“17ミリ台”を死守せよ──妥協なきハイエンド携帯、開発の裏側:開発チームに聞く「911T」(5/5 ページ)
「絶対に17ミリ台をキープせよ」。開発当初から課せられた、限りなく高い目標設定──。“本気”の東芝製ハイエンド携帯「911T」はどのような苦労の末に誕生したのか。開発の裏側を開発チームに聞いた。
ユーザーの選択肢も重視、接続性も改善したBluetooth
911Tは、前モデル「910T」に続き、ワイヤレス音楽再生にも対応したBluetooth機能を搭載する。ここも、新たにワンセグなどを搭載する本機ならではの進化を遂げていた。
「前モデルの910Tは、実はA2DPにおけるコーデックとしてAACしかサポートできていませんでした。この仕様だとA2DPのミニマムスペックを満たさないために接続に問題が起こる可能性も高く、厳密にはA2DPではありません。しかし911Tは、AACに加えてSBC(Sub Band Codec:A2DPは音楽の圧縮コーデックとしてSBCのサポートを必須としている)もサポートし、A2DPのスペックをきちんと満たしました。そのため、市販されるA2DP対応のBluetoothオーディオ機器のほとんどが利用できるようになったはずです。また、SBCをサポートしたことで端末側での音質調整やサラウンド機能も利用可能になっています」(影長氏)
確かに910Tのパンフレットや同社携帯情報サイトなどにはどこにも“A2DP対応”とは記載されていない。実際、AACは多数のBluetoothオーディオ機器が対応しており、かつ手持ちのBluetoothオーディオ機器もすべて使えたので筆者も見落としていたが、正確には独自仕様扱いだったことになる。
「911Tは、すべてのA2DP対応Bluetoothオーディオ機器との接続性を保証するわけではありませんが、ワイヤレス音楽再生に関して、海外の製品や安価な製品も含めて多くの製品が使用できると思います。ちなみにワンセグの音声出力は、さらにSCMS-TをサポートするBluetooth機器が必要となりますが、すべてに対してSCMS-Tを必須にしてしまうと、使える製品が現状だと非常に限られることになります。ユーザーの利便性を考慮した結果、つながる製品はつながるなりに使えるようにしよう、というスタンスにしました」(影長氏)
ワンセグには、ARIB(電波産業会)のガイドラインが明確に規定されており、Bluetoothによるワイヤレス音声出力には著作権保護方式のための「SCMS-T」への対応が必須となる。しかし、SCMS-T対応のBluetoothオーディオ機器はまだ少なく(オプションとして用意する同社製Bluetoothレシーバーは対応済み)、実際に対応していてもスペックとして明示されていない製品も多い。そのため、BluetoothのA2DP対応に関すると911Tは、現時点でベターな対応となっているといえそうだ。
「今まで、当社からはハイエンドユーザーの心に響く端末をなかなか出せませていなかったと思うことがありました。しかし今回の911Tは違います。今まで当社の端末を使ったことがないユーザーや、ハイエンド志向のため素通りしてしまっていたユーザーにも自信を持って勧められる“ハイエンド機”に仕上がりました」(影長氏)
「ソフトバンクモバイルのユーザーだけでなく他キャリアの人にもぜひ注目してほしいです。そのくらい、自信を持って“国内最強の端末です”と言えます」(伊藤氏)
「やれることはすべてできた」と自信を持って語る彼らが非常に印象的だった。東芝の本気と底力──2007年春モデルとして登場した携帯として、キャリアの垣根を越えてもなお欲しくなる魅力を持つ、希有な端末を生み出した911T開発チームに拍手を贈りたい。
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