スマホの値引きは「原則最大4万円」だが8万円以下の機種は半額まで 総務省が方針変更
総務省の電気通信市場検証会議に付属する「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」が取りまとめを進めている「競争ルールの検証に関する報告書(案)」に対するパブリックコメントが公表された。一部の大手キャリアやMVNOからの意見を受けて、利益提供(≒端末代金の値引き)の上限額に関する提言が訂正されることになった。
総務省は9月8日、「競争ルールの検証に関する報告書2023(案)」について、案に寄せられたパブリックコメント(意見)の概要と、パブリックコメントを受けた報告書案の修正版を公表した。修正された報告書案では、携帯電話端末の値引きの上限を「原則4万円」(税別、以下同)とする一方で、4万〜8万円の端末は「対照価格(値引き前の価格)の50%」、4万円未満の端末は「2万円」に設定するように提言している。
パブリックコメントを受けて修正された「競争ルールの検証に関する報告書2023(案)」の表紙。順当に行けば、9月中には修正後の案をもとにした正式な報告書が公表される見込みだ(総務省資料より:PDF形式)
修正の概要
競争ルールの検証に関する報告書は、総務省の「電気通信市場検証会議」に付属する会議体「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」が毎年取りまとめているものである。
現在、携帯電話端末の値引きは、携帯電話回線の契約とひも付くものは原則として2万円までという制限が設けられている。しかしここ数年、値引き額に実質制限のない、回線契約と“ひも付かない”値引きによって、端末の転売が多く発生した。いわゆる「転売ヤー」のである。
そこで2023年の報告書では、端末購入時の利益提供(≒端末代金の値引き)について、上限額の見直しを提言することになった。上限額は、大手3事業者(NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー電話、ソフトバンク)の2020年〜2022年におけるARPU(※1)の平均値に営業利益率の平均に、端末の平均利用期間を乗じて以下のように算出された。
4137円(ARPU平均)×0.189(利益率平均)×53.2(平均利用期間)=約4万1957円
当初の案では、上記計算の下4桁を切り捨てて、利益提供の上限額を原則として4万円として提言する予定だった。
(※1)1契約者/1カ月あたりの平均収入
ところが、パブリックコメントにおいて、ドコモとKDDIがこの部分に異を唱えた。両社のコメントは微妙に異なるが、利益提供の上限を原則4万円にすると、販売価格が10万円未満の端末に購入サポートプログラムと組み合わせると「実質1円」や「一括1円」販売ができてしまうという点に懸念を抱いた点は共通している。
加えて、一部のMVNO(インターネットイニシアティブ、オプテージ、JCOM)とその業界団体(人テレコムサービス協会)からも、競争上の観点から利益提供の上限額を“一律で”4万円とすることへの懸念が示された。
ドコモは「計算に用いるARPUや端末平均利用期間は直近の単年度で見るべきでは?」との疑問を示しつつ、10万円未満の端末にも一律で「上限4万円」を適用することへの懸念を示した(総務省資料を加工:PDF形式)
そこで総務省は、現行の利益提供で定められている「在庫端末特例の基準(最大50%引き)」を考慮しつつ、案に盛り込む利益提供の上限額を以下のように改めた。
- 対照価格が4万円以下:2万円まで
- 対照価格が4万〜8万円:対照価格の50%(半額)まで
- 対照価格が8万円以上:4万円まで
正式な報告書が提出された後、総務省は報告書ににある提案をもとに法令の改正に向けた準備を進めることになると思われる。この提言は「転売ヤー」の抑止につながるのだろうか……?
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