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auの通信が速くなる「優先レーン」サービスを試す 混雑時にどれだけ効果が出た? 適用/非適用スマホで比較石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

KDDIは、7月1日に「au 5G Fast Lane」のサービスを開始した。これは、5G SAを契約しているユーザーの通信を文字通り“優先レーン”に乗せる仕組みで、混雑時に速度低下の影響を受けづらくなるのがメリットとなる。実際にau 5G Fast Laneを適用した端末と、適用していない端末で速度を比べてみた。

実機で速度差をチェック、その効果のほどは?

 では、実際にau 5G Fast Laneの効果はどれほどのものか。適用、非適用の端末2台でスピードテストをして、速度を比べてみた。まずは7月2日午前9時台に、KDDIの新本社が位置する高輪ゲートウェイ駅での速度をチェックした。ここでは、最も差がついたときで、au 5G Fast Lane適用端末が537.1Mbps、非適用端末が326.6Mbpsになり、1.6倍強の速度差が出た。

 何度かテストをしてみたところ、差が縮まったこともあったが、いずれもau 5G Fast Laneの方がスピードは出ていたうえに、レイテンシ(遅延)も短くなっていた。高輪ゲートウェイは2020年に新設された山手線の駅で、コロナ禍に突入した直後だったこともあり、利用者はまばらだった。2023年度の乗降客数は、全30駅中で最も少ない。


高輪ゲートウェイ駅、改札付近での結果。1.6倍程度の違いが出た。右がau 5G Fast Lane対応端末(以下同)

 ただし、3月に街開きを迎え、KDDIの移転も始まったことで徐々に人は増えている。渋谷駅や新宿駅、品川駅のようなターミナルと比べると人は少ないものの、多くの人が乗った列車が停車するため、ネットワークはそれなりに混雑していたようだ。一方で、非適用端末も300Mbpsを超えており、スマホ用のサイトを表示したり、アプリでコンテンツを読み込んだりする程度の実利用では差がほとんど分からない。これなら、優遇されていない回線の使い勝手が極端に低下しているとはいえないだろう。

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街開き直後の高輪ゲートウェイシティ。ただし、測定時にはここまで人はいなかったので、どちらかといえば、電車内の人の影響を受けたことがうかがえる

 翌日向かったのは、午前10時台の渋谷駅。この時間帯は夜のような大混雑はしておらず、周辺のオフィスに出勤する人も減っているが、訪日外国人観光客で比較的にぎわっている。大混雑かと言われればそうではないが、そこそこ人がいる状態といえる。ここでも、au 5G Fast Lane適用端末と非適用端末で通信速度に差が出た。適用端末は167.3Mbps、非適用端末は108.7Mbpsになり、1.5倍強の速度が出ている。


午前10時台の渋谷駅前でも測定。ここでも、au 5G Fast Lane適用端末の方が、速度が高かった

 高輪ゲートウェイと渋谷は、いずれもKDDIが実施したフィールドトライアルの1.8倍や2.2倍より数値は下回っているものの、実環境でau 5G Fast Laneが適用される端末が増えていることを踏まえれば、妥当な結果なのかもしれない。では、そんなに混雑しているようには見えない屋内ではどうなるか。

 次に向かったのは、原宿の交差点にできたハラカドという商業ビル。ここでランチを食べつつ、スピードテストを実施してみた。ハラカドは、インフラシェアリング事業者のJTOWERが屋内インフラを提供しており、複数のキャリアが相乗りしていることもあって、キャリア間の通信環境の差は小さい。ここでは、au 5G Fast Lane適用端末が268.8Mbps、非適用端末が223.3Mbpsだった。


ハラカド内では、40Mbps差にとどまった。この程度だと、体感に与える影響は小さくなりそうだ

 高輪ゲートウェイ駅や渋谷駅に比べると差が小さく、1.2倍程度の違いしかない。ランチタイムを微妙に過ぎた2時ごろで、あまり混雑していなかったことがその原因かもしれない。ちなみに、アンテナはJTOWERが提供しているものだが、そこにつながって無線を制御しているRU(Radio Unit)から先はKDDIのもの。KDDIによると、この状況でもau 5G Fast Laneも、適用されるという。

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