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なぜドコモは「値上げ」に踏み切れないのか? 背景にある通信品質、5G設備投資の遅れが足かせに石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

ドコモは2025年度決算で減益を記録したが、新料金プランの浸透によりARPUは回復の兆しを見せている。ネットワークは5G基地局の増設や3G停波による周波数転用で改善を図るも、依然として他社との差は大きい。通信品質が足かせとなり、競合他社のような既存プランの値上げに踏み切れない苦境が浮き彫りとなっている。

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値上げに踏み切れないドコモ、背景にあるのはネットワーク品質か

 ドコモが既存プランの値上げに踏み切れないのも、こうした事情が影響している可能性がありそうだ。KDDIは、2025年にauやUQ mobileの料金プランを値上げしており、2026年にソフトバンクが続いた。新規申し込みを終了した既存ユーザーの値上げには各社とも慎重になっているが、KDDIやソフトバンクは物価高やトラフィックの増加が続く中、ネットワーク品質を維持する名目でこれに踏み切った。

 対するドコモは、2025年にドコモMAXなどの新料金プランを導入し、低容量プランのirumoを新規終了して「ドコモmini」にリニューアルするなど、新規ユーザー向けの値上げは実施したものの、既存のユーザーの料金は据え置きになっている。irumoやそれ以前の「ギガライト」などを使い続ければ、低料金のままドコモ回線を維持できてしまう。過去の料金プランを契約するユーザーから、いかに設備投資などの対価を回収するかは課題といえる。

ドコモ
25年に導入したドコモMAXは、300万契約を突破した。一方で、過去の料金プランは料金据え置きのままだ

 前田氏によると、現状、有効になっている料金プランは25種類にも及ぶといい、「運用の負荷も相当高まっている」。ただ、ネットワーク品質の改善が終わる前に値上げすると、ユーザーからの反発が大きくなる恐れもある。KDDIやソフトバンクの値上げが大きな批判なく受け入れられたのは、その前提として快適に利用するための設備投資を行ってきたからだ。

 また、過去の料金プランに対して、無料の海外ローミングを付けたり、Starlinkとスマホのダイレクト通信に対応させたりと、値上げを納得させるサービスの追加にも余念がない。ドコモも4月27日に「docomo Starlink Direct」を開始し、他社との差別化として「全料金プラン、2300万台でご利用いただける」ようサービスを拡充したものの、圧倒的に利用頻度の高い地上のネットワーク品質が足を引っ張っている状況といえる。

ドコモ
4月には、docomo Starlink Directを導入した。他社はダイレクト通信開始とほぼ同時期に値上げを発表している

 前田氏は、「特に何か要因があって今(値上げ)できないと言っているわけではない」というが、ユーザー獲得を強化する方針を掲げる中、ネットワーク品質と料金のバランスを検討しているのは間違いないだろう。ドコモも「さまざまなコストが上がっているのは事実で、全体としてどのように価格改定をしていくかは考えていかなければいけない。(値上げの)否定はできない状況だと思っている」(同)といい、いつ値上げに踏み切るかは「検討中」とした。

ドコモ
ネットワーク品質は、さまざまなサービスの土台になる。この基礎が弱いことが、今のドコモの課題といえる

 ただ、ネットワーク品質は目に見えるものではないだけに、改善結果がすぐに伝わらないおそれもある。前田氏も、認知の広がりには「遅効性がある」と認め、「プロアクティブ(先回りして)にここがよくなっているというコミュニケーションを積極的に取っていく必要がある」と話す。ユーザーに値上げを受け入れてもらうには、ネットワーク改善と並行して、きめ細かな宣伝活動にも注力していく必要がありそうだ。

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