富士通初にして,高い完成度──ユーザー本位に立ったF503iS

高スペックなパーツを利用しながら,カタログスペックではなく実用性を重視。作りこまれた折りたたみ型には“安易に折りたたみにしたのではない”という決意が感じられる。富士通担当者に話を聞いた。

【国内記事】 2001年8月17日更新

 「iモードが出た当初から研究していた」。富士通初となる折りたたみ型端末「F503iS」は“他社が出しているから,うちも……”というような安易な姿勢で作られたものではない。富士通パーソナル販売推進統括部モバイルフォン販売推進部の坂本秀幸氏は,新しい折りたたみ型の端末に自信を示す。

Photo

50x系は折りたたみ型へ

 富士通初となる折りたたみ型端末「F503iS」が8月14日,NTTドコモの新機種として発売された(8月8日の記事参照)。しばらく前はフリップタイプの機種も製造していたとはいえ,このところずっとストレートタイプにこだわってきた富士通。折りたたみ型に移行する理由は何だったのだろうか?

 「大画面化への要求は,そろそろストレートでは限界だった」と坂本氏は言う。つい2年前までは,“薄くて軽い,最小最軽量”を目指して小型化,軽量化に取り組んでいた各端末製造メーカーだが,iモードが出てから大画面化への要求が強くなった。しかしストレートタイプではこれ以上の大画面化は無理。そうした判断が折りたたみ型採用の理由だ。

折りたたみに込めた細かなこだわり

 初めて作る折りたたみ型といっても,そこに込められたこだわりは多い。たとえば,折りたたみ型で常に問題になるヒンジ部の強度は特に気にしたところ。

 「ヒンジ部は2重になっている」。他社の折りたたみ型に比べてヒンジの直径が少々大きいのを見ても分かるように,剛性感を大事にした。両手で丁寧に開けなくても,片手で反動をつけて開けても全く心配ないという(あまりお勧めはしないが)。

Photo
折りたたみ型のヒンジ部。左からF503iS,SO503i,J-フォンのJ-SH07

 「N503i」などに比べて縦が長い点も,「短くしようと思えば上下を切り詰めることもできた」という。あえて長くしたのは,「片手で持ったときに,[*]や[#]が押せるように」したためだという。なるほど,N503iなどではダイヤルボタン下部のキーをうまく押すには本体の下部を握るか親指をねじる必要があり,慣れが必要だった。F503iSでは本体が長くなった分,安定したグリップが可能だ。

 敢えて電池を「F503i」から変更した(8月14日の記事参照)のも,折りたたみへのこだわりの1つ。「数ミリを削るために電池を薄くした」という。実際,ドコモの503i,502i,210iシリーズ中,F503iSは厚さ21ミリで最薄。ストレートタイプの「P503i」でも厚さが17ミリあることを考えると,その薄さが分かる。

コダワリの反射型液晶

 F503iSのもう1つの特徴,それは液晶だ。4096色表示可能な低温ポリシリコンTFT液晶を採用し,方式は反射型。「反射型はコダワリだ」という。

 現在携帯電話に使用されている液晶には,大きく分けて以下の方式がある。

液晶名 主な採用機種
STN256色半透過型液晶 多くの210iシリーズ
TFD4096色半透過型液晶 N503iD503i
TFT6万50000色透過型液晶 SO503i
STN256色反射型液晶 F503i
TFT4096色反射型液晶 F503iS

 多くの端末が「STN256色半透過型液晶」(用語)を採用する最大の理由は安価だから。サイズも2インチ未満のものが多く,端末全体の低コスト化に貢献している。しかし性能ではほかに比べてもう一歩。半透過型とはいえ,反射率は今ひとつで,直射日光下での視認性は悪いものが多い。

 「TFD液晶」(用語)はTFTと同じくアクティブマトリクスながら低消費電力化を図ったもの。高精彩な上,多くのSTNタイプに比べて直射日光下での視認性もいい。バランスのよいタイプだ。

 「SO503i」に採用されているのが6万5000色表示可能なTFT液晶(用語)。屋内などでの発色は素晴らしいものの,直射日光下ではバックライトが日光に負けてしまい,ほとんど真っ暗になってしまう。

 最後の反射型は野外での視認性は最高。ただしフロントライトの位置のせいで,どうしても液晶が一段奥に配置されるし,発色が青白くなってしまう。またコントラストも低く発色も悪いことから,従来反射型を採用していたメーカーも新型機からSTN型に切り替えたところが少なくない。

 しかしSTNタイプは屋内での発色こそきれいだが,屋外の直射日光には弱い。この“屋外で真っ暗になってしまう”ところを,富士通は嫌った。

 「屋外で真っ暗になってしまうというのは,(どこでも利用できるという)携帯電話のコンセプトに反している」

 反射型にこだわるのは,ある意味勇気が必要なことだったに違いない。透過型TFTや半透過型STN液晶を採用すれば,屋内で見る限りは美しくメディアも高く評価するだろう。ユーザーも店頭で確認できるモックアップでは液晶の良し悪しは分からず,店内で実機をチェックしても直射日光下で視認性を確かめるには至らない。

 そんななか,敢えて目先の美しさを取らず,屋外でもしっかりと利用できる反射型を採用したところに,富士通の端末作りにかける真面目さが感じられる。

 しかも今回の反射型はTFT型で,従来の反射型にあった発色面での欠点はほぼ払拭されている。この美しさはぜひ実機で,しかも屋外で確認してほしいところだ(8月14日の記事参照)。

シェア奪取なるか?

 富士通始めての折りたたみ型ながら,高い完成度を誇るF503iS。実際,他社製製品よりも1万円近く高い店頭価格にもかかわらず,初日からF503iSはよく売れた。

 アドレス帳などの内蔵ソフトウェア面では503iシリーズを受け継いでおり,ほとんど改善が見られないのは残念だが,潤沢なメモリを積んでいることも含め,ハードウェアは超1流だ。

 「いい天気ですね。これだけ晴れるとうれしいんですよ」。ふと,坂本氏は漏らす。折りしも取材を行った日,都内は快晴。STNや透過型TFTを採用したいくつかの端末メーカーは,逆に「いま屋外で携帯を開かないでほしい……」と願ったに違いない。

 一見の良し悪しではなく,さまざまな環境でユーザーの実用性を重視する姿勢には,スペックの数値のみにこだわった最近の端末との大きな違いが感じられる。最近ヒットに恵まれていない富士通製端末だが,F503iSには“もう,1番最初に端末を出すだけのメーカーでしょとは言わせない”という強い決意が感じられる仕上がりだ。

[斎藤健二,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!