au新料金プランが好発進、UQ mobileは「ミニミニ」新規終了で解約率改善へ KDDI決算で見えた"上位シフト"戦略(2/2 ページ)
KDDI決算会見で松田社長が明かした戦略転換の成果が鮮明に。auユーザーの8割が使い放題プランを選択し、小容量プラン「ミニミニプラン」は50歳未満の約半数が1年以内に解約していたという衝撃的な実態も判明した。
金融でも攻めの姿勢、SBI証券と新提携
料金と技術だけでなく、経済圏競争でも新たな一手を打った。KDDIは通信と金融を組み合わせた「auマネ活プラン」を展開しており、契約数は160万を突破。今回新たにSBI証券との提携により、auじぶん銀行とのリアルタイム口座振替設定で金利優遇を受けられるサービスを開始する。
取締役執行役員常務CSO(最高戦略責任者)の勝木朋彦氏は、1月にMUFGとの資本関係を見直して以来「証券領域については提携先を拡大してauじぶん銀行の成長最大化を目指す方針にした」と説明。KDDIグループを離れた三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム証券)以外では初の銀証連携としてSBI証券と連携する。今後も他の証券会社との連携拡大を推進する方針だ。
質疑応答では、NTTドコモが住信SBIネット銀行を買収し、NTTグループがSBIホールディングスと資本業務提携をしたことの影響について問われたが、勝木氏は「ドコモの話があったから動いたわけではない。それ以前からSBI証券と協議を進めていた」と、独自の戦略であることを強調した。
松田氏は「通信と金融が結びついた経済圏競争が主戦場に変わっている。長年金融に取り組んできたのが戦略的に正しかったのかなと思う」と、先行者としての優位性に自信を示した。
増収減益でも「想定通り」の理由
業績はどうか。売上高は前年同期比3.4%増の1兆4363億円と増収を確保したが、営業利益は同1.6%減の2725億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同3.3%減の1711億円と減益となった。
減益の主因は、過年度の販促費影響による一過性要因73億円を含む214億円の費用増だ。しかし松田氏は「期初の想定通りに進捗(しんちょく)している」と説明。パーソナルセグメントのモバイル事業は19億円の増益、金融・エネルギー事業で62億円の増益、ローソン持分法利益で57億円の増益と、主要事業は順調に成長している。
今回から新たに開示を始めた「モバイル収入」(パーソナルとビジネスセグメントの合算)は5506億円で前年同期比76億円増加。総合ARPUは4340円(同60円増)、スマートフォン稼働数は45万契約増と、着実に成長している。
8月1日から既存プランへの値上げを実施しているため、ARPUは来期に大幅に増加する見通しだ。松田氏は「モバイル事業で通期に300億円の増益をしっかりやっていく」と意気込む。
AIとデータセンターで次の成長も準備
さらに先を見据えた投資も進めている。AI関連では4年間で1000億円の投資計画を推進中。大阪・堺のAIデータセンターが今期から本格稼働し、Google Cloudと連携したソブリンクラウドサービスも提供予定だ。ELYZAが開発した医療特化LLMや、高輪新本社での「リアルテックローソン」実証実験など、AIを活用した新サービスも展開している。
10月28日~29日には高輪ゲートウェイシティで「KDDI SUMMIT 2025」を開催し、最新の取り組みを紹介する。
「『つなぐチカラ』の進化に注力する」――。料金、技術、金融の全てで攻めの姿勢を見せるKDDI。松田氏が握る「操縦かん」は、確かに同社の成長軌道をコントロールしているようだ。
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