KDDIの5Gが“真の実力”を発揮、通信品質の評価を覆せるか 「5G SA」の本格展開も見据える:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
KDDIは、Sub6と呼ばれる5Gの3.7GHz帯、4.0GHz帯の出力増強やアンテナの角度調整の結果、関東のエリアが2.8倍に広がったことを報告。結果として、ユーザーが体感できる品質は、大きく上がっているようだ。KDDIがその先に見据えているのは、5G単独で通信が可能になる「5G SA」の拡大だ。
受信環境が大幅に改善、スループットも300Mbps強に
結果として、ユーザーが体感できる品質は、大きく上がっているようだ。出力増加やアンテナの角度調整により、5Gの電波が-100dBm以下になるメッシュは東京23区だけで1万を超えた。ここまで電界強度が強くなれば、「電車内や屋内でもSub6をつかめるようになる」。当然、屋外であればその速度は大きく上がる。
-120dBmと電波が弱い場所も1万メッシュ以上あるが、東京23区内では4Gから転用したエリアはほとんどなくなってきたといえる。-120dBmのようなエリアでは屋内に入ると5Gが途切れてしまうものの、こうしたときには「無理をしすぎて通信を引っ張りすぎるとパケ止まりが起こってしまうため、すぐにハンドダウンするセッティングにしている」(同)。4Gから転用した5Gに引き継ぐことで、「快適な通信を続けられる」(同)という。
ここまで電波の状況がよくなると、まず通信速度が向上する。4Gから転用した5Gが実行速度で70~100Mbpsにとどまっていたのに対し、Sub6をつかむことで約3倍の300Mbpsまで速度が上がり、通信が快適になる。また、遅延が減り、30ms以下の割合が92%にも達している。20ms以下とさらに低遅延になる割合も75%に上がり、この指標で他社をリードしていたソフトバンクに肉薄した。
衛星通信との干渉条件が緩和されたのは、関東だけではない。大阪、札幌、福岡、名古屋などでもそれぞれ出力増加やアンテナ角度の調整を行い、Sub6のエリアが拡大している。もともと、強い出力で電波を吹けていたエリアもあるため、関東だけを抜き出したときよりエリアの拡大率は下がるものの、全国レベルでも1.5倍に広さが増している。
発表会当日には、会場となったザ・プリンス パークタワー東京をカバーするSub6のエリアを実際に広げるデモも披露された。同ホテルには、複数の基地局から電波が届いているが、その内の1局が出力増強前の状態だった。そのため、屋外で5Gをつかんでいても、速度は100Mbpsを下回ることが多かった。以下は、筆者の端末(iPhone 15 Pro)で行ったスピードテストの結果。100Mbpsを超えるときもあったが、おおむね2桁の速度にとどまっていた。
ネットワークセンター側から遠隔で出力を上げ、完了後に速度を図ったところ、300Mbpsから400Mbpsまで高速化。出力を上げるだけで、品質はここまで改善される。エリアが広がったことで、上りの速度も10Mbpsを超えるようになった。ちなみに、前後の電界強度をGalaxy Z Fold5に入れたアプリで測定してみたところ、-106dBmから-87dBmまで電波が強くなっていることが分かった。このような品質改善が、全国各地で行われたというわけだ。その効果は、もともとSub6のエリアが限定されていた関東圏が、特に大きくなる。
関連記事
KDDI、都心で5Gのフルパワー発揮へ 他キャリアにない強みは?
KDDIは、5GのSub6帯エリアを関東地方で2.8倍、全国で1.5倍に拡大し、下り通信速度が約3倍に向上したと発表した。auの5G(Sub-6)エリアが関東で2.8倍に拡大、通信速度は約3倍に向上
KDDIが、5G通信サービスのSub-6(3.7GHz/4.0GHz帯)のエリアを2024年5月末までに拡大し、Sub-6エリアを関東地方で2.8倍、全国で1.5倍に拡大したことを発表した。Sub-6エリアでは従来の5G接続から通信速度が約3倍に向上し、300Mbps超の速度を実現したという。衛星通信との干渉条件が緩和され、基地局の出力を上げられたため。KDDIの5Gネットワーク戦略を解説 高橋社長が「他社の上に立てる」と自信を見せる理由
KDDIが4月以降、首都圏で「Sub6」の5Gエリアを大きく拡大する。KDDIは、3.7GHz帯と4.0GHz帯の計200MHz幅を保有しており、大容量で高速な通信が可能になる。同社によると、そのエリアの広さはおよそ2倍まで拡大するという。KDDIが語る「パケ止まり」対策 2024年度は5G本来の力を発揮、基地局数も大きな武器に
KDDIが2月15日、5Gエリア展開と通信品質向上に向けた取り組みを説明した。2023年度末までの5G普及期は、4Gの周波数を転用することでエリアを拡大してきた。2024年度以降は普及期と位置付け、5G本来の力を発揮する環境が整うという。終わりの見えないドコモの通信品質改善 d払いアプリの活用で“パンドラの箱”を開く恐れも
ドコモは、2月2日に2023年から実施している通信品質の改善に関する進捗(しんちょく)状況を発表した。2000カ所の9割超の対策が完了し、平均スループットは向上したという。一方、2000カ所の対策を終えたとしても、本当にユーザーの不満が減少するかは未知数だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.