コンテクストの捉え方

 では実際,ユーザーのコンテクストを見ていくとどのような捉え方が可能になってくるのだろうか。

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 あるユーザーの1日の行動とそれに伴う感情の変化を単純化して見てみよう。自宅から出て,デパートで買物,大好きなアーティストのコンサートまでの時間を使い,街をブラブラし,コンサート会場に向かう,といったようなモデルである。

 縦軸で見る,そのユーザーのコミット度や購買意欲は,その行動に合わせて,おそらくこのような変遷をたどるだろう。1人のユーザーでも,その目的意識や場所,何に価値を見出すかによって大きくその感情は変化しており,それぞれのシチュエーションやどんな価値にコミットするかによって異なった性格のユーザーになっている。1人のユーザーでもそれは決して均質ではない。その変化するあらゆる状況に対して,常に接触のチャンスを持つことができるのがモバイルなのである。

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 では,このユーザーの感情の変遷,要はコンテクストを解釈していくとどのような分類が可能になっていくのか。

対“様子見組ユーザー”

 目的地までの移動時間,街をブラブラしている,待ち合わせをしている,などの状況にいるユーザー。彼らのコンテクストは,特にこれといった目的意識があるわけではなく,いつでも情報を探せる状態,もしくは何か興味の引かれるものがあればそれに飛びつきたいという感情を持っているということだ。ボーッとしたり,雑誌や新聞を読んだり,電車内の中刷り広告などで情報を見ていることが多い。最近ではそうした時間に携帯電話に触れているというユーザーも数多く見受けられる。

 彼らに対しては“関心の喚起”が重要である。彼らのちょっとした時間の隙間,いうなれば“ニッチタイム”に入り込めるようなコンテンツをモバイル経由で提供し,関心を引き付けることが重要になる。そしてこれまでの媒体単独ではアプローチできなかった状況を脱し,モバイルという手軽さから,ユーザーの行動を喚起し,サイトへ導いたり,店舗へ誘導したりしていくのである。

 しかし,ひとりひとりのユーザーにとってそのニッチタイムはまちまちであり,時間や場所などに特定することは難しい。よって,いかにそのシチュエーションを特定できる場所や媒体と連動し,仕掛けを持つことができるかが重要になる。

 例えば,新聞や雑誌,中刷り広告などや,待ち合わせ場所にある看板や大型スクリーンなどに広告告知し,そこからモバイルサイトへのアクセスさせるといった,ほかの媒体との連動によるマーケティングケースなどが想定される。ケイタイ・ゲット(8月31日の記事参照)のマーケティング手法などはこの典型的な事例ということができよう。

対“潜在ユーザー”

 次にある程度目的意識を持っている,またはその目的を果たすための場所にいるものの,何を買おうかとか,何をしようかなどの目的が決定されていないというコンテクストを持ったユーザーに対しての訴求。ここではモバイルを活用したユーザーに対する“ナビゲーション”が重要になってくる。

 例えば店舗内にあるキオスク端末とモバイル端末を連動させたり,ユーザーのモバイル端末に商業施設内の地図表示をしたりといった手法が想定できる。また具体的な訴求方法としては,昼時になったらその施設内のレストラン情報を流す,その店舗にいるユーザーのみ限定対象の特売商品のタイムセールスを行うなどのコンテンツが考えられる。

 このような商業施設内でのコンテクストアプローチを実験的に行ったのが,NECと森ビルの「くるくるラフォーレ」(8月10日の記事参照)。ユーザーの位置情報を把握し,そのユーザーのいる場所にマッチした情報をリアルタイムにモバイル端末に配信したものである。また新店舗のオープンキャンペーンとして,パルコがイエルネットと共同で実サービスを行った「インタび」などもその事例に数えられる(パルコのリリース)。

対“固定・顕在ユーザー”

 また,さらにコミット度の高いユーザー,つまりコンサート会場に既に足を運んでいるユーザーや,既に会員になっているユーザーへ訴求するモバイルマーケティング。彼らは,コミット度が高い,購買意欲が高いなどのコンテクストを既に有しているため,その欲求に応える“差別性”が重要になってくる。

 例えばコンサート会場。そのアーティストを見たい,コンサートを楽しみたいなど,ほかの場所では得られない気持ちの高ぶりを感じているというコンテクストがユーザーにはある。そのコンテクストを理解し,その場でしか買えないアーティストグッズの販売や,次の公演チケットの限定予約販売などをモバイル経由で行っていくのだ。それにより,コンサート会場特有のグッズ販売スペースの狭さに起因するグッズ販売機会の損失や,チケット購入のタイミングの逸脱を防いでいくのである。

 いったん,帰路についてしまえば,そのような購買意欲は薄らいでしまうのであろうが,コンサートによる自分自身の気分の高揚や会場の雰囲気,その場でしか手にできないという危機感などといったコンテクストと,すぐにアクセス可能というモバイル端末の利便性を連動させることにより,このようなマーケティングが可能になると思われる。

 会員への訴求という意味では,既に利用経験のあるユーザーに対しての携帯電話経由での割引チケット訴求などでその有効性を実証済みのツタヤオンライン(7月19日の記事参照)などもこの事例に入れることが可能であろう。1本レンタルしたいから店舗へ足を運ぶユーザーに対し,せっかく店舗へ来たんだし,2本目以降は割引なんだからといったコンテクストを理解しかつ利用して,複数本レンタルさせてしまう。会員に向けた効果的なモバイルマーケティングを行っている好事例だといえよう。

 いずれにせよ,既に購買経験のある,もしくはコミット度の高い彼らのコンテクストに対して,“アナタだけに”的な差別的なサービスを行っていくことが重要になってくる。

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「この分類以外にも……」

連載バックナンバー
▼ 第1回「到来する? モバイルバブルの崩壊」
▼ 第2回「見誤るな! モバイル時代のユーザーの捉え方」
▼ 第3回「どこへ行く? モバイルコンテンツビジネス」
▼ 第4回「成功の鍵は? モバイルマーケティングのキモ」
▼ 第5回「見極めよ! モバイルとマスの効果的マーケティング連動」
▼ 第6回「捉えよ!モバイルマーケティングの全体像と今後の方向性」



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