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「威嚇するような態度をとられた」──“撮り鉄”の迷惑行為に苦言続々 JR東日本も警鐘

JR東日本は12月15日、ホーム上での危険な録音・撮影行為を防止し、利用者の安全を確保する施策を発表した。 周囲への迷惑行為に加え、線路転落や感電、列車との接触といった命に関わる事故のリスクが深刻化している。 運行遅延を招くこうした事態を重く見、JRは新たな注意喚起を開始して、安全な駅利用環境の維持を目指す。


東日本旅客鉄道(JR東日本)本社ビル

 JR東日本は12月15日、駅のホーム上で発生している極めて危険な録音および撮影行為を防止するため、新たな注意喚起の取り組みを開始すると発表した。

駅ホームの安全を守るための新施策と背景

 今回のキャンペーンにおいて、JR東日本が最も重要視しているのは、全ての利用者が安全かつ安心に駅を利用できる環境の維持である。昨今の駅ホームでは、録音や撮影を目的とした行為が原因で、周囲の一般利用者へ多大な迷惑をかける事例が後を絶たない。とりわけ深刻なのは安全上のリスクであり、撮影に没頭するあまり線路内へ転落する恐れや、架線による感電、さらには走行中の列車との接触といった、命に関わる事態が現実味を帯びている点だ。こうした状況は列車の遅延を招き、広範囲の運行に悪影響を及ぼす。

 具体的な実施内容として、2025年12月16日から管内の主要駅でポスターの掲出やデジタルサイネージでの放映が順次開始されている。また、2026年1月19日には公式YouTubeチャンネルなどで詳細な動画が公開され、翌1月20日からは車内のトレインチャンネルでも放映が予定されている。これらの広報活動を通じて、JR東日本は危険行為の自制を強く求めている。

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JR東日本は12月、駅ホームでの危険行為防止に向け、注意喚起ポスターや動画を駅構内等で公開した

近年、録音や撮影に伴う迷惑行為が増加しており、周囲への迷惑に加え、線路への接近や接触といった事故、列車運行への影響も懸念されている。全ての利用者が安全・安心に駅を利用できるよう、同社は危険な行為を控え、周囲の安全に配慮した行動をとるよう強く呼びかけている

多くの意見が飛び交う 「自分たちの趣味が制限される」という声も

 この発表を受け、SNS上には多くの意見が投稿されている。特に注目されているのが、スピーカーにマイクを近づけて録音する「密着録音」に関する議論だ。ネット上では「一部の迷惑な鉄道ファンの行為により、鉄道会社に多大な負担を強いている現状に強い憤りを感じます。現場に迷惑をかけないように楽しんでいただきたいものです」といった声が上がっている。長尺録りはこうした密着録音を目的とした行為を指している場合が多く、他の乗客にとって威圧感や不快感を与える温床となっている。

 また、現場での具体的なトラブルについても報告されており、「地方の駅にて、自撮り棒を伸ばして走り回る方に対し、長い棒にマイクを付けて録音する行為はおやめくださいという肉声の自動放送が流れていました。このような事態をあらかじめ想定し、駅員の操作で流せるよう準備されていたようです。JR東日本の対応は非常に徹底しています」という投稿も見られた。さらに、ルールを守らない一部の層に対し、「自浄作用が働かなかった結果、自分たちの趣味が制限されることになりました。自得と言わざるを得ませんが、鉄道会社の皆さまの苦労には頭が下がる思いです」と、厳しい視線を送る意見も少なくない。

現場からの悲痛な叫びも 鉄道社員にとっても苦悩

 鉄道会社の社員と思われる人からは、現場の悲痛な叫びも漏れている。「大きな問題となったにもかかわらず、平然と密着録音を行う方がいました。こちらをにらんで威嚇するような態度をとられたため、列車の遅延も考慮し、やむを得ずメロディを途中で切り上げて発車しました」という証言からは、安全運行を守るべき駅員が頭を抱えて悩む様子がうかがえる。

 一般の人からも迷惑行為に厳しい目が向けられている。「ここまで事態が悪化すると、最終的にはホーム内での撮影禁止という措置が取られかねません」や「公共交通機関であっても、利用や立ち入りを禁止することが不可能なわけではありません。一企業として、他のお客さまの安全を確保するために、より厳しい対応を望みます」と、多くの人がより強力な規制を支持する構えを見せているようだ。


鉄道会社の社員と思われる人からは、現場の悲痛な叫びが漏れている。トラブル発生後も平然と密着録音を続け、駅員をにらんで威嚇するような態度をとる利用者の存在も報告されている。列車の遅延を回避するため、やむを得ずメロディを途中で切り上げる対応を迫られるなど、安全運行を担う駅員の苦悩は深い。現場の人と思われる意見もネット上にあがっているが、過度な録音が運行に支障が出てしまう現状は極めて深刻だ

 JR東日本が今回実施した注意喚起は、あくまで良識ある行動を呼びかけるものであるが、その背後には限界に近い現場の疲弊がある。企業側が特定の行為を「鳥」としてキャラクター化し、視覚的に訴えかける背景には、言葉だけの警告では届かない層へ対する最後の警鐘という意味合いも含まれているのだろう。趣味を楽しむ権利は尊重されるべきだが、それが他者の安全や社会的なインフラを損なうものであってはならない。今後は利用者の側が、鉄道会社の示すルールをどこまで順守できるかが問われている。

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