インタビュー

「(3a)Pro」ではなく「Nothing Phone (3a)」投入の理由、楽天モバイルが扱う背景は? キーパーソンに聞く日本攻略への道筋(3/4 ページ)

Nothingが4月に発売した「Nothing Phone (3a)」は、シリーズの特徴的なデザインを踏襲しながら、ベースとなるスペックを底上げし、新たに望遠カメラも搭載。販売面も強化し、新たに楽天モバイルが取り扱う。日本市場をどう攻略していくのか、Nothing Japanでマネージングディレクターを務める黒住吉郎氏に話を聞いた。

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FeliCaの有無で売れ行きが変わる フラグシップは今後攻める領域

―― 本体が光る部分は変わっていません。この部分がNothing Phoneのアイデンティティーになるのでしょうか。

黒住氏 見た目をアイデンティティーにしたいというよりも、ディスプレイが表に出ていないときに、ユーザーとどうインタラクトするかをアイデンティティーにしています。LEDを使い、イルミネーションで(着信や通知を)お伝えする。考え方やフィロソフィーの部分をアイデンティティーにしておくと、それに基づいて進化することができます。あまりにも光がアイコニックなので、「光るスマホ」のような見え方になってしまいますが、そこに固定されないようにはしていきたいですね。

 デザイン的には個性が際立っていると思いますが、意外と生活にも溶け込みやすいのではないでしょうか。「Glyph Interface」は、その1つになっていると思います。光で柔らかくお知らせを出すことで、背面のデザインとも調和していますし、世界観も表現できます。

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背面が光る仕掛けはNothing Phone (3a)でも健在だ

―― 前回からFeliCaを搭載しましたが、その有無でやはり売れ行きは変わるものでしょうか。

黒住氏 やはり変わります。生活の中で使われていることを考えると、否定はできない機能です。確かに今はPayPayなどもありますし、FeliCaがなくても成立する部分はありますが、「でも……」というところです。

―― ここ2機種、連続してミッドレンジモデルを投入しています。ハイエンドは「Nothing Phone(2)」で止まっていますが、これはなぜでしょうか。

黒住氏 お客さまに対して、価値を出しやすいからです。同じタイミングで「Pixel 9a」も出てきましたが、お値段では2万円以上高い。われわれにとってのミッドレンジと、GoogleやAppleの考えるアフォ―ダブルにだいぶズレがあると思っています。ユーザーが欲しいと思うプロダクトを、スペックと価格のバランスを取って提供しています。

―― とはいえ、Nothing Phone(2)を出してから時間もたちました。そろそろハイエンドも必要ではないでしょうか。

黒住氏 確かに時間もたっています。日本市場では昨年(2024年)、Nothing Phone (2a)や「CMF Phone 1」をローンチしましたし、Nothing Phone (2a)のSpecial EditionやCommunity Editionもありますが、今はフラグシップがありません。最もバランスが取れていて、手に届きやすいプロダクトは提供できていますが、Nothingにはそれ以上のこともできます。そこは今後攻めていきたい領域です。

楽天モバイルの「新しいことにチャレンジする」考えがNothingと一致

―― 大きな一歩として、今回、初めて楽天モバイルが取り扱うことになりました。何か秘策を使ったのでしょうか。

黒住氏 着実な努力でしかありません。日本のキャリアグレードと呼ばれるクオリティーやサービス、カスタマーサポートがありますが、本当にそこに達しているかも正直、まだ分からない部分があります。最大限努力はしていますが、キャリアグレードにはなっていないかもしれない。ただ、楽天モバイルと組んだ理由の1つに、楽天モバイルもトライ&エラーの連続で成長していることがあります。慣習にとらわれず、新しいことにもチャレンジしています。これはNothingのブランドやビジネスとも一致した考え方です。

 楽天モバイルは、われわれのような新参者が入ってきても、「できない部分はあるんですよね、でも一緒にやっていきましょう」とおっしゃってくれます。われわれの価値を認めたうえで、できないことは一緒に準備してくれます。キャリアビジネスは、「これができないなら入れません」ということが多い。その意味では、われわれにとって最適なパートナーです。

 ソフトローンチしてからこの1年間やってきましたが、準備が整ったのでアクセルをもっと踏むぞというタイミングと、楽天モバイルが単月黒字化してこれからもっとやっていくぞというタイミングがピッタリ合ったこともあります。考え方だけでなく、ビジネスの局面も一致していたということです。

―― 実際にショップを見てきましたが、扱いがかなりいいですね。Androidの中では一番目立っていました。

黒住氏 この時点(インタビューは発売直後の4月中旬に実施した)ではまだ15店舗ほどですが、トータルで100店舗ぐらいになります。これまでも大手家電量販店には置いてありましたが、それ以外にはリアルで見ることができる場所がなかった。われわれからすると、お客さまにようやく手に取っていただける機会ができたということもあり、楽天モバイルはいいパートナーです。

―― 生産体制が充実したということも背景にあるのでしょうか。

黒住氏 今は急カーブを描くような加速度的な成長をしています。これまでは1年でやってきたボリュームを、3カ月で達成するような勢いです。生産体制はボリュームと表裏一体の関係で、ボリュームが増えるとフレキシビリティが上がり、品質も上がります。今は、ちょうどその時期に入り始めていると思っています。

 実際、1年、2年前だと、グローバルで販売している中で日本専用のプロダクトを起こすのはほぼ無理だったと思います。Nothing Phone (2a)のときに、ようやくそれができるようになりました。いまだにハードルはありますが、急成長の中でできるようになったこともあります。

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