NTTの社名変更で「社歌」はどうなる? 広報に聞いた:ふぉーんなハナシ
7月1日、日本電信電話は正式に社名を「NTT」に改めた。もともと略称として浸透していた「NTT」という呼称が、ついに正式な社名となったわけだ。社歌はどうなったのだろうか――。
7月1日、日本電信電話は正式に社名を「NTT」に改めた。もともと略称として浸透していた「NTT」という呼称が、ついに正式な社名となったわけだ。
これに伴い、ロゴデザインも刷新された。NTTグループ全体の象徴でもある「ダイナミックループ」は引き続き使用されるが、新ロゴでは曲線を多用した丸みのあるフォントが採用され、「NTT」の文字とダイナミックループがともに鮮やかな青色で統一された。これは、かつてNTTデータがグローバル部門とNTTデータリミテッドを統合した際に制作したロゴデザインを踏襲したものである。
今回の変更は、単なるブランディングのリニューアルにとどまらない。新たなCMには、NTTがこれからの40年に向けて再び世界と競い、社会を変革していくという決意が込められており、その語り口や表現は、これが企業の「本気の変革」であることを雄弁に物語っている。こうした企業姿勢が明確に打ち出されるなかで、ふと素朴な疑問が浮かぶ。
「社歌はどうなるのか?」というものだ。
社歌は「従業員の士気向上や団結力」の表れ 実は、NTTにも社歌があった
日本企業において社歌は、経営理念や企業文化を表現する手段として位置付けられてきた。特に昭和期以前に創業した企業では、社歌が従業員の士気を高め、帰属意識や団結力を醸成するための象徴的存在として重用されてきた。軍歌や校歌のように、合唱を前提とした荘厳なメロディと格調高い歌詞を特徴とするものが多く、朝礼や社内イベント、スポーツ大会などで歌われることがある。
NTTにも歴とした社歌が存在している。そのタイトルは「日々新しく」。NTTグループの一員であるNTT東日本の野球部のWebサイトでは、その歌詞を確認できる。この歌には1番から3番まであるが、同サイトで確認できる歌詞は以下の通り。
風の音に 耳をかたむけ 問いかけるものに 応えよう
虹を架け 虹を跳び 進む自由こそNTT
かなえよう あなたのねがい 日々新しく われらは生きて
たしかな手ごたえ 喜びあおう
みんなの想いを支え 力をつくすNTT
「風の音に耳をかたむけ」「問いかけるものに応えよう」という歌い出しは、社会や顧客の声に敏感であろうとする姿勢を表している。また、「虹を架け 虹を跳び」という歌詞には、通信という目に見えないインフラを通じて、人と人、人と社会をつなぎ、さらなる未来へと踏み出していく意志が伝わってくる。「進む自由こそNTT」「日々新しく生きる」といったフレーズには、固定観念にとらわれず、自ら進化し続ける企業姿勢が表れている。
この歌詞のどこにも旧社名「日本電信電話」が登場せず NTTが社歌を変更しない理由は?
注目すべきは、この歌詞のどこにも「日本電信電話」という旧社名が登場しない点だ。今回の社名・ロゴ変更にあたり、NTTの広報に社歌の今後について尋ねたところ、「社歌は変更しない」という明確な回答が返ってきた。その理由として、「歌詞に旧社名が含まれていないため」という説明が添えられた。つまり、社名に関わる表記が一切存在しないため、新社名になったとしても変更の必要がないという判断なのだ。仮に「日本電信電話」や「でんしんでんわ」などの語が含まれていれば、社歌もまた見直しの対象になっていた可能性はある。
この判断には、社歌の役割そのものが関係していると考えられる。社歌は本来、企業の理念や未来への意志を象徴するものであり、時代や状況の変化に対して普遍的なメッセージを込めることで、社内で長期的に歌い継がれていくことを目的に作曲される。企業名そのものを織り込むことは、社名変更が将来的に起きた場合の混乱や形骸化を招くリスクがある。日々新しくが、あえて旧社名を用いず、理念や価値観を抽象的かつ普遍的に表現しているのは、こうした長期的視点を持った制作意図の表れかもしれない。
社員イベントでは、写真撮影時に「はい、チーズ」ではなく、「エヌ・ティー・ティー」の掛け声
ちなみに、NTTが社名変更を社内向けに発表した際の社員イベントでは、写真撮影時に「はい、チーズ」ではなく、「エヌ・ティー・ティー」の掛け声が使われた。場内に響き渡るエヌ・ティー・ティーの掛け声は、旧社名の「にほんでんしんでんわ」に比べて明らかにシンプルで、口に出してリズムよく言える点でも、新社名の浸透力の高さを感じさせる。社員イベントでの一場面からも、新たなブランドが社内文化に根づきつつあることが垣間見える。
時代は平成から令和に変わり、社歌のないベンチャー企業や外資系企業が増えている。社名やロゴが刷新されても、NTTの歌は変わらない──。そこにNTTの強いこだわりを感じた。
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