「スマホ新法」を巡るAppleとGoogleの動き App Storeの競争力が上がる一方で“iOSのGoogle化”が進む?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
「スマホ新法」の施行により、代替アプリストアや外部決済サービスの導入が必須になった。Appleは、iOSに代替アプリストアや外部決済サービスの導入を余儀なくされた。手数料については決済手数料を切り出し、5%に設定したことで、外部決済サービスのアプリ内決済は導入の難易度が高くなった。
日本特有の「公証」で担保されるセキュリティ、手数料体系も改定
公証とは、Appleがセキュリティのリスクがないことや、アプリが端末自体に不具合を起こさないかといったことを担保する、最低限の審査を指す。App Storeで行われている審査とは異なり、ユーザー体験などのガイドラインは設けられていない。安全や安心に関わる、ベースとなる審査だけをAppleが担うという仕組みだ。これを行うため、開発者はAppleにアプリを提出する。
Appleによると、開発者はアプリを配信する際に、App Storeを選択するか、代替アプリストアを選択するか、もしくはそれら全てで配信するかにチェックをつけていくという。代替アプリストアを選択した場合、公証のプロセスを経た後、そのアプリストア自身の基準で審査を行い、許可が出ればアプリが公開される。
スマホ新法では、ユーザーの安全保護を目的とした「正当な理由」に基づく例外措置が認められている。こうした点は、もともと代替アプリストアを許容していたGoogleも評価しており、先のデイ氏は「歓迎すべきことの1つは、正当な理由のセーフガードが設けられたこと」と語っていた。プラットフォーマーが懸念していた、セキュリティのリスクが軽減されつつ、競争促進につながる点では、欧州のDMAとは大きく異なっているといえる。
ただし、公証というプロセスを経る必要があり、かつiOSの知財でもあるコア機能を使用するため、Appleは代替アプリストアによるアプリの配信にも5%の手数料を課す。また、アプリ内決済に外部決済サービスを利用したり、アプリからのリンクで飛んだ外部サイトで決済したりした場合にも、それぞれの手数料を設定した。これに伴い、同社は日本の開発者向けの手数料全体を細分化しつつ、改定している。
まず、手数料を決済とそれ以外の2つに分け、App Storeの決済処理には5%を課金する。App Storeの利用自体には、21%もしくは10%の手数料を設定した。これまでは、基本手数料が30%、軽減措置が適用された場合には15%だったが、新たな手数料体系ではこれが合計26%もしくは15%になる。一部の開発者にとっては値下げが実現した格好だ。
また、App Storeを使いつつ、決済には代替手段を用いた際には21%もしくは10%の手数料がかかる。これは、App Storeそのものを利用しているためだ。決済処理のみの手数料を切り出すことで、ベースとなるApp Storeの利用そのものの手数料が決まった格好だ。外部決済サービスでユーザーに課金したとしても、App Storeそのものの対価は取っていくというわけだ。
外部のサイトに誘導し、決済した場合にも理屈は同じだが、Appleが提供する機能の一部を利用していないこともあり、この場合の手数料は15%もしくは10%に減額されている。スマホ新法では、こうしたコストを開発者に転嫁することは認められており、Appleもそれにのっとった。Appleが、知財やイノベーションへの課金が認められていると評価していたのはそのためだ。
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