次世代通信「6G」に向けた進捗と課題 NTTドコモ中村氏に聞く(2/2 ページ)
次世代通信に向けた準備はどこまで進んでいるのか、どのような課題があるのか。NTTドコモの中村武宏氏(CSO コーポレートエバンジェリスト)に話を聞いた。
―― 空や海でのエリア拡張は、どのように進んでいますか。
中村氏 NTNは、2023年にNTTとスカパーJSATさんでSpace Compassという新会社を設立し、積極的に商用開発を進めています。HAPS(成層圏を飛行する高度プラットフォーム)についてはエアバスさんと数年前から協力してやっていますし、2025年の大阪万博でも何かできればと計画しています。その後、できるだけ早く商用化したいと検討する段階に入っています。
GEO(静止軌道衛星)もLEO(低軌道衛星)も、いろいろな協力関係を結んでいますので、効率よく活用していきたいです。
―― 将来的には、空からの電波を受信してダイレクトにスマホがつながるのでしょうか。
中村氏 HAPSは約20Kmの高度なので、最初からそうしたいと考えています。LEOは地上から数百km以上離れているので、ダイレクトアクセスができたとしても伝送速度はそんなに出ません。既にアメリカでは始まっているようですが、テキストメッセージや音声、非常時になんとか連絡が取れるといった用途になると思います。
―― 海中での通信にはドローンを使うのでしょうか。
中村氏 そうです。水中ドローンを用いた実験を進めています。
―― NTNはエリア拡張が目的だと思いますが、そこから収益を上げるのは難しいように思うのですが。
中村氏 陸上のエリアカバー率もまだ100%ではありませんし、災害対策としても期待されています。社会問題の解決のために進めていることですが、やはり、お金がもうかるビジネスモデルを創出することも必須で、そういうことも並行して進めています。
100%のエリアを作ることで、新しいユースケースも出てくると多います。例えば、現在通信できないような場所で資源探索などを行っている方は、そこでデータを採取して、そのデータをSDカードなどに保存して、それを持ち帰ってから処理しているそうです。
それが当たり前で、それでいいと思っていらっしゃるケースもあるようですが、データを取ったらすぐに送信できる環境になれば、新しいニーズも生まれてくると思います。海中で通信できるようになれば、漁業や探索などの用途だけではなく、エンタメ的なユースケースを考える人も増えるかもしれないですよね。
―― 今回のMWCのドコモブースの反響はいかがでしたか。
中村氏 やはりFEEL TECH(人間拡張基盤を用いた触覚共有技術)には、いろいろな方に興味を持っていただきました。新しい体感として、驚かれた方も多いようです。
―― 今後、FEEL TECHの商用化に向けても、6Gの通信品質が欠かせないものになってくるのでしょうか。
中村氏 それはケースバイケースだと思っています。例えば、2023年のMWCでは触感と映像を組み合わせたデモを行いましたが、あれくらいであれば今の5Gでも十分できます。実際、いろいろな会社から引き合いがありました。映像のクオリティーを上げたり、今回のようにXRに触覚を組み合わせたりすると、通信品質のさらなる向上が求められるでしょう。
―― 今回出展していた、VR空間で犬と戯れられるデモは、そのままエンタメコンテンツとして提供できるようにも思いました。
中村氏 一般の方がすぐに使えるようにチューンアップする必要はありますし、まだまだ甘いのですが、十分可能性があると思います。
―― 6GやNTNに関する出展への反響はいかがですか。
中村氏 MWCに来られる方に中には、NTNに興味を持っていらっしゃる方が多く、思っていた以上に多くの方に見ていただけました。これから、実証実験もどんどん進めていきますし、2025年はさらに盛り上がるのではないかと思います。
―― ありがとうございました。
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