スマホに“三種の神器”だった「ワンセグ」「おサイフケータイ」「赤外線」が必須ではない理由:ふぉーんなハナシ(1/2 ページ)
日本のフィーチャーフォンやスマートフォンには、かつて“三種の神器”と呼ばれるものがあった。「ワンセグ」「おサイフケータイ」「赤外線」だ。現在は必須といえなくなった理由を考えてみたい。
日本のフィーチャーフォンやスマートフォンには、かつて“三種の神器”と呼ばれるものがあった。「ワンセグ」「おサイフケータイ」「赤外線」だ。日本のフィーチャーフォンのほとんどのモデルに搭載されていたが、昨今では必須といえなくなった。その理由は何か、そして、2023年現在におけるスマートフォンの三種の神器は何かを考えてみたい。
「ワンセグ」「おサイフケータイ」「赤外線」とは?
ご存じの方が大半だろうが、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線それぞれの概要を簡単におさらいしたい。
ワンセグは、地上波テレビ放送のデジタル化に伴い、2006年に始まった携帯電話・カーナビ向けのサービスだ。1チャンネル6MHzの帯域幅を13個のセグメントに分割するデジタル放送に対し、そのうちの1セグメントを用いて放送するのがワンセグだ。
おサイフケータイは、FeliCaチップを内蔵した携帯電話で利用できる非接触決済サービスのこと。Suicaなどの交通系ICカードや、電子マネーのiDなどを一括管理でき、買い物をする際にお店の機械に携帯電話をかざすだけで決済することができる。こちらはワンセグや赤外線と異なり、現在も日本国内で販売されているAndroidスマートフォンの多くが搭載している。
赤外線は、通信可能な距離が20cm以内、送受信できるデータの容量が最大で4MBとなる。遠距離なほど検出が難しく、扱えるデータの容量も今となっては少ない。対応する携帯電話同士で連絡先や画像などを送受信する際に重宝していた。
「三種の神器」を使える機種が激減した理由は
では、なぜこれら全てを利用できるスマートフォンが、フィーチャーフォン全盛期に比べて激減しているのだろうか。
ワンセグに関しては、通信性能の向上や、動画配信サービスおよびコンテンツの普及が大きく起因している。モバイル通信の規格は約10年おきに世代が進み、2012年登場の「iPhone 5」とともに4Gが一気に浸透。その2年後の2014年には異なる周波数を束ねる“キャリアアグリゲーション”(※)と呼ばれる技術が導入され、通信最大速度は徐々に高速化された。
(※)LTEの拡張規格である「LTE-Advanced」を構成する技術
それに伴い、スマートフォンで利用できるサービスも高度化し、リッチなコンテンツが手元の端末で楽しめるようになった。とりわけテレビのコンテンツしか視聴できないワンセグと違って、YouTubeは個人から団体に至るまでのあらゆる人が発信するコンテンツを楽しめる他、Netflixでは膨大な予算が注ぎ込まれたNetflix独自のドラマや映画などが有料で楽しめるようになった。
つまり、ワンセグに頼らずとも通信とスマートフォン、それに動画配信サービスの3点セットで、ワンセグでは楽しめないようなコンテンツが視聴できるわけだ。
おサイフケータイについては、日本国内で販売されているAndroidスマートフォンはいまだ多くの機種が対応し、Google Payで決済サービスを管理できる。iPhoneも同じFeliCaの仕組みを使ったApple Payが現行機種には標準搭載されている。Apple Pay/Google Payでは、あらゆる決済サービスをまとめておける他、ポイントカードも集約して管理できるようになった。
一方、PayPayをはじめとするコード決済サービスの影響は大きい。国内では、2018年以降にコード決済サービスが増え、2023年現在までの約5年間で利用可能な店舗も徐々に拡大した。そのため、ユーザーにスマホ決済を利用してもらうために、メーカーは必ずしもFeliCaチップを搭載させる必要がなくなった。
【更新:2023年12月19日11時15分 おサイフケータイは、現行のAndroidスマートフォンの多くが搭載しているので、一部の記述を加筆修正しました。】
赤外線については、ユーザー観点で見れば、双方の端末の赤外線ポートを近づけなければならない。加えて、直進性のある赤外線を利用するには、対応端末同士が真っすぐに向き合うようにして、データの送受信を行わなければならない他、先述の通り扱えるデータ容量が少ないため、手軽に扱いづらい。
昨今では、かつて赤外線でやりとりしていた連絡先は、GoogleアカウントやApple IDにひも付けて管理でき、旧機種から新機種に買い替えた際、新機種で旧機種と同じアカウントにログインすれば、データの移行は不要となる。写真や動画などのデータについてもクラウドサービスに保存できることから、赤外線で移行する必要がなくなった。
端末メーカー観点で言えば、赤外線ポートの搭載や、それが動作するためのソフトウェアを用意しなければならず、赤外線機能の搭載にメリットを見いだしづらくなったのだろう。
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