インタビュー

「CMF Phone 2 Pro」「Phone (3)」から見える“本気”のNothing 黒住氏に聞くミッドレンジ/フラグシップの攻め方(3/3 ページ)

Nothingのスマートフォン戦略について、日本事業を率いる黒住吉郎氏にインタビュー。ミッドレンジの「CMF Phone 2 Pro」は販売好調で、楽天モバイルの展開もプラスに働いている。フラグシップの「Nothing Phone (3)」はFeliCaを搭載しながら海外と同水準の価格を実現した。

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AI機能は、よりパーソナルな情報を扱えるよう進化させる

―― Essentialサーチという機能も搭載されました。これはどのような機能なのでしょうか。Essential Spaceとの関係も教えてください。

黒住氏 AIの領域はEssential Spaceを母体にしながら、今後、段階的にNothing OSの機能を上げていく計画です。Nothing OSはシンプルで洗練されたUIですが、その中の特徴的なアプリとして入っているのがEssential Spaceです。アイデアや気になったことをどんどんためていき、整理するのがEssential Spaceの役割ですが、それを検索するのがEssentialサーチです。

 ただし、今はオンデバイスの連絡先やアプリ、ファイルを探してくるだけで、次の段階では外の世界につながり、例えば僕の名前を入れた際にWebの世界ではこういう人というようなコンテクストが提示されるようになります。これが次のステップで、マーケットによっては既にβ版を開始しましたが、日本では未提供です。それをチャットのように会話形式にしていくのが、さらに次のステップです。このステップ3になると、スマホの中のやりとりを見て、よりパーソナルな情報まで出てくるようになります。

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―― 3段階目は、文脈を把握する必要もあってかなりハードルが高そうですね。

黒住氏 高いです。ただ、ユーザーのプライバシーを守りながらいかにこの領域に入っていけるかは、一番大切なところです。Essential Spaceもスクリーンショットや声を入れられますが、そこをもう少し自然にできれば、3番目のステップに行けると思います。

―― デザインも、最初は不思議というか、違和感を覚えましたが、だんだんと見慣れてきました。

黒住氏 Nothing Phone(2)のときのコイルや、SIMカードスロットをモチーフとして使いながら、中にあるものを表面のデザインとして見せています。3本の線もフレキを見せている。意図を持って、中にあるものをデザインの要素にしています。しかも意識的に非対称性を出しています。カメラが左と真ん中の列にあって、右にはなかったり、上だけカメラの位置がズレていたり、細かく見れば見るほど面白いと思いますね。


あえて左右非対称のデザインを取り入れた

フラグシップにFeliCa搭載は楽天モバイルとの提携が大きい

―― ミドルレンジモデルと比べれば高いですが、価格は海外とほぼ同水準でした(※12GB+256GBモデルが12万4800円、16GB+512GBモデルが13万9800円)。

黒住氏 プラスαとして、日本モデルにはFeliCaが入っています。部品代もそうですし、認証のためのソフト開発などにもコストがかかってきます。比較は難しいのですが、それがありつつも適正な価格はどうだろうかということを考えました。


国内モデルはFeliCaに対応しながら、海外と同水準の価格を実現した

―― そこは突っ込んで伺いたかったのですが、ミドルレンジのNothing Phone (3a)は台数が出るので、おサイフケータイ対応のコストも回収しやすいと思いますが、この価格帯になると1台あたりに乗ってくる開発費も上がってしまいます。そこまでして対応したのはなぜでしょうか。

黒住氏 それを計算しながらやっています。シンプルに言うと、日本のビジネスモデルでは、なかなかFeliCaのような機能を入れることができませんでした。キャリアとのビジネスがなく、安定性が低かったからです。キャリアビジネスはやはり安定性がありますから。いやらしい言い方になりますが、1000店舗展開になれば、1店舗1台でも最低1000台にはなりますよね。この価格帯のものだと、それも大きい。楽天モバイルとのパートナーシップで安定性が増したというのが、大きな理由で、それがないと出たこと勝負になってしまいます。

―― 楽天モバイルでは割賦をやっていますが、Nothing側で今後、何か買いやすい仕組みは入れていく予定があるのでしょうか。

黒住氏 われわれの課題だと思っています。ただ、端末の販売台数がある一定規模までいかないと難しいところです。24年、25年と台数的には着実に伸びてきているので、次のステップに上がるときにはそういったことも検討しなければいけないと考えています。

―― Nothing Phone (3)はMVNOでの販売がありません。この点にはどういった背景があるのでしょうか。

黒住氏 楽天モバイルから評価していただき、このプロダクトを一番に信じていただけました。加えて、このステージであるからこそ、楽天モバイルと一緒になってできるだけ多くの方に触っていただきたい。他のチャネルを排除するという意識はありません。傾向的に、他のチャネルだと高価格帯になればなるほど難しいので、そこは販売チャネルを見た上での最適化になります。


Nothing Phone (3)と、同時発売の「Nothing Headphone (1)」を手にする黒住氏

取材を終えて:2024年とは異なるステージに 先進的なイメージをどう維持するか

 Nothing Phone (3a)、CMF Phone 2 Pro、Nothing Phone (3)と立て続けに端末を投入しているNothingだが、2025年はその過程で徐々に販路を拡大していることが分かる。楽天モバイルとの歯車が、しっかりかみ合い、販売数も伸ばしているようだ。その意味では、2024年までとは異なるステージに上がったといえる。

 一方で、コアなユーザーに支えられ、とがったブランドイメージを打ち出してきたNothingなだけに、メインストリームに上がった際に、その空気感をどう維持していくかは課題になりそうだ。楽天モバイル全店舗で扱われて大衆化しながらも、先進的なイメージを持ち続けられるのか。今後の展開には、日本法人の手腕も問われそうだ。

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