コラム

「いまだにSuica/PASMO使えない」駅へ行ったら、「問い合わせが多い……」と駅員さんも苦労していた事情(1/2 ページ)

つい先日、筆者はスマートウォッチ「Google Pixel Watch 4」に登録したモバイルSuicaを使用し、東京から地方へと向かった。そこで改札を通れない事態に陥る可能性があることを知った。想像もしていなかったこの事態、一体なぜか――?


スマートウォッチ「Google Pixel Watch 4」

 つい先日、筆者はスマートウォッチ「Google Pixel Watch 4」に登録したモバイルSuicaを使用し、東京から地方、具体的には福島県会津地方の会津田島駅へと向かった。スマートフォンやスマートウォッチといった最新のデジタルデバイスと、それを利用するキャッシュレス決済が広く社会に普及した現代において、まさか目的地の駅を降りられない事態に直面するとは想像もしていなかった。

 事前にしっかりと下調べをしたため、実際に降車拒否という最悪の事態には陥らなかったものの、この日本にはいまだに「紙の切符のみ」でしか乗降できない駅が、主要路線の延長上にも存在するという現実を目の当たりにしたのだ。

 今回の目的地である会津田島駅は、本数としては多くないものの、東京方面から東武鉄道の特急も乗り入れるルート上に位置する駅だ。しかし、ここでは東京圏で一般的に利用されている交通系ICカード(SuicaやPASMOなど)が一切使用できない。そして、この状況やその対処法について、多くの利用者が意外と知らないというのだ。

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東武鉄道の鬼怒川温泉駅に停車する特急電車「スペーシアX」。特急電車「リバティ会津」などに乗車してここからさらに北へ行くと会津田島駅へもアクセスできる

 では、なぜこのような「デジタルとアナログのギャップ」が生じるのか、そしてもし誤ってICカードで乗車してしまった場合、利用者はどのような複雑な精算手続きを踏まなければならないのかについて、駅員への詳細な取材を通じて解説する。

会津田島駅で改札を出られないという事態に──なぜ?

 問題の焦点となるのは、浅草(東京)方面から会津田島駅へと向かう鉄道網の構造にある。東武鉄道の主要路線である東武スカイツリーラインは、途中の新藤原駅(栃木県)で野岩鉄道の会津鬼怒川線へと接続し、さらにその先の会津高原尾瀬口駅で会津鉄道の会津線へと接続し、会津田島駅へと至る。

 会津田島駅の駅員は、「交通系ICカードは、野岩鉄道と東武鉄道の境である新藤原駅から先はご利用になれません」と明確に説明する。つまり、新藤原駅までであれば東武鉄道の区間内としてSuicaなどの利用が可能だが、そこから先、わずか一駅でも野岩鉄道の区間に入った途端、ICカードは無効となるのだ。

Suicaで改札を通れない……解決策は複雑?

 では、誤ってICカードで乗車してしまい、会津田島駅に到着してしまった場合、具体的にどのような手続きが必要となるのだろうか。駅員への取材で、その処理が非常に複雑で手間のかかるものであることが明らかになった。

 駅員によると、まず大前提として会津田島駅の改札は出られないため、「その場合は、田島駅で降りて窓口にお声かけください」という指示となる。もし乗り継ぎ時間の都合で田島駅に寄れない、あるいは降車できない場合は、「一度車掌にお声かけください」と、車内での対応が必要になる場合もある。

 重要なのは、この後の精算処理の流れだ。ICカードで入場記録を残してしまった乗客に対し、駅や車掌は以下の二段階の処理を行う。

手順1:乗車区間の現金精算

 まず、乗客がご乗車になった全区間の運賃を、その場(会津田島駅の窓口や車内)で現金で精算しなければならない。ICカードによる自動引き落としやチャージ残高からの清算は、ICカードの読み取り機械がないため不可能である。

手順2:入場記録取り消しのための「連絡票」発行

 運賃を現金で精算した後、駅員はSuicaやPASMOを扱える駅へ持っていくための「連絡票」を発行する。駅員は、「精算処理に加えて、Suica・PASMOを扱える駅に向けた連絡票を発行いたします」と説明する。最終的には、この連絡票を扱える駅へ行き、精算処理を行う流れになるのだ。

 これらの複雑な手続きは、利用者だけでなく、駅員にも大きな負担を強いている。駅員は、「東京方面からICカードでタッチされて乗り換えてこられ、『どうすればいいですか?』と尋ねられるお客さまはかなりいらっしゃいます。応対が大変です」と、日常的な対応の多さを認めている。


Pixel Watch 4はJR東日本が提供する交通系ICカードのSuicaに対応しており、カード型Suicaを持たなくても、スマートウォッチだけで電車やバスへの乗車が可能だ。残高不足や有効期限切れなどで利用できない場合を除き、駅の改札機に本体をかざすだけでスムーズに通過できる。手ぶらでの移動を実現する便利な機能だ(参考:JR東日本が2022年10月7日に発出したニュースリリース)

東武鉄道によると、特急券は紙の切符を購入して乗車するか、スマートフォンやスマートウォッチのチケットレスサービス「トブチケ!」を利用して購入した後に送付される特急券詳細メールを駅構内の係員に提示するだけで乗車できるとのことだ。画像はPixel Watch 4のディスプレイに表示された特急券購入詳細メールの一部

最も確実で推奨される乗車方法は……「実にアナログな手法」

 このような複雑な精算と手続きを避けるため、駅員が最も確実で推奨する方法は極めてシンプルだ。「まず、ご乗車の際に(ICカードで)タッチをせず、出発駅で現金で全区間のきっぷを買っていただくのが一番確実です。そうすれば、田島駅で紙のきっぷを回収するだけで済みます」

 結局のところ、最新のスマートフォンやスマートウォッチに登録されたICカードであっても、「紙の切符」が最も確実な手段なのである。会津田島駅にはICカードを読み取る機械がないため、入場記録の処理もチャージも一切できない。

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