iPhone一強の日本でGalaxyが異例の成長を遂げた理由 2025年に起きた変化、スマホAI先駆者のポジション確立へ(2/2 ページ)
iPhone独占状態の日本市場でGalaxyが異例の成長を見せている。Galaxy Z Fold7は前作比180%、Galaxy S25は120%の成長を記録し、10年ぶりのソフトバンク再参入と体験重視の戦略転換が成長を後押しする。
Googleとは協業・競合の関係、Appleには対抗意識をあらわに
GoogleがPixelブランドで日本市場展開に注力する中、GalaxyスマホとはAI機能を中心に競合関係にある。しかし大橋氏は「Googleは敵だとは思っていない。お互いがお互いを必要としている」と、単純な競合関係ではないことを強調した。
グローバルでの稼働台数がAndroid陣営で最大規模となるGalaxyは、ユーザーからのフィードバックをGoogleと共有。一方でGoogleのOS開発力とサムスンのハードウェア技術を組み合わせることで、「かこって検索」などの新機能を実現している。大橋氏は「Googleの中にサムスン担当がいて、サムスンにもGoogle担当がいる」と、両社の密接な協力体制を明かした。
Pixelとの競争について大橋氏は「切磋琢磨(せっさたくま)の関係」と表現する。小林氏は「日本ではSamsung Galaxy対Google Pixelという構図があるかもしれないが、グローバルで見ると本当にパートナー。AndroidというOSを使って、AIという最新技術で世の中を幸せにしようという理念を共有している」と、複雑な関係性を説明。Unpacked(製品発表会)では毎回Googleの幹部が登壇し、両社の協業をアピールしている。
谷口氏も「Googleとは非常にいい関係を築いている。Androidとしてシェアをどう伸ばしていくかに尽きる」と、Pixelとの競合を認識しながらも、iPhone優位の日本市場でAndroid陣営全体の成長を重視する姿勢を見せた。
一方、Appleとの差別化については、大橋氏が「差別化要因の1つはAI。AIがすごいでしょうではなく、どのように使うと便利かを示すことが重要」と述べ、技術の実用性を重視する姿勢を示した。谷口氏は「日本のマーケットはiPhoneが強い。日本のマーケットはワクワク感が少なくなっている。Z Fold7は多くの方がワクワクした製品。常に新しい端末を投入していく」と、iPhone優位の市場に対して製品の革新性で挑む戦略を語った。
日本市場での課題 楽天モバイルとの関係性が停滞中
国内では修理拠点の拡充が急務となっている。現在はGalaxy Harajuku、Galaxy Studio Osakaでの修理対応にとどまる。ドコモショップでは即日修理が可能だが、他キャリアでの対応は限定的で、フォルダブル端末購入のハードルとなっている。大橋氏は「キャリアの拠点も増やしていきたいし、それ以外の拠点も増やしていきたい」と修理体制強化の必要性を認めた。
Samsung Walletの決済カード対応も道半ばだ。Galaxy S25シリーズの発表に合わせてローンチし、対応機種は9機種に拡大したものの、「カード側のカバレッジはまだまだ少ない」(大橋氏)と認める。航空系やポイント系カードとの交渉を継続しているが、実装には至っていない。
楽天モバイルとの関係構築も停滞している。大橋氏は「継続的にコミュニケーションは取っている」としながらも、直近での採用は限定的だ。
スマホAI先駆者としてのポジションを確立する
小林氏は今後のマーケティング方針として3点を挙げた。第1が「Innovation for All」の強化、第2が「AIならGalaxy AI」というスマホAI先駆者としてのポジション確立、第3がモバイルデバイスパイオニアとしての存在感向上だ。
折りたたみスマートフォンを「Innovation for Allを最も分かりやすく体現するモデル」と位置付け、新発売時期だけでなく年間を通じたコミュニケーションを計画している。
15年の節目を迎えたGalaxyは、ソフトバンク再参入による販売チャネル強化、折りたたみ端末での技術革新、AI機能の充実という3つの軸で、iPhone優位の日本市場に挑む。180%成長を遂げたGalaxy Z Fold7の勢いを、ブランド全体の成長につなげられるか。体験重視のマーケティングとGoogleとの協業による差別化が、その鍵を握っている。
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