「Xiaomi 13T Pro」を“実質24円”で販売できるカラクリ 実は転売ヤー対策として有効も、今後は規制に?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソフトバンクは、Xiaomiのハイエンドモデル「Xiaomi 13T Pro」を12月8日に発売する。このモデルは発売直後から“実質24円”で販売されることが明かされ、衝撃を与えた。端末購入補助が2万2000円に規制される中、なぜこのような売り方が可能なのか。
新ガイドラインで販売方法の見直しは必至か、実態は規制の強化に
ソフトバンクは新規のユーザーを獲得しやすく、ユーザーもお得に端末を購入できて満足、しかも競争環境が著しくゆがんでしまうこともない――こう考えると、三方由(さんぽうよし)の仕組みにも思えてくる。スマホの販売数が落ち込む中、需要を喚起できそうなだけに、端末を開発するメーカーにとっても、ありがたい販売施策といえる。ただ、12月27日に予定されている電気通信事業法施行規則等の改正で、極端な額での下取りが難しくなる可能性も見えてきた。
省令改正に基づく新たなガイドラインでは、端末購入補助の上限が4万4000円に上がる代わりに、セット販売時の単体値引きも規制されるようになる。また、端末の下取りや、将来の残価を購入時に提示するアップグレードプログラムは、その額や根拠を提出する必要が生じる。一般的な下取り価格を超えた場合の差分は、「未確定利益提供行為」と定義される。回線とひも付かない割引も上限に含まれる上に、アップグレードプログラムによる実質的な値引きも厳格になるというわけだ。
【訂正:2023年12月25日13時10分 初出時、電気通信事業法を改正する旨を記載していましたが、正しくは「電気通信事業法施行規則等の改正」なので、該当箇所を修正いたしました。】
Xiaomi 13T Proの場合、2年後の一般的な買い取り価格が新トクするサポートで免除される9万2472円を上回っているとは考えづらい。下取り額が、本体価格である11万4480円の8割近い金額だからだ。一般的なAndroidスマホは、2年後の買い取り価格が半額かそれ以下になってしまうことを踏まえると、差額は割引と見なされる。MNPや一部の新規契約にも割引を出しているため、合算すると、新たなガイドラインで定められている4万4000円の上限も超えてしまう。
ソフトバンクによると、新ガイドラインを踏まえた今後の価格設定は「現在、検討中」だという。価格設定や下取り額の根拠によって、割引の上限を超えてしまうものもあれば、そうでないものもある。同社では、現在、その精査をしていることがうかがえる。割引の総額を4万4000円に収めようとすると、免除する金額をやみくもに大きくするのは難しくなる。MNPなどに2万1984円の割引を出していることを踏まえると、免除額と一般的な買い取り価格の差を残りの2万円程度に抑える必要が出てきそうだ。
神ジューデン対応第1号機として22年に発売されたXiaomi 12T Pro。約1年たった現在の中古買い取り価格は、未使用品で5万円を下回っている。新ガイドラインでは、このモデルの後継機にあたるXiaomi 13T Proを、2025年に9万円強で下取りすることの妥当性が求められる
新たなガイドラインは割引の上限が4万4000円に上がり、一見すると規制が“緩和”されたように見えるが、端末単体での割引やアップグレードプログラムに網をかけている点では、規制の強化といえる。ソフトバンクの代表取締役 社長執行役員兼CEO 宮川潤一氏も、11月に開催された決算説明会では、「極端な廉価販売や転売を抑止する観点では妥当な水準」としながらも、その額には「もうちょっとアグレッシブにやってもいいのではないか」と私見を語っていた。
ただ、実質的な値上げになる可能性もあるため、端末販売への悪影響が懸念される。また、中古店での下取り額を参考にした場合、新規参入のメーカーや新たなカテゴリーの端末として人気が出るかどうかが不透明な場合に、残価を低めに見積もらざるをえなくなる。結果として毎月の支払い額も上がるため、メーカー側がチャレンジしにくい環境ができてしまいそうだ。転売ヤー対策を名目に始まった端末単体割引の規制だが、アップグレードプログラムに規制が及んでしまうこともあり、販売にもマイナスの影響を与える可能性がある。新たなガイドラインが有効になる2024年以降の状況も、注視しておきたい。
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