「Galaxy AI」を打ち出すサムスンの端末戦略を解説 AI対応が“処理能力”だけで決まらないワケ:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
サムスン電子は、4月11日にフラグシップモデルの「Galaxy S24」「Galaxy S24 Ultra」を発売する。最大の特徴は、Googleの「Gemini Pro」や「Gemini Nano」などをAIモデルのベースにした「Galaxy AI」を端末の機能として密接に統合しているところにある。一方で、Galaxy AI自体はGalaxy S24/S24 Ultraだけでなく、アップデートを通じて過去のモデルにも適用される。
端末ごとに機能差も、処理能力の違いだけではないAI対応の可否
ただし、一部、機能的な差分はある。サムスン電子によると、例えばGalaxy S23/S23 UltraやGalaxy Z Flip/Fold5では、生成AIを使った壁紙作成には非対応だという。写真やイラストを高速に生成するには、NPU(Neural Processing Unit)の性能が高いプロセッサが必要になる。そのため、この機能に関しては、Snapdragon 8 Gen 3を搭載したGalaxy S24/S24 Ultraに限定される。
また、Galaxy S23 FEでは、動画から自動的にスローモーション動画を生成する機能にも対応していないという。このスローモーション動画は、単に動画の再生速度を遅くしているのではなく、フレーム間を補うフレームを生成AIによって作り出すことで、フレームレートを向上させている。動画のフレームを分析し、その中間となるフレームを作り出すのは、処理能力が求められる。Snapdragon 8 Gen 1を搭載したGalaxy S23 FEには、それが難しかったというわけだ。
一方で、Galaxy S23 FEのGalaxy AI対応は、必ずしも処理能力だけが基準になっているわけではないことを示唆している。Snapdragon 8 Gen 1を搭載したGalaxyは、Galaxy S23 FEだけではないからだ。2022年のフラグシップモデルとして登場した「Galaxy S22」「Galaxy S22 Ultra」も、同じプロセッサを採用。フォルダブルスマホの「Galaxy Z Flip4」「Galaxy Z Fold4」に至っては、よりCPU性能を高めたSnapdragon 8+ Gen 1を搭載している。しかし、これらのモデルは現時点でGalaxy AI対応の予定は明言されていない。
AIの処理に影響を与える可能性があるメモリ(RAM)も、Galaxy S23 FEは8GB。Galaxy S22 UltraやGalaxy Z Fold4の12GBよりも容量は少ない。Galaxy S23 FEは、型番こそ「S23」で23年発売(日本では24年2月)のモデルだが、スペック的には22年発売のハイエンドモデル相当といえる。このことから、Galaxy AI対応の可否はスペックだけで線引きしているわけではないことが分かる。
搭載には最適化もしているため、いくらソフトウェアといってもコストやリソースが必要になる。最近では端末の機種変更サイクルが長くなっているとはいえ、2年経過後は徐々に買い替えも増えてくる。コストをかけて、最新モデルより体験が劣ったAIをどこまで対応していくは、判断が分かれるところだ。とはいえ、性能的な線引きだけでなはなく、ある種、最新モデルのプロモーション的な要素も絡んでいるのは間違いないだろう。
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