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スマホ新法は「オープンなAndroidエコシステム」と矛盾しない Googleが高く評価する理由(1/2 ページ)

12月18日施行のスマホソフトウェア競争促進法は、特定ソフト分野での競争促進とサービス向上を狙う。初期設定時などにブラウザや検索エンジンを利用者が自ら選べる「チョイススクリーン」の導入を開始した。Googleは新法準拠に向けた取り組みを説明し、公取委との協議をへたAndroidの運用方針を示した。

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 12月18日に「スマホソフトウェア競争促進法」(以下、新法)が施行された。新法は、ブラウザや検索エンジン、モバイルOS、アプリストアといった「特定ソフトウェア」の分野で競争を促すことを目的としている。複数の事業者が参入しやすい環境を整えることで、利用者が選べるサービスを増やし、その品質向上につなげようとする狙いがある。

Google スマホ新法
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 新法の施行にあわせて導入されるチョイススクリーンは、端末の初期設定やOSアップデート後に必ず表示される選択画面で、利用者がブラウザや検索エンジンを選択できるようになる。チョイススクリーンはまさにその選択画面という意味だ。

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デバイスの初期設定時、ユーザーは選択画面にてデフォルトのブラウザを選択する必要がある。この操作により、選択したブラウザアプリが端末に未導入の場合は自動的にインストールされる。さらに、そのブラウザがシステム既定のアプリとして設定され、他アプリ等からリンクを開く際に使用されるようになる(出典:(プロバイダー様向け)選択画面について
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デバイスの初期設定時、ユーザーは検索サービスの選択画面にて検索プロバイダーを1つ指定する必要がある。この選択により、ホーム画面の検索ボックスおよびChromeのデフォルト検索設定がそのプロバイダーへと変更される。さらに、選択したプロバイダーの検索アプリが未導入の場合には、自動的に端末へインストールされる仕様だ(出典:(プロバイダー様向け)選択画面について

 Googleは新法の施行を前に、日本の報道陣に対して新法への準拠に向けた取り組みと、日本市場におけるAndroidエコシステムの今後の運用方針について詳細を説明した。Google アジア太平洋地域 法規制政策 統括 フェリシティ・デイ氏、同 法規制政策 クリストファー・キュー氏が、公正取引委員会との長期間にわたる協議の成果や、具体的な製品変更の内容、そして欧州の規制との差異について語った。

公取委との18カ月に及ぶ対話の成果――欧州とは異なる日本の「正当な理由」を評価

 Googleは今回、新法について唐突に言及したのではなく、新法の施行に向けて公正取引委員会と連携してきた。デイ氏はこれまでの取り組みとして、過去18カ月間にわたり、パブリックコメントの提出や数百ページに及ぶ資料提供、さらには製品専門家や幹部を日本へ招いての説明など、密接な協議を重ねてきたことを明かした。

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Googleによる新法への言及は唐突なものではなく、施行に向け公正取引委員会と連携してきた経緯がある。デイ氏は過去18カ月間、パブリックコメントや数百ページに及ぶ資料の提出に加え、専門家や幹部を日本へ招いて説明を行うなど、当局と密接な協議を重ねてきたことを明らかにした(出典:公正取引委員会が公開している「チョイススクリーン」のポスター

 さらに、デイ氏は「弊社は、明確かつ合理的に運用されるルールへの日本のコミットメントを高く評価している」と述べ、新法の要件がGoogleが長年掲げてきた「オープン性」と「選択肢」の原則と合致しているとの見解を示した。特に興味深いのは、デイ氏が挙げた欧州の「デジタル市場法」(DMA)との比較だ。GoogleはDMAに対しては、コンプライアンスのために厳しいトレードオフを強いられたとの認識を示しているが、日本の新法については、よりバランスが取れていると評価している。

 その最大の理由は、新法に「正当な理由(Justifiable Grounds)」に基づく保護措置が盛り込まれている点だ。デイ氏は「新法への準拠によって、サイバーセキュリティ、プライバシー、ユーザーの安全性などが損なわれないようにする」と述べ、ユーザーの安全を守るための機能が維持されることの重要性を説いた。例えば、セキュリティリスクからユーザーを保護するために必要な措置であれば、たとえ競争促進の観点からは制限的であっても、規制の例外として認められる余地がある。この点が、画一的な規制となりがちな欧州のルールとは異なり、日本独自の柔軟で現実的なアプローチであると好意的に受け止めているのだ。

 Googleは、この「正当な理由」の解釈を含め、新法の運用が日本のモバイルOEMやアプリ開発者、そして消費者にメリットをもたらす「オープンなAndroidエコシステム」の成長と矛盾しないと確信している様子だ。

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Googleは欧州の「デジタル市場法」(DMA)の理念に理解を示しつつも、現行の運用が逆効果であると主張する。特に、検索で仲介サイトを優先する措置が中小企業の収益やユーザーの利便性を損ない、Androidへの介入がセキュリティリスクを高めると懸念する(出典:デジタル市場法に関するGoogleのブログ「The Digital Markets Act: time for a reset」

Android 15以降で「チョイススクリーン」を義務化 公平性を担保するランダム表示の仕組み

 新法への準拠に伴う、消費者にとって最も視覚的に分かりやすい変更点が「選択画面(チョイススクリーン)」の導入だ。これまでも「Android」や「Chrome」ではデフォルトの検索エンジンやブラウザを変更することは可能だったが、新法の要件に基づき、ユーザーが能動的にサービスを選択する機会が強制的に設けられることになった。

 具体的には、Android 15以降を搭載した全てのAndroidデバイスにおいて、デバイスのセットアップ時などに、検索エンジンとブラウザを選択するための画面が表示される。この画面には5つの選択肢が表示され、公平性を期すためにその順序はランダムとなる。特定のサービスが事前に選択されていることはない。

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Googleは新法の施行に伴い、Android端末での新たな対応を案内している。2025年12月以降、Android 15以上の端末でシステムアップデートを行うと、デフォルトのブラウザや検索サービスを選択する画面が順次表示されるようになる。これにより、ユーザーは好みのサービスを能動的に選ぶことが可能だ。具体的な画面遷移や設定手順については、別掲の解説記事で確認できる(出典:「Android で、デフォルトのブラウザと検索サービスを選ぶ方法!」

 表示されるサービスプロバイダーの選定基準について、キュー氏は、「日本語サポートの有無や無料アプリの提供、最新バージョンのAndroidへの対応などを要件とし、インストールデータに基づいて上位5社を選定している」と説明した。また、プロバイダーは自社名の下にマーケティング説明文を表示し、独自機能をアピールすることも可能となっている。

 この施策は12月2日から段階的に展開している。過去に同様の仕組みを導入した他国の事例や知見を生かし、ユーザーが混乱することなく、公正かつ利便性の高い形で選択を行えるよう設計されている。

 この施策の効果測定について問われたキュー氏は、「ユーザーが意味ある選択をしているかどうかが重要」と回答した。単にデフォルト設定が変更されたかどうかを見るのではなく、ユーザーが提供された情報を元に、中立的・客観的な環境下で「意味のある選択」を行えたかどうかが、公正取引委員会による評価の焦点になるとの認識を示した。

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