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「ドコモSMTBネット銀行」で何が変わる? ドコモのサービス連携でdポイントがお得にたまり、解約抑止につなげる(1/2 ページ)

NTTドコモ、三井住友信託銀行、住信SBIネット銀行は、住信SBIネット銀行の商号を2026年8月3日から「ドコモSMTBネット銀行」に変更する。3社の強みを生かし、「くらしと金融の境目のない未来」を目指す。金融サービスとの連携でdポイントがよりお得にたまるようになり、流出抑止にもつなげる。

 NTTドコモ、三井住友信託銀行、住信SBIネット銀行は、住信SBIネット銀行の商号を2026年8月3日から「ドコモSMTBネット銀行」に変更する。

 3社のパートナーシップを強化するため、住信SBIネット銀行の資本再編を行い、ドコモと三井住友信託銀行の持株比率は55.37%:44.63%となる。さらに、ドコモが保有するA種種類株式を普通株式に転換することで、議決権比率は50%ずつになる。


ドコモと三井住友信託銀行の住信SBIネット銀行への出資比率を変更する

 12月19日に開催した説明会では、ドコモ、住信SBIネット銀行、三井住友信託銀行のトップが、パートナーシップの狙いを語った。

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左から、ドコモの前田氏、住信SBIネット銀行の円山氏、三井住友信託銀行の大山氏

d NEOBANKとドコモのサービスを利用することでdポイントがお得にたまる

 NTTドコモ 代表取締役社長の前田義晃氏は、社名変更について、「あえて奇をてらわない社名にしたのは、共同経営パートナーである三井住友信託銀行とドコモが一丸となって経営にコミットし、新たな銀行のさらなる成長を目指す強い決意の証」と話す。


住信SBIネット銀行は2026年8月3日から「ドコモSMTBネット銀行」に商号を変更する

 前田氏はドコモの強みとして、通信や電気、ガスなど日常生活に関わる多彩なサービスや1億強の顧客基盤を挙げる。対する住信SBIネット銀行は使いやすいUI(ユーザーインタフェース)、三井住友信託銀行は不動産、資産管理、承継などのソリューションを強みとする。これら3社が連携することで、「お客さまが意識することなく、日々の生活の中で金融サービスの恩恵を受けられる」世界の実現を目指す。3社はこの世界を「くらしと金融の境目のない未来」と表現する。


3社の強みを生かし、「くらしと金融の境目のない未来」を目指す

 ドコモの経済圏とも連動し、金融サービスをお得に利用できる仕組みも強化する。住信SBIネット銀行の口座で給与受け取りやドコモ回線とのセット利用で、dポイントがたまるようになる。dカードの引き落とし口座を住信SBIネット銀行に設定すると、dカードでのポイント還元率がアップする。ドコモユーザーに対し、住宅ローン金利を優遇する特典も用意する。これらの特典は、2026年8月の社名変更のタイミングで実施する予定だ。


住信SBIネット銀行とドコモのサービスをお得に利用できる特典を用意する

 銀行サービス強化による解約抑止の効果は「確実にあると考えている」と前田氏は述べる。ドコモでは、dカード、d払い、dポイントをセットで使っているユーザーの解約率は、使っていないユーザーの3分の1以下に低下するという。解約抑止だけでなく、他社からの流入も狙う。「ドコモの回線サービスとセットで使った方がお得だと思ってもらい、こちら側に入ってもらえる状況を作っていきたい」(前田氏)

 特典という意味では、auが料金プラン「マネ活2」でauじぶん銀行との連携を強化したように、料金プランの特典にd NEOBANKを組み込む方向性もあり得る。その可能性について前田氏は「われわれも、もともとポイ活という形で金融サービスとの連携を強めているので、そういった枠組みの中に銀行サービスを組み込んでいくことは検討していきたい。他社にないような、お得で便利なサービスを作っていきたい」との考えを明かす。ただ、現状で具体的な連携は決まっておらず、まずは銀行とドコモのサービスをセットで使ってお得になる仕組みを整えていく。

 銀行をハブにしたdポイントの還元や通信料金の値下げが実現すれば、ドコモの経済圏がより強固なものになる。特に住宅ローンの金利優遇は、長年利用するものだけに、一度囲い込めば優良顧客になる可能性が高い。ユーザーをより長く離れられなくするためには、現在はd払いやdカードの連携がメインのポイ活プランも、アップデートは必須といえる。

 売り上げの目標について、前田氏は「2030年までには、現在の金融サービスの売り上げを倍くらいにしていきたい」と語った。

生成AIが銀行取引を行う「NEOBANK ai」も導入 2月にβテスト開始

 住信SBIネット銀行 代表取締役社長の円山法昭氏は、「ドコモグループ各社が持つ生活に関わるデータを組み合わせることで、ユーザー一人一人に合わせた商品を届けられる」と期待を寄せる。住信SBIネット銀行とマネックス証券の口座間の資金をスムーズに移動できるスイープ機能を提供する他、マネックス証券口座の同時開設も可能にする。


ドコモのデータも活用し、ユーザー一人一人に合ったサービスの提供を目指す

 三井住友信託銀行との連携も強化し、「資産運用、不動産、遺言、相続など、われわれ(住信SBIネット銀行)では対応できないサービスや商品を提供いただき、お客さまに提供する」と円山氏は展望を話す。

 現在28社に提供しているBaaSの提携先をさらに拡大する。さらに、ドコモ、三井住友信託銀行と提携することで「スマートライフプラットフォーム」を構築し、「BaaS(Bank as a Service)」から「Ecosystem as a Service」に進化させる考えも円山氏は明かす。これは、銀行サービスの提供にとどまらず、通信、エンタメ、ポイント、決済、投資、融資などの機能を追加して日常生活全般をサポートすることを示す。そのハブとなるアプリも、それ1つで多彩な機能を持つ「スーパーアプリ」に進化させていく。


BaaSの提携先を拡充し、提携企業の本業支援を強化する

銀行にさまざまなサービスを加えた「スマートライフプラットフォーム」の確立を目指す

ドコモが持つサービスとも組み合わせて、シームレスな金融サービスを提供していく

 円山氏は、住信SBIネット銀行のサービスにAIを取り入れた「NEOBANK ai」の構想も発表した。これは、音声、チャット、画像を介して、生成AIに銀行取引を代行してもらうもの。例えば、レシートの写真を読み込んで、割り勘の集金を確認する、指定したユーザーや自分名義の銀行に送金する、といったことが可能になる。現在はβテスターを募集しており、2026年2月からβテストを実施する予定だ。


AIに話しかけるだけで銀行取引ができる「NEOBANK ai」を開発。2026年2月からβテストを実施する

レシートを読み込んで「この割り勘、集金できてる?」と尋ねて入金確認ができる

さまざまな銀行取引を写真や声で行える

βテスターはd NEOBANKアプリから応募できる

 なお、住信SBIネット銀行はリアルな銀行は持たないが、ドコモ傘下になったことで、ドコモショップの活用が期待される。前田氏もドコモショップについて「うまく活用しながら、金融商品をおすすめする、といったことはやっていきたい」と話す。住信SBIネット銀行の視点でいうと、銀行代理業者のMXモバイリングがドコモショップの代理店として住宅ローンを扱っていることから、同社運営のドコモショップでd NEOBANKを案内していくようだ。円山氏は「他のドコモのショップでも利用できるよう仕組み作りも考えている」と展望を話す。

 AIについては、ドコモも2026年度内に、ユーザー一人一人に合った提案をすることを目指したAIエージェントを提供する見込み。こちらの開発は「しっかり進めており、公約している期間にお届けしたい」(前田氏)とのことで、金融サービスとの連携も視野に入れている。また、住信SBIネット銀行が開発しているNEOBANK aiとの連携も「考えていきたい」(前田氏)とした。

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