なぜドコモは「値上げ」に踏み切れないのか? 背景にある通信品質、5G設備投資の遅れが足かせに:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ドコモは2025年度決算で減益を記録したが、新料金プランの浸透によりARPUは回復の兆しを見せている。ネットワークは5G基地局の増設や3G停波による周波数転用で改善を図るも、依然として他社との差は大きい。通信品質が足かせとなり、競合他社のような既存プランの値上げに踏み切れない苦境が浮き彫りとなっている。
他社より少ない5G基地局、SAエリアの拡大も課題に
一方で、品質改善はあくまで2023年度やドコモ内での比較になる。5万を超えたという5Gの基地局数も、依然として他社より少ない。総務省が1月に公開した「令和7年度携帯電話及び全国BWA等に係る電波の利用状況調査」によると、KDDIは2025年3月時点で約11万、ソフトバンクも10万を超えており、ドコモとは2倍近い差が開いている。
また、5G SAも、KDDIは人口カバー率90%超を掲げており、既に面展開が進んでいる。数値目標は掲げていないものの、ソフトバンクも2025年から5G SAのエリアを急速に広げており、「VoNR」や「5G RedCap」といった5G SAならではのサービスも導入した。実際、上記の総務省調査では、KDDIが約4万、ソフトバンクが約10万の5G SA基地局を導入しているのに対し、ドコモは約1万4000と数が少ない。
こうした各種指標からは、ドコモが一時の最悪な状況は脱していることがうかがえるものの、他社にキャッチアップできていない現状も見えてくる。
第三者機関の調査も、それを裏付ける。英調査会社Opensignalが4月に発表した日本の通信体感分析では、auが全18部門中11部門で1位を獲得し、国内最多となったが、ドコモはエリアの広さを示すカバレッジを中心に4部門の受賞にとどまっている。総合力を示す「一貫した品質」では楽天モバイルに負けて最下位となり、上位2社のauやソフトバンクに大きく水をあけられている状況だ。
実際、2023年ごろと比べれば数は減ったものの、「ドコモが遅い」「つながらない」といったネガティブな声は収束していない。4月下旬には「ahamoが遅い」という批判がX(旧Twitter)を中心に広がり、物議を醸した。
加入者獲得にコストをかけていることもあり、MNPではプラスになっているが、ネットワークはキャリアにとって競争力の源泉。通信品質が悪いと、料金の安い小容量プランで獲得したユーザーが定着せず、ahamoやドコモMAXなどの中大容量プランに移行させていくアップセルも難しくなる。結果として、より獲得コストをかけなければ他社に対抗できない悪循環に陥ってしまう。
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