KDDIがリアルな接点でauショップよりも“ローソン推し”の理由
KDDIの松田浩路社長は、10月28日に開催したKDDI SUMMITの基調講演で、通信事業者として地域課題を解決していくことを改めて宣言。ユーザーとのタッチポイントとして重視しているのがローソンだ。一方、auショップの役割はどうなっていくのだろうか。
KDDIの松田浩路社長は、10月28日に開催したKDDI SUMMITの基調講演で、通信事業者として地域課題を解決していくことを改めて宣言。その際、5GやAIといったテクノロジーを駆使し、auショップやローソンなどの拠点で顧客に寄り添うことに加え、産業や交通の支援、人材育成にも関わりながら、ビジネスを持続させるための循環を作っていく方針を示した。
そんな中で、KDDIがユーザーとのタッチポイントとして強化しているのが、ローソンだ。KDDIは2024年に三菱商事、ローソンと資本業務提携契約を結び、共同経営を行っている。
その一環として、未来のコンビニを具現化した「Real×Tech LAWSON」を、2025年6月23日にKDDI本社のあるTAKANAWA GATEWAY CITYにオープン。AIカメラを活用した商品のレコメンド、サイネージを活用した空間演出など、既存のコンビニにはない特徴を持つ。生活に関わることをリモートで相談できる「Pontaよろず相談所」のブースも設けている。
KDDI 取締役執行役員専務 パーソナル事業本部長の竹澤浩氏も、「お客さまに寄り添い、パートナーと切り拓く未来」と題した講演で、ユーザーの暮らしに寄り添う上で「ローソン1万4000店の接点は計り知れない」と期待を寄せる。
実際、10月28日には、ローソンと共同で実施する内容のリリースを複数出している。1つが、AIとロボット技術を組み合わせた新たな店舗DXの実証を「ローソン S KDDI高輪本社店」で11月8日から実施すること。店内を循環して売り場の欠品を検知するロボットと、品出しするロボットを活用する。欠品の検知はAIを用い、目視確認を不要とする。品出しロボットは、事前に店舗業務を学習させ、手づかみの繊細な作業も行えるアームを搭載する。
もう1つが、AIグラスを活用した業務効率化の実証実験だ。ローソン店舗で従業員がAIグラスを着用し、業務内容を撮影して作業時間を分析、可視化する。また、食品調理などの業務マニュアルをAIに取り込み、AIと対話しながら手順を確認できるようにする。実験は2025年10月28日から12月26日まで行う。
この他、フィリピンの店舗でAIを活用した店舗オペレーションの効率化や売上アップに向けた実証実験も2025年9月3日から展開している。
2025年10月からは、使用済みの携帯電話やモバイルバッテリーなどに内蔵されたリチウムイオン電池の店頭回収を行う実証事業に参画。ローソン店舗で回収し、KDDIが回収された携帯電話のリサイクルを担当する。
以上のように、ローソンとの取り組みが活発化している一方で、ここ最近話題に出なくなったのがauショップだ。全国約2000店舗に及ぶauショップも、ユーザーとの重要なタッチポイントといえるが、ローソン推しの今、ショップの重要性は薄まりつつあるのだろうか。
松田氏は基調講演後のグループインタビューで、auショップは「前提」と考えている部分があり、ローソンとは「接点の種類が別だと思っている」と話す。
「auショップは毎日行くところでもなく、auのお客さまや、auに乗り換えたい人が行くところ。ローソンをハイライトしているのは、他キャリアのユーザーもいらっしゃるから。そこで一足飛びにauが売れるとは思っていないが、ローソンからKDDIのことを知っていただくのが大事」と同氏。
ローソン店舗で「KDDIが何かいいことをやっている」と知ってもらい、そこから地域の信頼を得て、自然に来店してもらえるという流れを松田氏は思い描いているようだ。
28日に発表したローソンとの取り組みは、店舗のオペレーション改善が主目的だが、店内で働くロボットやグラスをかけた店員を来店者が目にすることで、「何か面白いことをやっている」という認識にもつながる。そこにPontaよろず相談所や「Pontaパス」などでauのカラーをそれとなく示すことで、ローソンを起点にauの付加価値を伝えるきっかけにもなる。
もちろん携帯電話の契約拠点として、auショップの役割も引き続き重要になる。一方で、auユーザー以外にも関心を持ってもらえるよう、「よろず相談所は置いていく」(松田氏)とのこと。コンビニというタッチポイントを手にしたKDDIが、どのような仕掛けを続けていくのか注目したい。
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