NHK会長が「テレビ離れ」に言及 幅広い世代へ“NHK番組を届ける”考え
NHK(日本放送協会)は定例記者会見で全世代的なテレビ離れへの見解を示した。「2025年 国民生活時間調査」で20代以下の約7割がほぼテレビを見ない実態や、全年代での視聴減少が浮き彫りになった。井上樹彦会長は事実を認めつつ、新インターネットサービス「NHK ONE」などの多様な経路で発信を強化する方針だ。
NHK(日本放送協会)は6月17日に定例記者会見を開催。井上樹彦会長は、若年層をはじめとする全世代で進行している「テレビ離れ」の現状と、今後のデジタル展開について見解を述べた。会見の前日、NHK放送文化研究所が「2025年 国民生活時間調査」の最新結果を発表した。
同調査は、日本人の生活行動とその変化を時間という尺度で客観的に捉えることを目的として、1960年から5年ごとに実施されている非常に歴史のある調査だ。14回目となる今回は、全国の10歳以上の7200人を対象に郵送法で実施し、連続する2日間の生活行動を15分刻みで記入してもらう手法だった。日本人の生活実態を明らかにする基本データとして、各方面で幅広く活用されている重要な指標だ。
調査の結果、平日にリアルタイムでテレビを見る人の割合を示す「行為者率」が、かつてない規模で落ち込んでいることが分かった。国民全体のテレビ行為者率は、2015年の85%、2020年の79%から、2025年には71%にまで低下した。特に若年層の下落幅は著しく、16~19歳では前回の47%から27%へ、20代では51%から33%へと急落し、20代以下の世代では「約7割がテレビを見ない」という実態が明確になった。さらに30代でも63%から43%へ、40代でも68%から55%へと大幅に減少している。
注目すべきは、現在の調査方式となった1995年以降で初めて、全ての年代でテレビ視聴が減少した点だ。これまで高い視聴率を維持してきた60代でも94%から84%へ、70歳以上でも95%から92%へと減少に転じるなど、テレビ離れが高齢層を含む社会全体に波及していることが分かった。
調査結果について問われた井上氏は、「この調査は60年以上継続的に調査してきた歴史があり、意義があるものと考えている」とデータの重要性を認めた。そのうえで、「ご指摘のあったテレビ離れについては、NHKがこれまで行った調査でも、若年層を中心に減少傾向が見られていたが、今回は若年層だけでなく、高齢層でもその傾向が見られたものと受け止めている」とし、全世代においてテレビ離れが深刻に進行しているという事実を真正面から受け止める姿勢を見せた。
しかし井上氏は、この調査結果が直ちに「NHKのコンテンツ自体が見られなくなっていること」を意味するわけではないと反論し、「この調査におけるテレビは放送波をリアルタイムで視聴したものなので、『NHK ONE』や『TVer』といった配信サービスは含まれていない。今、NHK ONEなどの視聴についてはインターネット動画の方に含まれて計算されていると承知している」と指摘した。
実際に調査データを見ても、1日のうちにテレビを全く見ない(あるいは15分未満しか見ない)人が増えている一方で、1日にインターネット動画を見た人の割合は国民全体で前回の20%から29%へと明確に増加している。動画の利用は10代や20代(58%)などの若年層にとどまらず、60代でも10%から26%へと伸びており、「高齢層でも4人に1人がネット動画を視聴する」という変化が起きた。井上氏の指摘通り、視聴者がテレビというデバイスでのリアルタイム視聴から離れただけで、ネットを通じたオンデマンド視聴などのインターネット動画枠へと視聴形態が移行している実態がデータからも裏付けられている。
こうしたメディア環境の劇的な変化を踏まえ、今後の対策として井上氏は「公共メディアとしては、とにかく幅広い年齢層の方にNHKのコンテンツに触れてもらうため、放送波に加えてNHK ONEなど多様な経路で発信を続けていく」考えを明らかにした。NHKは2025年10月より、新しいインターネットサービス、NHK ONEをスタートさせており、番組の同時配信や見逃し配信、ニュース記事や動画などを1つのWebサイトやアプリに集約し、スマートフォンやPC、ネット対応テレビなど多様なデバイスへ届けている。
今後は従来の放送波にとらわれずに、デジタル分野でのプラットフォーム展開を強力に推し進めることで、視聴形態の変化に合わせて若年層を含む多様な視聴者へ良質なコンテンツを届けていくという決意を強調した。
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