端末の熟成期ゆえに、心のときめきが少なかった2007年:ITmediaスタッフが選ぶ、2007年の“注目ケータイ”(ライター坪山編)
ワンセグを搭載した端末が増加し、ドコモの905iシリーズはほぼフルスペックになるなど、どのキャリアの端末にも大きな不満はなくなった。こうした市場の成熟は歓迎すべきことだが、それゆえに「この端末が欲しい!」と心ときめくものがほとんどなかった。
2007年はワンセグを搭載した端末が増加し、auが本格的にFeliCaを搭載し始め、ドコモの905iシリーズはほぼフルスペックになるなど、どのキャリアの端末にも大きな不満はなくなった。こうした市場の成熟は歓迎すべきことだが、それゆえに「この端末が欲しい!」と心ときめく携帯電話がほとんどなかったというのが筆者の感想だ。そんなことを思う中、へそ曲がりな筆者なりに“注目ケータイ”をピックアップしてみた。
モバイラーの生活を変えたイー・モバイル――「D01NX」
筆者が今年もっとも満足した端末として最初に挙げるのは、音声端末ではなく、発売日に入手したイー・モバイルの「D01NX」だ。
PCカードの「D01NE」でなくCFカードのD01NXを購入したのは汎用性に期待したためだ。汎用性に関しては記事でも取り上げたように見事に裏切られたが、その点を差し引いてもD01NXは筆者のモバイルライフを激変させた。
購入当初は23区内でも電波が弱いエリアが多かったが、これも徐々に解消。屋内でも外が見渡せるような場所なら、ほとんどつながるようだ。さらに、1.7GHzという周波数帯の特性が幸いしたためか、2GHz帯を使うFOMAやソフトバンク3Gが圏外になるような屋内の奥まった場所でも使えることが多い。公衆無線LANのサービスエリアを探し歩いていた筆者のモバイルライフは激変し、D01NXのおかげでいくつかの契約を解約したほどだ。
消費電力の低さも非常に魅力的。筆者のノートPC(Lenovo ThinkPad T43)においては内蔵の無線LANよりも消費電力が低く、接続中でもデータの送受信がなければ無視できるレベルだ。ユーティリティを使用すると、なぜか消費電力が上がってしまうのだが、筆者は完全定額の契約なのでデータの送受信量を監視する必要はなく問題ない。
もちろん今でもノートPCに差しっぱなしで携行しており、当分は手放せそうにない。接続中に圏外になるとカードの抜き差しをしないと圏内に戻らないという問題があるので、この点は改善を望みたいところだ。
ワンセグではない“映像ケータイ”が魅力――「P903iX HIGH-SPEED」
マイナーな端末に終わってしまった感があるが、筆者が唯一「欲しい」と思った携帯端末は「P903iX HIGH-SPEED」だ。HSDPAによる高速パケット通信を生かし、実用に耐えるストリーミング映像が楽しめる。“映像”といえば猫も杓子もワンセグに走る中、非常にチャレンジャー的な存在だったことを評価する。
Windows Media Audioで配信されるWebラジオにも対応しており、これが予想以上に楽しい。これらの音声がBluetoothヘッドフォンで楽しめるのも魅力を倍増しており、さらにP903iまでの不便だった仕様が改められた点も合わせて、勝手が大きく改善している。
しかし、あと3ミリほど薄ければもっと売れたような気もするのが残念なところだ。
携帯電話としての作りこみに感心した「W52SA」
auの「W52SA」(三洋電機製)はソフトウェアの完成度が極めて高かった。
詳細はレビューをご覧いただきたいが、ソフトウェアについてはカタログには反映されないような細かい部分をしっかり作り込んでおり、三洋端末に固定ファンが多いのもうなずける。auの端末はソフトウェアの共通化が進みすぎたため、使い勝手という点では良い意味でも悪い意味でも個性がなくなってきていると思っていた。しかし、“端末メーカーがやれることはまだまだある”という点を改めて教えてくれた端末だった。
予定通りに店頭に並んでいれば、KCP+対応の「W54SA」を推したかった。W52SAの使い勝手を継承していることが期待できるとともに、Bluetoothが搭載したハイエンド端末なので機種変更も考えているほど。さすがに実機が登場しておらず、筆者も触れたことがないので今回は見送った。
なお三洋電機の携帯電話部門は、京セラへの売却が基本合意に達している。このソフトウェアの作りこみが、京セラ製の端末にも生かされることを期待したい。
不満は数々あれど愛すべき端末――「Advanced/W-ZERO3[es]」
レビューでも触れているように、音声端末としては不満タラタラなのが「Advanced/W-ZERO3[es]」だ。先代のW-ZERO3[es]から“1年もかけてこれですか”という印象も正直あるものの、それでも常に手放せない愛すべき存在だ。
文字入力が主体であればQWERTYキーボードの使い勝手は確実に向上しており、音声端末として十分に許容できるサイズになった。少なくとも先代のように「それ、なんのリモコン?」とからかわれることはなくなっただろうし、デザイン的にもきれいにまとまっている。また、このサイズに無線LANを内蔵したことも高く評価したい。
筆者は使い勝手を良くするための手間はさほど惜しまず、その行為がとても楽しいと思っている。嫌味ではなくこのような側面でも確かにPCに近い存在だ。先代からのソフトウェア的な改善は少ないものの、内蔵メモリの増加はタブブラウズが実用的になったという点で大きな改良点だ。携帯電話のWebブラウザではメモリ不足で特定のWebサイトが閲覧できないことがあるが、Advanced/W-ZERO3[es]はそのようなことはない。筆者はOpera、NetFront、ibis Browserの3つのブラウザを使い分けているがこれが楽しく、音声端末にはない魅力といえるだろう。
このように、ハードウェアは改善されたものの、ソフトウェアが追いついていないため、万人にお勧めするには至らない。しかし、そのポテンシャルは極めて高い。料金面においてもウィルコム同士の24時間無料通話はもちろん、パケット単価が安い点ももっと注目されるべきだ。筆者は結構な頻度でPC向けのWebサイトを閲覧しているが、データ定額で月に2000円を超えたことがない。
3G端末と比較すると通信速度面の不満はあるが、それを補うデータ圧縮サービスが用意されている。また、Webブラウザを使っていてもバッテリーの持ちが良い点も好印象だ。ウィルコム端末の魅力を改めて教えてくれた1台でもあった。
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