しなの鉄道が2026年3月14日から「Suica」に対応 「モバイルSuica定期券」も購入可能だが“トレードオフ”も
しなの鉄道が導入を表明していた「Suica」の導入期日が2026年3月14日(ダイヤ改正日)に決まった。注意点と併せて概要をお伝えする。
しなの鉄道は12月12日、東日本旅客鉄道(JR東日本)の交通系ICカード「Suica」による乗車サービスを2026年3月14日から開始することを発表した。また同社とJR東日本は12月15日、JR東日本が提供する「モバイルSuica」および「Apple PayのSuica」(以下まとめて「モバイルSuica」)において、2026年3月14日5時からしなの鉄道“単独”の定期券を発売することを発表した。
しなの鉄道におけるSuicaサービスの概要
しなの鉄道では、全路線の全区間においてSuicaと、Suicaと相互利用可能な交通系ICカードを利用できるようになる(※1)。具体的な区間は以下の通りで、JR東日本の信越線の篠ノ井~長野間を含むSuica首都圏エリアとの通し利用も可能だ(注意点は後述する)。
- しなの鉄道線:軽井沢~篠ノ井間
- 北しなの線:長野~妙高高原間
(※1)仙台市交通局の「Icsca」を除く(IcscaはSuica仙台エリアのみの相互利用)
しなの鉄道線の軽井沢駅と上田駅には、交通系ICカード対応の「自動改札機」が新設される。JR東日本との共同利用となる篠ノ井駅と長野駅については、既存の自動改札機で対応する。他の駅には「簡易Suica改札機」が設置される。
Suicaカード/My Suica/Suica定期券も購入可
同社ではJR東日本が発行する「Suicaカード」の他、記名式の「My Suica」、定期券として利用できる「Suica定期券」も発売する。ただし、これらの発売は以下の駅の窓口に限られる。
- しなの鉄道線:軽井沢駅/小諸駅/上田駅/屋代駅
- 北しなの線:長野駅(しなの鉄道きっぷうりば)/豊野駅
Suica定期券は「通勤」「通学(小学校~大学/専門学校)」の両方において、以下のパターンで購入可能だ。
- しなの鉄道線の各駅相互間
- 北しなの線の各駅相互間
- しなの鉄道線/北しなの線と篠ノ井線(松本~長野間)の連絡定期券
- 「しなの鉄道線~JR篠ノ井線~北しなの線」の通過連絡定期券も購入可
なお、My SuicaとSuica定期券については紛失/盗難時も再発行可能だが、しなの鉄道が発売(発行)したSuica定期券の再発行手続きは、しなの鉄道の窓口でのみを受け付ける(紛失/盗難登録自体はSuica/PASMO事業者の窓口で受付可能)。
自動券売機でのチャージも可能(一部駅を除く)
Suicaの導入に合わせて、しなの鉄道ではカードタイプの交通系ICカードのチャージに対応する自動券売機を導入する。ただし、以下の駅には導入されない。
- しなの鉄道線:軽井沢駅(旧駅舎)/信濃追分駅/平原駅
- 北しなの線:古間駅/妙高高原駅
モバイルSuica定期券も購入可
モバイルSuica定期券の購入は、Suica定期券と同じおおむね条件で行える。ただし、小学生の通学定期券は購入できない。
購入に当たっては、アプリの更新とモバイルSuicaの会員登録が必要となる。
Suica導入に伴う注意点
しなの鉄道におけるSuicaの導入に伴う主な注意点は以下の通りだ。
「IC運賃」の導入と実施運賃の変更
Suicaの導入に伴い、しなの鉄道では交通系ICカードの乗車時に適用する「IC運賃」を導入する。IC運賃は1円単位で計算を行う。
同時に、同社では2024年7月に認可を受けた運賃上限改定に基づいて、一部距離帯において実施運賃を改定(10円値上げ)した上で、消費税の端数処理を「四捨五入」から「切り捨て」に改める。これにより、2026年3月14日以降の運賃は常に「通常運賃≧IC運賃」となる。
なお、同社内の定期券運賃については現行から据え置く。
JR小海線を利用する場合の運賃計算
しなの鉄道線の小諸駅では、改札を出ずにJR小海線に乗り継ぐことができる。小海線では現在、清里駅と野辺山駅の2駅に限りSuica(交通系ICカード)での乗降をサポートしており、これは2026年3月14日以降も変わらない。
先述の通り、しなの鉄道線/北しなの線はSuica首都圏エリアとの通し利用が可能で、運賃は原則として最短経路で計算される。しかし、しなの鉄道線/北しなの線の各駅~清里/野辺山間を交通系ICカードで乗車する場合は、実際の経路に関わらず「しなの鉄道線/北しなの線~篠ノ井線~(塩尻駅)中央線~(小淵沢駅)~清里/野辺山」という経路で乗車したとみなして運賃計算を行う。かなり“割高”になるので、事前にきっぷ(乗車券)を購入した上で乗車することをお勧めする。
なお、小諸駅では駅構内にも簡易Suica改札機が設置される。同駅でしなの鉄道線と小海線を乗り継ぐ場合は「小海線(JR線)はきっぷ(または運賃別途精算)/しなの鉄道線は交通系ICカード」という乗車をするとムダが少なくなる。
窓口/自動券売機の販売体制の変更
Suicaの導入に伴い、しなの鉄道で2026年3月13日をもって窓口/自動券売機の販売体制を一部変更する。
【販売窓口の縮小】
Suicaの販売を“行わない”駅において、きっぷ類の販売窓口の営業を終了する。
【一部乗車券類の販売終了】
Suicaの導入に伴い、自動券売機や窓口において以下のきっぷの販売を終了する。
- 往復乗車券
- 普通回数乗車券(11枚つづり)
- 障害者用(身体/知的/精神)および通学用の割引回数乗車券は窓口で購入可
- 企画乗車券(千曲川きっぷ、軽井沢・長野フリーきっぷなど)
なお、企画乗車券(お得なきっぷ)については、2026年3月14日以降は「デジタルチケット」として発売する。価格や内容の詳細は後日発表されるそうだが、軽井沢・長野フリーきっぷの代替としてしなの鉄道線全線の普通列車自由席が乗り放題となる商品は登場するようだ。
【窓口/自動販売機でのクレジットカード決済終了】
Suica対応に伴う機器の入れ替えに伴い、2026年3月13日をもって軽井沢駅/小諸駅/上田駅/屋代駅の窓口と自動券売機におけるクレジットカードの取り扱いが終了となる。
なお、機器の入れ替えスケジュールの都合で、同日以前に取り扱いを終了する場合もある。
軽井沢駅/小諸駅/上田駅/屋代駅の窓口と自動券売機では、クレジットカードできっぷを購入できたのだが、Suica導入に伴い廃止される。定期券をクレジットカードで購入したい場合はモバイルSuicaを使うか、JR線の区間を含む連絡定期券ならJR東日本のみどりの窓口/指定席券売機で購入することになる
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