スマホ新法は「オープンなAndroidエコシステム」と矛盾しない Googleが高く評価する理由(2/2 ページ)
12月18日施行のスマホソフトウェア競争促進法は、特定ソフト分野での競争促進とサービス向上を狙う。初期設定時などにブラウザや検索エンジンを利用者が自ら選べる「チョイススクリーン」の導入を開始した。Googleは新法準拠に向けた取り組みを説明し、公取委との協議をへたAndroidの運用方針を示した。
ゲームアプリにも「ユーザー選択型決済」を全面解禁
アプリストアである「Google Play」における決済システムについても、開発者の柔軟性を高める大きな変更が行われる。その核となるのが「ユーザー選択型決済」(UCB)プログラムの拡大だ。
UCBは、アプリ内でのデジタルコンテンツ購入時に、Google Playの課金システムに加え、開発者が独自の課金システムを選択肢としてユーザーに提示できる仕組みだ。日本では2022年からゲーム以外のアプリを対象に先行して導入されていたが、今回の新法施行に合わせ、12月18日からはゲームアプリを含む全てのアプリが対象となる。
ユーザー選択型決済(UCB)は、Googleの決済に加え、独自の課金手段を併記できる仕組みだ。国内ではゲーム以外で先行導入されていたが、新法施行に伴い、12月18日からはゲームを含む全アプリが対象となる(出典:Google Playでのユーザー選択型決済について
ユーザーはゲーム内アイテムやサブスクリプションを購入する際、Googleのシステムで決済するか、開発者が用意した別の決済手段を利用するかを選べるようになる。さらに、アプリ内から外部のWebサイトへ誘導し、そこでコンテンツを購入させることを可能にする新たな「リンクアウトプログラム」も開始される予定だ。
開放に伴うセキュリティリスクへの懸念と対策――iOSのシェア変動も「好機」と捉える余裕
新法の適用範囲と、それに伴うセキュリティへの懸念についても言及があった。今回の規制はスマートフォンのみを対象としており、スマートテレビやプロジェクターといったその他のデバイスは対象外となるため、これらの機器については現行の運用が継続される。
外部アプリストアの利用やサイドローディング(正規ストア以外からのアプリ導入)が促進されることによるセキュリティリスクについて、デイ氏はリスクが高まる可能性を認めつつも、前述の「正当な理由」条項により対策が可能であるとした。「Androidでは、セキュリティに関しては多層のアプローチをとっており、それによってユーザーをリスクから守っている」と述べ、オープンなエコシステムを維持しながらも、ユーザー保護を最優先する姿勢を崩さないことを強調した。
また、競合のiOSでも同様にブラウザ選択の自由度が高まることによるGoogleへの影響について問われると、Google側はこれを好機と捉えている様子を見せた。iOSデバイスにおいてChromeブラウザやGoogle検索が選ばれる環境が整ったことは、Googleにとってビジネスチャンスの拡大を意味する。相互運用性の向上は、Androidがこれまで推進してきたオープンなモデルと親和性が高く、自社サービスの利用拡大につながる可能性があるためだ。
デイ氏は、新法施行後も「作業は終わるわけではない」としている。Googleは12月18日以降、新法から目をそらすわけではなく、施行はあくまでスタート地点であり、今後も公正取引委員会との対話を継続し、運用の詳細を詰めていくようだ。Googleが新しい規制へのコンプライアンスを順守しつつ、技術革新やユーザー体験の向上、そしてプラットフォームとしての安全性を高次元で両立させていくという、極めて難しいかじ取りを続けていくことの表れともみてとれる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「スマホ新法」でAppleとGoogleの寡占はなくなる? メリットと問題点を整理する
「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(通称:スマホ新法)が、2025年12月18日に全面施行されます。スマートフォンのOSやアプリストア、ブラウザ、検索エンジンなどで寡占が進む中、公正な競争環境を整えることを目的にした新しい法律です。ただしセキュリティやサポート体制で課題も指摘されています。
「iOS 26.2」配信 デフォルトブラウザの選択を周知、アプリストアやマップも変更可能に
AppleがiPhone向け最新OS「iOS 26.2」の配信を開始した。アップデート後にブラウザアプリを起動すると、初期に設定するブラウザ(デフォルトブラウザ)を選択するよう促される。12月18日から施行される「スマホ新法」に基づく変更点と思われる。
ドコモ、“スマホ新法”の詳細は「公取委に問い合わせて」 施行前に自社サイトで案内
NTTドコモは12月15日、同月18日に施行される「スマートフォンソフトウェア競争促進法(いわゆるスマホ新法)」に合わせ、同社が販売するスマートフォンにおいて、利用者が使用するブラウザや検索サービスを自ら選択するための画面、「チョイススクリーン」の表示を開始すると案内した。
「スマホ新法」施行前にKDDIが“重要案内” 「Webブラウザ」と「検索」選択の具体手順を公開
2024年6月成立の「スマホ特定ソフト競争促進法」は、2025年12月18日の施行を控え、通信サービス利用者への周知が始まった。KDDIは12月2日、auブランドなどの利用者に対しブラウザや検索エンジンの選択が必須になると案内を出した。従来は初期設定のまま使えたが、新法施行後は利用者が自らサービスを明確に選択する操作が必要となる。
Apple幹部がEUのデジタル市場法に「公平な競争ではない」と猛反発 “過激な解釈”で日本の「スマホ新法」に影響も?
欧州連合(EU)で施行されたデジタル市場法(DMA)により、欧州でAppleが提供する機能の一部を使用できなくなっている。AppleにはOSや課金システムの開放、相互運用性の確保を求めている。この状況に、ジョズの愛称で知られるAppleのワールドワイドマーケティング担当上級副社長 グレッグ・ジョズウィアック氏が不満を爆発させた。