法令改正で“実質値上げ”のスマホ、4キャリアはどう動いた? 24年の売れ筋に影響も:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2023年12月27日に、電気通信事業法の施行規則が改正され、端末割引の制限が4万4000円に拡大した。その一方で、回線契約を伴う際の端末単体割引もこの範囲に含まれたことで、大手キャリア各社は価格の見直しを余儀なくされた。ソフトバンクは1年下取りを導入する一方で、ドコモは実質負担額を値上げしている。
予想買い取り価格をシビアに見積もるドコモ、KDDIは一部モデルの本体価格を改定
一方で、他社は買い取り予想価格をかなりシビアに見積もっているようだ。同じPixel 8で比較してみよう。ドコモは、「いつでもカエドキプログラム」における12カ月目の買い取り予想価格として、5万6353円を提示している。あくまで予想値ながら、ソフトバンクよりも1万円以上安い。KDDIは2年後の予測しか公表していないが、Pixel 8の128GB版を4万5200円と見積もっている。この数値は、ドコモの24カ月目にあたる4万5562円より安い。
予想価格が低くなれば、その分、免除できる残価も減ってしまう。そのため、ドコモはほとんどの端末を実質値上げしている状況だ。Pixel 8の場合、2年利用時の実質価格は6万4460円。12月26日までは3万4100円だったため、ほぼ2倍の値上げになっている。iPhoneやGalaxy、AQUOSなども軒並み実質価格が上昇した。予想価格を厳しく見積もった結果、いつでもカエドキプログラムで設定される残価が下がり、実質価格の値上げにつながってしまったといえる。
また、ドコモは2023年9月に1年で端末の返却が可能な「いつでもカエドキプログラム+」を導入していた。法令改正後も、このプログラムは継続している一方で、一部端末が対象から外れている。上記のPixel 8は、そんな端末の1つだ。ドコモはPixel 8の実質価格を発売後、段階的に値下げしていた。2023年11月10日の改定では、1年利用後に返却した場合の実質価格は、1万7798円まで下がっている。さらに、新規契約やMNPで22歳以下やeximoを契約する場合、2万ポイントのdポイントを進呈していた。
同様に、サムスン電子の「Galaxy Z Fold5」も、256GB版と512GB版の双方が、いつでもカエドキプログラム+の対象から外れている。Pixel 8は、1年後の買い取り予想価格が5万6353円。Galaxy Z Fold5の256GB版は11万5830円だ。ドコモ版のPixel 8は本体価格が11万9900円、Galaxy Z Fold5は25万7400円。いつでもカエドキプログラム+では、Pixel 8で10万円強、Galaxy Z Fold5は18万円強を免除する形になり、買い取り予想価格を大きく超えていた。2機種が対象から外れてしまったのは、これが理由といえる。
これに対し、ドコモ同様、比較的渋い買い取り予想価格を打ち出しているKDDIは、一部モデルの本体価格を値下げした。もともと、auのPixel 8は11万7900円と他社に近い価格をつけていたが、法令改正を受け、価格を9万9000円まで落としている。買い取り予想価格に基づき、残価も下がっているが、本体価格も安くなった結果、実質価格は法令改正前の水準をほぼ維持している。MNPで「au Online Shopお得割」が適用された場合の実質価格は、9890円だ。逆に、「Pixel 8 Pro」や「Xperia 5 V」などのハイエンドモデルは、わずかながら実質価格が値上がりしている。
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