバイルが苦戦しているのを、毎日確認しているレポートで見ているという宮川社長。その上で宮川社長が話したのは、「事業計画が成り立つところまでいくのは時間がかかるだろうから、その中で(ソフトバンクの基地局を借りるなどの)いろいろ議論があってもいいと思った」だけなのだという。
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