iOSが「スマホ新法」に対応、アプリストアや決済手段を選べるように App Storeの手数料も改定
Appleが、12月18日に施行されたスマートフォンソフトウェア競争促進法に関連した変更点を発表した。開発者はApp Store以外の代替アプリストアでのアプリ配信や、Apple以外の決済処理などが可能になる。App Storeでの手数料も変更し、Appleを経由しない決済手数料も発表した。
Appleが、12月18日に施行されたスマートフォンソフトウェア競争促進法(スマホ新法)に関連した変更点を発表した。
スマホ新法は、OSやアプリストア、ブラウザ、検索エンジンなどで寡占が進まないよう、公正な競争環境を整えるための法律。スマホ新法に対応した「iOS 26.2」が既に配信されており、ブラウザの変更画面(チョイススクリーン)が表示されたり、設定からアプリストアを変更したりできる。
開発者はApp Store以外の代替アプリストアでのアプリ配信や、Apple以外の決済処理などが可能になる。
代替アプリストアでのアプリは限定的ながらAppleがチェック
ユーザーはWebサイトから代替アプリストアをインストールできるようになる。代替アプリストアはAppleによって認証され、継続的な要件を満たす必要がある。ただし、代替アプリストアで配信されるアプリについてはAppleの検証は不要になり、App Storeでは許可されない有害なアプリが配信される恐れがある。
そこで、Appleは「公証」と呼ぶ基本審査を全てのアプリに対して実施する。公証プロセスは自動チェックと人の手による審査を組み合わせたもので、基本機能の確認や、セキュリティ上の脅威がないかの確認を行う。ただし、公証はApp Storeのアプリに適用されるApp Reviewよりも限定的だとする。
アプリ内やWebサイト上での決済が可能に ただしAppleによる返金は不可
Appleは、App Storeで配信するアプリに決済方法を追加できるツールを提供し、開発者はアプリ内やWebサイト上に代替決済手段を設定できるようになる。代替決済手段はAppleのアプリ内購入とは別で表示されるため、ユーザーはAppleを経由した決済手段かどうかを認識できるようにする。
注意点として、代替決済手段で取引されたものについて、Appleは返金できない。詐欺や不正などによって被害を受けた場合、Appleによるサポートは限定的となる。また、ユーザーは支払い情報をApple以外のプロバイダーに共有することで、新たなプライバシーやセキュリティ上のリスクを招く恐れがある。
App Storeでの手数料を改定 代替アプリストアは5%を徴収
アプリストアの変更に伴い、AppleはApp Storeでの手数料を改定する。App Storeでアプリを配信する場合、中小規模の開発者や2年目以降のサブスクリプションの場合は10%、それ以外のデジタル商品やサービスの決済取引の21%を徴収する。10%には、App Storeでの前年の収益が100万ドル以内の開発者が該当する「App Store Small Business Program」も含まれる。
Appleのアプリ内購入による決済処理を利用する場合、上記の手数料に加えて5%の決済手数料を支払う必要がある。つまり決済も含めたApp Storeでの手数料は15〜26%になる。
アプリにリンクされたWebサイトから決済をする場合、ストアサービス手数料として15%を徴収し、Small Business Programやサブスクリプションなどの加入者は2年目以降10%に減額する。
App Store以外で配信したアプリについては、コアテクノロジー手数料として、売り上げの5%を徴収する。
これまでのApp Storeにおける手数料は15%または30%だったので、今回の改定で現在と同額または減額になる。
若年層の被害を減らすための取り組みも
Appleは規制当局と連携し、若年層のユーザーが安心してアプリを利用するための仕組みも整えている。
App Storeの「子ども向け」カテゴリーのアプリには、不正行為のリスクを低減するため、決済取引を実行するためのリンクを含めない。18歳未満のユーザーがApp Store以外で決済する場合、保護者の関与を必要とするペアレンタルゲートを含める必要がある。13未満のユーザーについては、App Storeのアプリから決済取引を実行するためのリンクを使用できなくする。
Appleは代替決済手段を利用する開発者に対し、Appleのアプリ内購入以外で購入を保護者が監視、承認できるようにするAPIを提供している。
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