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ケータイを“インターネットマシン”へと進化させる──ソフトバンク 孫正義社長(3/3 ページ)

ソフトバンクの孫正義社長は11月6日、中間決算発表会で業績を開示。「ソフトバンクは“日本の携帯第3位の会社”ではない。アジアのナンバーワンインターネット企業が、携帯電話事業を始めたのだ」と力説した。

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ホワイトプランでどうして利益が出るのか

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 説明会後の質疑応答では、「ホワイトプランのような低廉な料金プランで、あまり携帯電話の利用頻度が高くないユーザーなども取り込むと、収益的に厳しくなってくるのではないか。どうして利益が出せるのか」という問いかけがあった。

 孫氏はこの質問に対し「確かにドコモやauくらいの市場シェアを持っていたら、ホワイトプランを導入できたかどうかは分からない。これはナンバーワンの企業が取る戦略ではないからだ。ホワイトプランは毒にも薬にもなりうる。未来永劫この料金プランを新規ユーザーに提供し続けることができるかというと、その点はよく検討してみないといけない」と答え、ホワイトプランが、ソフトバンクモバイルが第3位の事業者だから取れた戦略だと話した。

 ホワイトプランで利益が出せるのは、ソフトバンクモバイルのシェアが小さく、グループ外のユーザーに電話をかける割合もそれなりに高いことが1つの理由だ。30秒あたり21円という、比較的高めの通話料が発生するため、それが収入源になる。

 また、ホワイトプランは、一般的な料金体系と比較するとずいぶん割安だが、通話料が半額になるWホワイトを契約する人が、実は新規加入の6割程度に上っているという。この急激に増えているWホワイトユーザーは、月に1960円の料金を払い、一般的なホワイトプランユーザーの倍以上通話をするので、十分収益が上がる。Wホワイトユーザーは着信も多いため、他社から着信相互接続料も入る。

 さらに、Wホワイトで契約するようなユーザーにはヘビーユーザーが多く、データ通信も非常に多い。「WホワイトユーザーはARPUが著しく高い」(孫氏)というのだ。「一般的なお客様には大幅な料金の値下げと写るかもしれないが、実は顧客ミックスに占める高トラフィックなユーザーの比重が増えてきている。そこで利益が出る」(孫氏)

 新スーパーボーナスの導入により、端末代金と通信料金を明確に分けられ、格安の端末を数カ月ごとに乗り換える“赤字になるお客様”が減り、かつては3%程度あったこともある解約率が1%に改善して、経営が健全化したことも大きく収益向上に寄与している。

 ホワイトプランを発表した当初は、無料通話を活用するトランシーバーがわりに、“2台目の端末”として購入するユーザーが増え、あまり収益に貢献しないのではないかという危惧もあったようだ。実際、新規契約者のうち二十数パーセントはそうしたユーザーだという。しかし、端末を2台持つようなユーザーは、そもそも月々の携帯電話代がほかのユーザーよりも非常に高い。さらに2〜3カ月も端末を2台持ち歩くと、そのうち邪魔になってくる。1台を解約することにした場合、実はそれなりにネットワーク状態もよくなっていて、基本料金や通話料が安い、本来2台目として購入したソフトバンクの端末が、“残る方の1台”になることが多くなっていると孫氏は見ている。

 「社内では密かに“と金プログラム”と呼んでいる。実はトランシーバーがわりにソフトバンク端末を導入したユーザーは、3カ月もするとソフトバンクの携帯に対する不安が消え失せ、2台目が1台目に昇格する。こうしたユーザーは通常ユーザーよりもARPUの高いユーザーに化ける。また、こうしたお客様は周囲への影響力も大きいお客様で、周りにソフトバンクを勧めてくださることにもなる。最近はトランシーバー大いに結構、お客様にまずメリットを感じていただいて、徐々に良さをご理解いただければそれで十分、と少しおおらかな気持ちで経営をしている」(孫氏)

端末ラインアップ、そして料金体系は他社に負けない

 10月22日に発表したソフトバンクモバイルの2007年秋冬モデルのラインアップ10機種は「自信作」(孫氏)だと今回も強調した。ソフトバンク端末は10機種で、KDDIが8機種ドコモは23機種となったが、ソフトバンクとauは秋冬モデルの発表、ドコモは秋冬+春モデルの発表であり、ドコモの端末の大半は春商戦のモデルだったこともあり「ドコモ端末の種類が著しく多いというのは全くの勘違いだ」と断言。ソフトバンクは発表したらそう遠くない期日で出荷できるという体制で発表していると話し、秋冬モデルは十分に競争力があると自信を見せた。

 料金体系も、KDDIが「au買い方セレクト」、ドコモが「バリューコース」と「ベーシックコース」を導入し、端末代金と通話料を分離した新プランを導入したが、ホワイトプランと新スーパーボーナスで十分対抗できるという。

 「端末と料金の分離プランは、約1年前からすでに導入している。料金体系をあまり複雑に数多く出し過ぎるとお客様の混乱を招いてしまう。我々は“ホワイトシリーズ”に自信を持って1本化している。他社が発表した新料金プランは、お客様の通話分数によってはかえってかなり割高になってしまうということもあるだろう。auのシンプルプランでは無料通話がなくなる。1分あたりの通話料は下がるが、端末代金は2万円高くなるので、実質的な値下げにはならないお客様がいるのではないか。ドコモもよく計算すると必ずしも実質的には値下げになっていないように感じる」と孫氏は話し、粛々と独自の料金プランを展開していくとした。

2.5GHz帯のWiMAXはMVNOで展開

 免許割当先が注目されている2.5GHz帯でのWiMAX事業については、「どこに免許が下りるのかというのは相手があることなので分からないが」と前置きしつつ、「オープンワイヤレスネットワークの大きな違いは、MVNOについて明確に、しかもクリアな形で事業パートナーに提供するという方針を出していること。ネットワークの提供会社がソフトバンクに対しても、イー・アクセスに対してもサービスをMVNOとして提供し、それ以外の第3社の事業パートナーに対しても明確にMVNOとしてオープンな形でインフラの提供を行う」とその強みをアピール。

 国民の共有資産である電波をより有効に活用するには、オープンワイヤレスネットワークのような開かれたビジネスモデルで新規参入業者などにもチャンスを提供するというフェアなモデルこそがふさわしいこと、それによって電波の有効利用が進むことなどを主張した。

 さらにドコモとKDDIは、携帯電話事業を営む上で、電波が遮蔽物などの陰に回り込みやすく、もっとも有利な800MHz帯の周波数を大量に保有していること、それに対してソフトバンクは800MHz帯を持っていないことを挙げ、「もし今回の割り当てでも、繰り返し不利な割り当てになるということであれば、いささか残念な気がする」と表明。ソフトバンクとしては、800MHz帯の電波を持っていないために1兆円規模の投資をして4万7000局の基地局を展開したという思いがある。2.5GHz帯でのWiMAX事業の免許は、ぜひとも取得したいところだろう。

 なお孫氏は、「技術的には、WiMAXを掲げる3社で大きな差はないと思う」と話した。

販売店向けの奨励金はドコモやauより多い

 また会場から「販売店向けの販売奨励金は増えているのか、それとも減っているのか」という質問が出たことを受け、孫氏は「いろいろなキャンペーンをやったり、端末ごとに配分を変えたりと、販売奨励金は毎月のように見直しをし、状況を見ながら臨機応変に対応している」と答えた。

 ただ、現在提供している販売奨励金の体系は、「1ユーザーあたりで最終的に販売店の手元に残る金額はドコモやauよりも多いはず」と話し、最も重要な業務提携パートナーである販売店はこれからも重視していく姿勢を変えないことを明らかにした。実際、11月3日から販売奨励金の見直しを行い、さらに販売店に残る奨励金が若干増えるような試作を行ったりもしているという。

 他社が分離プランを導入し、2年契約が一般的になることは、この何年かで「MY割」などの施策によって2年間の拘束がすでに一般的になってきているため、特段変化はないだろうとの見通しを示した。

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