IOWNは6G時代のボトルネック解消になるか 「IOWN WEEK」で見えた実力と課題:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
NTT、ドコモ、東急不動産は、東京・渋谷に完工した「渋谷サクラステージ」で、次世代コミュニケーション基盤の「IOWN」を導入。これをお披露目する「IOWN WEEK」を12月13日から15日の3日間に渡って開催した。IOWNは、次世代モバイル通信規格の6Gを支えるバックボーンとしても期待されている。
NTT、ドコモ、東急不動産は、東京・渋谷に完工した「渋谷サクラステージ」で、次世代コミュニケーション基盤の「IOWN」を導入。これをお披露目する「IOWN WEEK」を12月13日から15日の3日間に渡って開催した。また、渋谷にある東急不動産の「ソラスタ」では、報道陣にIOWNを活用したビデオ会議ソリューションを公開した。
IOWNはNTTが2019年に公開したオールフォトニクスのネットワーク。超高速や低遅延に加え、ゆらぎがない通信を特徴としている。また、電気信号と光信号を扱う回路を融合する「光電融合技術」による、省電力化も目指す。その商用サービス第1弾となる「APN IOWN 1.0」は、NTT東日本・西日本が3月に提供を開始した。渋谷サクラステージなどに導入されたのも、このAPN IOWN 1.0だ。
IOWNは、次世代モバイル通信規格の6Gを支えるバックボーンとしても期待されているが、イベントではその実力を垣間見ることができた。ここでは、そのイベントの中身や現状見えてきた課題をお伝えしていきたい。
APN IOWN 1.0を導入した東急不動産、イベントではその成果を示す
東急不動産は、東京・渋谷の駅前に開業した渋谷サクラステージに、NTT東日本が提供するAPN IOWN 1.0を導入した。12月13日から15日にかけて開催したIOWN WEEKは、それを公開する狙いがある。14日には、とろサーモンの久保田かずのぶさん、トレンディエンジェルの斎藤司さん、見取り図、鬼越トマホーク、ヨネダ2000といったお笑い芸人が、IONWを活用したゲームやラップ、ネタを披露。同じ東急不動産のソラスタでは、解像度を4Kまで上げたビデオ会議のデモを行った。
お笑い芸人のイベントは、IOWNで渋谷サクラステージとソラスタをつなぎ、ネットワーク越しでもゲームや漫才を成立させることができることを示すのが目的。“間”の取り方が重要になるだけに、IOWNならではの遅延の少なさや、ゆらぎのなさをエンターテインメントに生かしたコンテンツといえる。東急不動産は施設にIOWNを導入し、入居するテナントが活用できることを付加価値にしていく。イベントは、その実力を分かりやすく示すためのデモになる。
IOWN WEEKのネットワーク構成は、次の通り。お笑い芸人のイベントでは、APN IOWN 1.0の終端装置と低遅延調整装置を渋谷サクラステージと対抗施設となるソラスタに設置し、その間を光回線で結んだ。後者のビデオ会議は、ソラスタと別のオフィスビルをIOWN回線で結んでいる。通信部分の遅延は片道で約100μs(マイクロ秒)。往復でも200μsとなり、ネットワークを経由しているにもかかわらず、あたかもその場にいるかのようなレスポンスの高さを実現している。
この低遅延には、再送をかけることが前提のTCP/IPを使用していないことも貢献しているという。IONWはプロトコルフリーの伝送も特徴としており、「例えるなら、渋谷サクラステージのディスプレイと、ソラスタのカメラをHDMIケーブルで直接つないで映像を伝送しているようなもの」(NTT 経営企画部 IOWN推進室 瀧野祐太氏)。ディスプレイやカメラは全て有線で接続されており、イベントではWi-Fiや5G、LTEなどの無線も使っていない。
東急不動産は、渋谷駅を中心とした半径2.5km圏内を「広域渋谷圏」と定め、都市開発を行っている。この施設同士をつなぐネットワークとして、IOWNを活用する。渋谷サクラステージにもデジタルサイネージなどが多数設置されており、イベント後もIOWNを活用した映像配信を行っていく。また、同社のオフィスビルに入居したテナントが、NTT東日本と契約することでIOWNを活用することが可能になる。拠点間を超高速、低遅延でつなぐ回線を備えた施設として、その付加価値を高めていく方針だという。
関連記事
IOWNの低遅延はどれだけ“リアルタイム”なのか 「IOWN WEEK」イベントで見えた実力
NTTグループ(日本電信電話、東日本電信電話、NTTドコモ)、東急不動産は次世代通信構想「IOWN」の技術を使ったイベント「IOWN WEEK」を東京・渋谷で開催した。対象は事前に招待された関係者や報道陣。3社が6月7日に合意した「IOWN 構想に関連した技術・サービスなどを活用した新たなまちづくりに向けた協業」に関する最初の取り組みとなる。100Gbpsの高速/大容量、低遅延 NTT東西が全区間光通信「APN IOWN1.0」商用化へ
NTT東日本、NTT西日本は3月3日、IOWN構想の実現に向けた商用サービス「APN IOWN1.0」の商用化を発表した。100Gbpsの高速/大容量通信を低遅延、ゆらぎなく提供するもので、3月16日に販売を始める。「docomo Open House'23」で披露された最新技術 6G時代のコミュニケーションから、触覚共有、羽根のないドローンまで
オンラインで開催中の「docomo Open House'23」に先駆けて、報道陣に、リアル会場での展示を公開。5Gやその次の世代の通信規格「6G」に向けたネットワーク技術、昨今注目されているメタバースに関する新たな取り組みも披露。触覚を再現する人間拡張の新たな取り組みも興味深かった。6G時代は「テレパシーがSFの世界でなくなる」 ドコモが掲げる“人間拡張基盤”とは
ドコモの最新技術を紹介する「docomo Open House'22」が開幕。同社は、6Gに向けて空、宇宙にエリアを広げる取り組みを続けている。人間の感覚をリアルタイムで伝え、保存できる「人間拡張基盤」も掲げる。ドコモが通信品質改善を本格化しても残る疑問 他社との差を埋めるのに必要なことは?
ドコモはパケ詰まりに対して基地局のチューニングや増設を行ってきたが、場所や時間帯によっては、依然として通信品質が低下する。このような状況を受け、ドコモは年末にかけて新たな対策を実施する。通信品質対策を本格化したドコモだが、他社に後れを取ってしまったのも事実だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.