スマホの端末割引規制、2万円から4万円への緩和を検討 総務省の有識者会議にて
現在の電気通信事業法では、通信サービスとセットで販売する端末の割引は上限を「2万円(税込み2万2000円)」に制限している。この2万円の割引規制を見直す案が出た。4万円を新たな上限額とすることが適当だとしている。
総務省が5月30日に開催した「競争ルールの検証に関するWG(第45回)」にて、電気通信事業法第27条の3に関する見直しの方向性が示された。
電気通信事業法第27条の3では、「通信料金と端末代金の完全分離」や「行きすぎた囲い込みの禁止」を目的としたルールを定めている。2019年10月の改正により、通信サービスの継続利用を条件とする割引は禁止され、通信と端末の分離が実現。一方、通信サービスとセットで販売する端末の割引は上限を「2万円(税込み2万2000円)」に制限した。
この上限2万円の割引は、2018年度における、MNO(ドコモ、KDDI、ソフトバンク)各社のARPUの平均×各社の平均営業利益率×端末の平均使用年数に、将来的なARPUの減少を考慮して2万円としていた。ただ、現在のMNO3社のARPUは減少傾向にあるものの、一部の事業者から2022年から増加傾向の報告があったこと、一定期間経過後に端末を返却すると残債を免除する端末購入プログラムの加入率上昇が見込まれる(返却タイミングによって支払い額が変動する)ことから、ARPUの変動を捉えきれないと判断。
そこでARPUの減少は考慮せず、平均的なユーザー1人の通信料収入から得られる利益を算出すると、約4.1万円となった。計算の内訳は、各社のARPUの3年間平均(4137円)×各社の営業利益率の3年平均(18.9%)×端末の平均使用年数(53.2カ月)=4万1597円。その端数を切り捨てた4万円を新たな上限額とすることが適当だとした。
ちなみにNTTドコモは2019年当時、端末割引の上限は上記と同じ条件で、4000円×20%×36カ月=3万円が適切だと提案していた。しかし当時から端末の利用年数がさらに伸びたことから、割引規制の上限も伸びた形となる。端末の平均使用年数は、内閣府の消費動向調査を参考にしている。
なお、通信サービスとセットではない端末単体、いわゆる「白ロム」の割引は規制対象となっておらず、上限なしでの割引が可能になっている。そこで、白ロムの購入でも割引規制の対象にすることが適切だとしている。これは4キャリアが第37回WGで提案した内容から変わっていない。その場合、割引の基準となる対照価格が調達価格を下回らないよう見直すことが適切(調達価格を下回る割引は不可)だとしている。これは事業者が複数の対照価格を設定する場合も同様となる。
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