法令改正で“実質値上げ”のスマホ、4キャリアはどう動いた? 24年の売れ筋に影響も:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
2023年12月27日に、電気通信事業法の施行規則が改正され、端末割引の制限が4万4000円に拡大した。その一方で、回線契約を伴う際の端末単体割引もこの範囲に含まれたことで、大手キャリア各社は価格の見直しを余儀なくされた。ソフトバンクは1年下取りを導入する一方で、ドコモは実質負担額を値上げしている。
早期機種変更は主流になるか? 避けられない端末販売への影響
楽天モバイルは、より大胆にアップグレードプログラム自体を見直した。同社は「楽天モバイル買い替え超トクプログラム」を12月22日に改定。Androidスマホ全機種とiPhone SE(第3世代)が対象から外れた。代わりに、これらのモデルには6000円オフとなるクーポンを配布している。アップグレードプログラム自体の提供を一部モデルでやめてしまったという点では、法令改正の影響を最も大きく受けているといえそうだ。
1年下取りを導入し、人気の高いモデルで実質価格を維持したソフトバンクに対し、ドコモは素直に実質価格を上げる方向にかじを切った。KDDIが打ち出したのは折衷案のような形で、本体値下げを組み合わせることで一部モデルの実質価格を保ったといえる。これに対し、楽天モバイルはアップグレードプログラムから多くの端末を外し、iPhoneシフトを鮮明にしたような格好だ。法令改正自体は4社が等しく対象になるが、その結果打ち出した対策は、各社のカラーが色濃く出ている。
どの方法が支持されるかは未知数だが、端末販売への影響は必至だ。一見、実質価格を維持したように思えるソフトバンクも、2年利用時に条件をそろえると、値上げになっていることは事実。KDDIも、実施価格を維持できたのは一部の端末にとどまる。ドコモに至っては、ほとんどのモデルが値上がりしたため、法令改正以前と比べると、スマホを買いづらくなったと言えそうだ。楽天モバイルも、Androidのハイエンドモデルには手を出しづらくなってしまった。
一方で、“ソフトバンク方式”が広がれば、機種変更のサイクルが短縮され、販売にもプラスに働く。端末の買い替えが頻繁になれば、販売台数も上向くはずだ。他社がここに追随できるかどうかにもよるが、ソフトバンクがMNPでの獲得を増やせるようであれば、対抗策を打ち出すキャリアが出てくるだろう。特にドコモは、いつでもカエドキプログラム+を既に導入しているため、手を打ちやすい。
ソフトバンクの場合、比較的単価が高いハイエンド端末を1年実質12円にしているため、端末の販売構成比が変わる可能性もある。特に、10万円台前半のハイエンドモデルはこの方法で実質価格を落としやすい。実際、新トクするサポート(バリュー)に指定されている端末は、いずれもハイエンドモデルながら、最上位モデルではない。手が届きやすい“廉価ハイエンド”が普及する契機になる可能性もあるというわけだ。2019年の電気通信事業法改正以降、ミドルレンジモデルの比率が大幅に高まったが、その歯止めになる販売手法として注目しておきたい。
逆に“ドコモ方式”が定着すると、冷え込んでいた端末販売がさらに落ち込む恐れもある。ただ、アップグレードプログラムは、もともと回線契約をしていないユーザーにも提供されており、競争を阻害していたわけではない。端末の下取りが条件になっているため、転売ヤーの餌食にもなりづらい。単体割引の制限が転売対策のためであれば、ここまで強力な規制をかける必要はなかったはずだ。新たに制定されたガイドラインからは、規制の在り方が販売現場の実態に追い付いていないような印象も受けた。
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