「スマホ新法」を巡るAppleとGoogleの動き App Storeの競争力が上がる一方で“iOSのGoogle化”が進む?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
「スマホ新法」の施行により、代替アプリストアや外部決済サービスの導入が必須になった。Appleは、iOSに代替アプリストアや外部決済サービスの導入を余儀なくされた。手数料については決済手数料を切り出し、5%に設定したことで、外部決済サービスのアプリ内決済は導入の難易度が高くなった。
12月18日に、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(通称・スマホ新法)が施行された。この法律は公正取引委員会が主導し、制定されたもので、スマホというプラットフォーム上での競争を活性化させるための禁止事項などを定めている。規制の主な対象となるのは、AppleのiOSとGoogleのAndroidだ。
法律の施行に合わせ、AppleはiOS 26.2に日本向けの機能を実装。Googleも、Androidの一部機能や開発者向けの課金ルールを改定している。欧州で制定されたデジタル市場法(DMA)には猛反発しているAppleだが、同社によると、スマホ新法には一定の評価もしているという。これはGoogleも同じだ。一方で、両者の施策からは戦略の違いも見えてくる。その動きを解説していこう。
ついに施行されたスマホ新法、Appleは代替アプリストアを導入
エコシステムへの影響という観点で、最も大きな変更は、代替アプリストアや外部決済サービスの導入が必須になったことだろう。前者は、App StoreやGoogle Playといったプラットフォーマー自身が運営しているアプリストア“以外”のストアのこと。後者は、アプリ内でプラットフォーマー以外の決済サービスを利用したり、ブラウザに飛んで決済させたりといった機能や行為を指す。
Googleは当初からAndroidの代替ストアを許容しており、警告は出るがストアを経由しないアプリのインストール(サイドローディング)も可能。外部決済サービスの利用も、ゲーム以外のアプリで認めていた。Googleのアジア太平洋地域 法規制政策 統括のフェリシティ・デイ氏は、「新法の要件の多くは、その存在以前から製品に実装していたオープン性と選択の原則を反映していた」と話す。
これに対し、Appleは、iOSに代替アプリストアや外部決済サービスの導入を余儀なくされた。実際、スマホ新法が施行された18日には、代替アプリストア「AltStore PAL」が日本でのサービスを開始しており、iPhoneにインストールできることを確認している。このストアに掲載されているアプリは、アップルの審査を部分的にしか経ていない。
また、AmazonはKindleアプリを外部サイトでの決済に対応させており、ボタンをタップするとその旨が表示されるようになった。この点では、スマホ新法の施行でユーザーの選択肢が増えた格好だ。App Storeに必要とするアプリがない場合や、より安価な決済手段を選びたい際に、こうした手段が取れるのはメリットといえる。
代替アプリストアやサイドローディングの無制限な導入は、かねてAppleが反対の意を表明していた。OSの深い部分にまでアクセスできるアプリをAppleの審査なしでインストールできるのは、セキュリティやプライバシーのリスクに直結するからだ。一方で、Appleは、施行されたスマホ新法には一定の評価をしている。欧州など、他の国や地域で導入された規制よりも、ユーザーを優先している点で優れた法律だからだという。
代替アプリストアの導入や、外部決済サービスの導入はOSやプラットフォームの一部にセキュリティホールを作ることにもなるため、リスクは増えるとしているが、スマホ新法では、それを低減させることが可能というのがAppleのスタンスだ。これを実現するための要素が、「公証」という仕組みになる。
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