なぜドコモは「値上げ」に踏み切れないのか? 背景にある通信品質、5G設備投資の遅れが足かせに:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ドコモは2025年度決算で減益を記録したが、新料金プランの浸透によりARPUは回復の兆しを見せている。ネットワークは5G基地局の増設や3G停波による周波数転用で改善を図るも、依然として他社との差は大きい。通信品質が足かせとなり、競合他社のような既存プランの値上げに踏み切れない苦境が浮き彫りとなっている。
NTTが5月8日、2025年度決算を発表し、ドコモの苦境が明らかになった。特に業績が落ち込んでいるのが、同社の土台となるモバイル通信。2025年に導入した新料金プラン「ドコモMAX」の拡大などで、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)は回復傾向にある一方、コストがかさんで営業利益は減少した。その根底にあるのが、2023年ごろから続くネットワークの品質低下問題だ。
一方で、3月31日の3G停波に伴い、品質改善の“武器”が増えたのも事実だ。4月27日には、3Gで停波した2GHz帯を使って米SpaceXのダイレクト通信サービス「docomo Starlink Direct」を開始。800MHz帯の4Gにも5MHz幅を追加しており、都市部の奥まったエリアなどでの品質改善につなげる構えだ。ただ、他社のようにネットワーク維持を理由にした既存プランの値上げには踏み込めていない。その背景を解説する。
課題だったネットワーク品質にも改善の兆し? 基地局新設や周波数転用を加速
「課題であったネットワークと顧客基盤に改善の手応えを感じている」――ドコモの代表取締役社長 前田義晃氏は、5月8日に開催された決算説明会でこのように語った。同氏が社長に就任したのは、2024年のこと。そこから約2年、ドコモの土台ともいえるユーザー獲得やネットワーク改善に精力的に取り組んできた。その成果は、300万契約を超えた大容量プランの「ドコモMAX」や、ARPUの反転などに現れつつある。
ネットワーク品質の低下は、コロナ禍が明けた2023年ごろから顕在化してきた課題だ。街中に人が戻った結果、ドコモの予想を大きく上回るトラフィックが発生。Sub6の5G整備が追い付いていなかったこともあり、都市部などの混雑したエリアを中心に“パケ詰まり”が発生した。当初は基地局のチューニングなどの対症療法で改善を図ったドコモだが、前田氏が社長就任以降、基地局への投資を根本的に見直し、容量拡大に注力している。
その成果として、ドコモは2025年度に約6800局の基地局を新設。「26年度についても、25年度下期に実現した高い構築ペースをさらに継続して、強固な通信インフラ基盤を築いていく」という。また、700MHz帯を中心に4Gから5Gへの転用も加速させ、“点”ではなく、“面”での5Gエリアを拡大し、安定化も図っている。
基地局の新設と周波数転用を進めた成果として、2025年度の5G基地局数は5万2300に達している。さらに、電波の届きやすい4Gのプラチナバンドの帯域幅を、10MHzから15MHz幅(上り下りの合計で20MHzから30MHz幅)に拡大している。これは、2025年度末に3Gを停波し、周波数に空きが出たためだ。都市部などでは屋内のパケ詰まり改善に効果を発揮するという。
鉄道動線に沿った体感品質の改善も進めており、動線全区間の最も混雑する時間帯にHD動画のストリーミングが可能な品質を維持できている路線は、28にまで拡大した。ドコモのネットワーク品質低下を訴える声が出始めていた2023年度は18路線だったため、そこから10路線改善している。また、全路線の平均スループットも、25年度は51%向上した。
5Gのみで通信を行う、5G SAのエリアも拡大している。決算説明会では、首都圏のエリアマップを公開。もともと住所をリスト化しているだけだったが、徐々に面展開が進んでいることがうかがえる。前田氏によると、「重要なのは人口集中地域での対応。首都圏や大阪府、愛知県あたりから、まずしっかり進めていく」という。今年(2026年)度はさらにエリアを拡大し、「他社になるべく追い付きたい」(同)方針だ。
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