NHK ONEの「閉じられないメッセージ」、既受信契約者にも表示へ その意図は?(2/2 ページ)
10月開始の「NHK ONE」は放送と通信を統合した新サービスだが、ネット上では戸惑いの声が広がる。焦点は、受信契約のひも付けに応じない場合に画面へ表示され続ける「閉じられないメッセージ」の存在である。その意図を広報局に問うと、回答からはデジタル時代の視聴者を「管理」しようとするNHKの姿勢が透けた。
既受信契約者でもID連携をしなければ消えない仕様に
NHKの回答の中で最も衝撃的だったのが、既契約者への扱いだ。受信契約を締結しているが、プライバシーの観点などからNHK ONE IDとの連携を望まない人はどうなるのかを質問すると、NHKは次のように回答した。
「NHK ONEをご利用の方の受信契約状況を確認させていただくため、すでにご契約をいただいているみなさまにも受信契約情報の登録・連携のお手続きをお願いしています。現状では、アカウントの連携手続きをいただけない場合は、メッセージを表示させなくすることができません。なお、個人情報については規約に則り適切に扱っております」
これは、受信料を支払っていても、ID連携を拒否する限り、視聴中にメッセージが消えないことを意味する。ID連携を必須化する動きにほかならず、「公平負担」という言葉の意味が拡張されつつあるように見える。
NHK ONEアプリやサイトを利用中に、「受信契約情報の登録・連携のお願い」というメッセージ画面が表示される場合がある。まず、画面内に表示される「アカウント設定画面に進む」という赤いボタンを選択する。既に「受信料アカウント」を持っている場合は「受信料アカウントと連携する」ボタンを選択し、既存のアカウント情報を入力してひも付けを行う。受信料アカウントを持っていない場合は「受信契約情報を登録する」ボタンを選択し、新規に契約情報を入力して登録を進める(出典:「受信契約情報の登録・連携」の運用開始)
メッセージが表示されない場合や、任意のタイミングで手続きを行いたい場合は、ログイン後に設定メニュー内にある「受信契約について」という項目を選択して手続きを行える(出典:「受信契約情報の登録・連携」の運用開始)
NHKはID連携を事実上の“必須手続き”とする姿勢
今回の回答を総合すると、NHKは従来の放送波を中心とした提供モデルから、ユーザーIDを基点に受信料の支払状況や連携設定を一元的に管理する方向へと大きく舵を切っていることが分かる。その背景には、インターネット経由の視聴が広がる中で、受信契約の有無を明確に把握する必要性が高まっているという事情もある。
その受信契約に関するメッセージは、ニュースや災害情報の閲覧時にも表示される。実際にログインしていない状態で天気防災にアクセスすると、「ご利用にあたって」という表題とともに、「すでに受信契約を締結されている場合は、別途のご契約や追加のご負担は必要ありません。受信契約を締結されていない方がご利用された場合は、ご契約の手続きをお願いします」といった案内が提示される。
受信契約に関するメッセージは、ニュースや災害情報の閲覧時にも表示される。実際に未ログインで天気防災へアクセスすると、「既存契約者は追加契約や負担は不要」である旨とともに、未契約者が利用する場合には契約手続きを行うよう求める案内が提示される
この仕組みを見る限り、閉じられないメッセージは単なる利用上の注意喚起にとどまらず、ID連携を促す意図が強いことが読み取れる。ユーザーが「ログインせずに使い続ける」選択肢は、事実上取りづらくなる。
一見するとNHK ONEは、複数の機能を統合したサブスクリプション型サービスのように映る。しかし、その利用の大前提には受信料の支払いが存在し、さらにID連携を求められる点が、一般的な動画アプリやニュースアプリとは根本的に異なる。こうした設計が利用者から好意的に受け止められるかどうかには疑問が残る。
災害時にはメッセージ表示を外すなど公益性への配慮は示されたものの、ID連携を事実上の“必須手続き”とする今回の姿勢は、今後も議論を呼ぶだろう。NHK ONEが生活者の利便性を高める一方で、視聴者の自由度やプライバシーの扱いはどのように変化していくのか──。NHKの回答は、この転換点の一端を象徴するものだった。
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