インタビュー

iPhone一強の日本でGalaxyが異例の成長を遂げた理由 2025年に起きた変化、スマホAI先駆者のポジション確立へ(1/2 ページ)

iPhone独占状態の日本市場でGalaxyが異例の成長を見せている。Galaxy Z Fold7は前作比180%、Galaxy S25は120%の成長を記録し、10年ぶりのソフトバンク再参入と体験重視の戦略転換が成長を後押しする。

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 iPhoneが市場の半分を占める日本で、Galaxyが異例の成長を見せている。9月18日、都内で開催されたラウンドテーブルで、サムスン電子ジャパンの幹部陣が明らかにした数字は注目に値する。

 Galaxy Z Fold7が前作比180%、Galaxy S25シリーズが前作比120%――この成長の背景には、10年ぶりのソフトバンク再参入と、体験重視への戦略転換があった。


左から、サムスン電子ジャパン CMO兼MX事業本部Marketing Team長 小林謙一氏、常務兼MX事業本部副本部長 大橋秀俊氏、MX事業本部営業Team長 谷口慎一郎氏

Galaxy S25シリーズの販売実績は「過去に例を見ない」ほど好調

 MX事業本部営業Team長の谷口慎一郎氏は、Galaxy S25シリーズの販売状況を「過去に例を見ない好調な推移」と表現した。2月に発売したGalaxy S25シリーズは先代「Galaxy S24」シリーズ比120%を記録。第2四半期の出荷量は前年同期比60%増と、発売後も勢いを維持している。

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 この好調を支えるのが、10年ぶりとなるソフトバンクへの再参入だ。谷口氏は「ソフトバンクとのビジネス、既存パートナーであるドコモ・KDDIとの良好な関係による相乗効果で伸びている」と分析する。

Galaxy Z Fold7は先代から180%の成長率、「ワクワクした」という声も多数

 2025年7月に発売した折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold7」は、日本国内において、先代の「Galaxy Z Fold6」から1.8倍多く売れた。この180%という成長率は、成熟した日本のスマートフォン市場では異例の数字といえる。

 折りたたみスマートフォンの最大の課題だった厚さを大幅に削減。谷口氏は「6年かけて薄くした分を1年でさらに薄くした」と、閉じた状態での厚みを削減した技術革新を強調する。


Galaxy S25、Galaxy S25 UltraとGalaxy Z Fold7、Galaxy Z Flip7

 谷口氏は「業界関係者の方々から、久しぶりに製品にワクワクしたという声が多数寄せられている」と手応えを語る。他メーカーからの乗り換えも非常に強く、「一部で驚異的な数字を記録している」という。

2025年はタッチポイントを強化して体験できる場所を増加

 15年前の2010年にGalaxyが日本に上陸した当時、市場はまだガラケーが主流だった。MX事業本部副本部長の大橋秀俊氏は「人が主役のイノベーションを通じて、よりよい世界を創造する」というブランド理念を強調する。世界最薄の3Gケータイから始まり、世界初の音声通話対応スマートフォン「Galaxy S II」、エッジスクリーンを搭載した「Galaxy Note Edge」と、サムスンは常に日本市場に革新的な製品を投入してきた。


GALAXY S SC-02BがNTTドコモで発売されてから15周年になる

日本市場に革新的な製品を投入してきた

 だが、本当の変化が起きたのは体験重視への転換だった。CMO兼MX事業本部Marketing Team長の小林謙一氏は「テレビCMやデジタル映像だけでは実感や体感を得られない」と気づいた。2025年のマーケティング戦略として打ち出した「タッチポイント強化」は、キャリアショップと量販店での展示台数を前年比1.55倍に拡大。Galaxy Z Fold7と「Galaxy Flip7」の体験者数は、前年比1.82倍に達した。

 水族館でのポップアップスタジオ展開、YOASOBIのライブ撮影体験イベント、K-POPイベント「KCON」でのブース出展などの施策により、SNS投稿数は前年比1.3倍に増加した。


YOASOBIのライブでGalaxyスマホを使った撮影を可能にしたイベントを開催した

 Galaxy Ambassadorプログラムでは、各キャリアのフィールドスタッフから伝道師を募集。全国200人規模のラウンダーが店頭サポートを行い、プロモーターがイベントを実施する体制を構築している。

Galaxyがサムスンのブランドだと知らない世代もいる

 「一時期、サムスンがブランド名を隠していた」というのは誤解だ。小林氏が明かした経緯によれば、最初のGalaxy Sは「Samsung Galaxy」として発売された。その後、Galaxy S6の頃に端末からSamsungロゴが消えた時期があったが、これは戦略的な判断だった。

 「ソニーがXperiaだけを押してプロモーションしていたように、認知の観点からGalaxyブランドに集中した」と小林氏は説明する。当時は「SamsungとGalaxyの2つの名前があることで認知が分散する」という議論があったという。

 現在は「Galaxyがサムスンのブランドだと知らない世代もいる」状況を踏まえ、Samsung Galaxyと再び併記する過渡期にある。小林氏は「名称とブランド名を結び付ける必要がある」と、企業ブランドとしてのサムスンの認知向上も重視する姿勢を示した。

エントリーモデルも強化、MVNOへの販路拡大は慎重な姿勢

 2025年の展開として、谷口氏は「各価格帯でしっかりと伸ばしていく」戦略を明言した。フラグシップ製品に加え、Galaxy A36 5GなどAシリーズのミドルレンジ、Galaxy A25 5Gなどエントリーモデルも強化し、全価格帯での拡充を進めている。

 直販チャネルではSamsung公式オンラインショップが好調で、Galaxy S25シリーズが、Galaxy S24シリーズ比で140%の予約を記録。Galaxy Harajuku、Galaxy Studio Osakaの直営店に加え、7月からは楽天公式ストアにも出店し、オンライン直販を拡大した。

 量販店展開も急ピッチで進む。2024年にヨドバシカメラAKIBAと「Galaxy Pop-up Studio」を設置、2025年4月にはヨドバシカメラ梅田にも設置し、さらに年内に横浜と京都にも新設し、体験拠点を4店舗体制に拡大する。


ヨドバシカメラAKIBAに設置された「Galaxy Pop-up Studio」

 SIMフリー製品で量販店に次ぐ大きな販路となるMVNOについては、慎重な姿勢を崩さない。谷口氏は「全方位で販売チャネルを検討しており、機会があれば拡大していきたい」と述べるにとどめた。2年前から進めてきた販売チャネル拡大は量販店とオンラインストアが中心で、MVNOへの展開は具体化していない。

 PC市場への参入についてはどうか。サムスンはモバイルノートGalaxy Bookシリーズを中心にグローバルでは幅広いラインアップを展開しているが、日本市場では10年以上にわたり製品を投入してこなかった。

 MX事業本部副本部長の大橋秀俊氏は「個人的には欲しいが、現状、悩んでいるのが事実」と率直に語る。コンシューマー向けPC市場の縮小と競争激化を理由に挙げ、「いい製品だから売れるほど単純ではない」との認識を示した。


Androidタブレットは日本で展開している
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