NHKはなぜ「スクランブル化」しないのか? 「公共放送」という位置付けが足かせ?:Mobile Weekly Top10
NHKの受信料制度を巡ってよく出てくる「スクランブル化」の議論ですが、「公共放送」という位置付けを考えると、若干無理筋ではないかという意見もあります。
ITmedia Mobile Weekly Access Top10
2026年6月18日~6月24日ITmedia Mobileにおける1週間の記事アクセス数を集計し、上位10記事を紹介する「ITmedia Mobile Weekly Top10」。今回は2026年6月18日から6月24日までの7日間について集計し、まとめました。
今回のアクセス数の1位は、NTTドコモの「d払い特典」の還元上限変更に関する記事でした。最初にある程度の“大盤振る舞い”をすると、それを是正するときにどうしてもハレーションが発生してしまうんですよね……。
2位は、NHK(日本放送協会)のTV放送について、よく話題になる「スクランブル化」に関する記事でした。
スクランブル(Scramble)は「ごちゃ混ぜ」という意味の英単語で、IT/通信用語としては「信号を乱雑にする処理」を指します。信号を乱雑にすることで、正当な受信者以外は信号を傍受できないようになるのです。一方で、正統な受信者は、スクランブル化された信号を元に戻すための「デコーダー(復号器)」を用意する必要があります。
放送におけるスクランブル化というと、今は亡きBSアナログ放送における「WOWOW」「St.GIGA(セントギガ)」が思い出されます。これらのチャンネルは有料放送という位置付けで、放送波はスクランブル化されていて、受信するにはBSアナログチューナーに加えて、それぞれのチャンネルの契約者に貸与されるデコーダーを接続する必要がありました。
実は、現行の各種デジタルTV放送用に貸し出されている「B-CASカード」(※1)は、実はデジタル方式のスクランブル放送に対応するために開発されたもので、実際にBS/CSデジタル放送の有料チャンネルでは、B-CASカードを使った受信制御(契約管理)を行っています。ただ、現状では無料放送も含めてB-CASカードのDRM(デジタル著作権管理)機能を利用しています。
(※1)4K/8K放送に対応するチューナーについては、チューナーに組み込む形の「ACAS」を代わりに使っている
ということは、技術的には現時点でも「NHKのスクランブル化」はできるのですが、NHKは放送法において特別に定められた「公共放送」であるということを考慮に入れないといけません。
公共放送は公共企業体または公的機関が行う放送を指します。基本的に「民間放送」の対極にあるものですが、国家(国の政府)が直接運営を行う「国営放送」とも位置付けが異なります。
NHKの国内放送にかかる経費は、TV放送に対する「受信料」で賄われています(ラジオ放送の聴取は無料とされています)。放送法の規定では、日本国内でTVを受信できる機器を持っている場合、NHKとTV放送に関する受信契約を結ぶ必要があります。「TVを持っているけどNHKを見ないから受信契約したくない」ということは“違法”です。
実はこの受信料制度について、NHKが受信料を支払いを求めて起こした民事裁判において、放送法の規定が憲法違反かどうか争われたことがあるのですが、最高裁判所の大法廷において“合憲”との判断が下されました(参考リンク)。
公共放送は「見たい人が見る」放送ではなく、「誰でも見られる」放送であることを考えると、スクランブル化は似つかわしくないという点もあります。「緊急時だけスクランブルを解除すればいい」という考え方もありますが、NHKが「公共の福祉のために」存在していることを考えると、「スクランブル化で見たい人だけ見られる状況が、果たして『公共の福祉』といえるのか?」という議論を真剣に考えないといけないはずです。
実は、NHKのスクランブル化と似た議論は、イギリスの公共放送「BBC(英国放送協会)」でも起こっています。イギリスではTVを持っている(使っている)世帯の代表者がが年に1回「受信許可料」を支払う仕組みとなっていて、支払いを拒否した場合は罰則もあります(ただし、強制徴収の仕組みはない)。この受信許可料が、BBCの主力財源となります。
ただ、日本と同様にTVを見ない(持たない)人が増えた影響で、受信許可料収入は減少傾向にあり、BBCは業務の再構築(リストラ)をせざるを得ない状況になっています。そのためイギリス政府も受信許可料制度自体の見直しに加えて、「BBCの国内放送やネット配信(BBC iPlayer)に対して何らかの形で広告を入れること」「プレミアムコンテンツ(≒娯楽要素の強い番組)の視聴について別途視聴料を取ることの是非」などを検討しているようです。
社会背景は異なるものの、洋の東西を問わず「公共放送」の在り方は大きな課題といえそうです。
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