やっぱり“全部入り”が好き──スペック向上やカタチにうきうきした2007年:ITmediaスタッフが選ぶ、2007年の“注目ケータイ”(編集部岩城編)
新キャリアの誕生、躍進と凋落、新料金制度、新携帯販売制度、携帯新サービス……そしてそれにともなう新機種の大量投入。番号ポータビリティが始まった2006年と同様に、2007年も携帯業界の変化は激しかった。ライフスタイルやユーザーニーズを軸にした多種多様な端末が登場する中、私は改めてこう思った。やっぱり“全部入り”が好き、と。
番号ポータビリティ制度が始まった2006年末、KDDIの小野寺正社長兼会長が示唆したように、2007年もじつにたくさんの携帯新機種が登場した。それは、新機種の発売日を掲載する“携帯データBOX”コーナーが「ページが長すぎるのでもっと見やすくしろ」とおしかりを受けるほど。改めて、2007年登場の端末がずらーと並ぶさまを見ると実に壮観である。
“全部入り” なんてよい響きなのでしょう──「911T」
2007年のハイエンド端末は、今までのQVGAほどから一気にVGA、ワイドVGAと高精細になり、3インチ以上のディスプレイを採用することも珍しいことではなくなった。これに加え、ワンセグやFeliCa、HSDPAも当たり前、おそらくこれらを備えないとハイエンドとはいえないようになってしまった。
まずはスペックとデザイン。使い勝手は自分が慣れればよい、まずはスペックありきだと考える私を2007年最初にグッと来させたのが、ソフトバンクモバイルの春モデルとして登場した「911T」(東芝製)だった。
911Tは、ワンセグ、ワイドVGA(480×800ピクセル)表示対応の3インチワイド液晶、A2DP対応のBluetooth、1Gバイトの内蔵メモリ、厚さ17.9ミリの薄型スライドボディ、手ブレ補正機能付きの320万画素AFカメラ、FeliCa、そして下り最大3.6Mbpsでの通信が可能なHDSPA規格「3Gハイスピード」に対応する端末。発売日に購入し、約半年はメインでばりばり使用。2007年末現在は少し飽きてしまったので使用頻度は落ちたものの、いまだ現役で使っている。
それは、スペックそのものが現在最新の2007年秋冬モデルとそれほど劣らないのも、所有満足度が大きく落ちない理由かもしれない。もし新機種が“別格”のスペックであるならば、そちらへ所有欲が流れてしまうはずだから。ちなみに東芝製端末は911Tのインパクトが大きかったためか、2007年秋冬モデルでリニューアルモデル「920T」を投入している。
ところで、悲しいかな(樹脂素材を用いる携帯全般に言えることだが)「塗装がはげてしまう、傷ついてしまう」と、とたんに所有満足度が失せてしまわないだろうか。911Tは操作性を向上させるため、ディスプレイ部に備わる十字キーとメニューキーがうねうねと波打つデザインになっている。約10カ月経った私の911Tは、その出っ張っている“山”の部分の塗装がそろそろ限界。ついに黒っぽい下地が覗き始めた。そのほか、私のはまだ無事だが「ふと落としてしまい、豪快に傷が付く(アスファルト地面だと最悪だ)」などもそうかもしれない。
これは、今後“もっともっと”と望まれるであろう携帯の薄型化にも、個人的には多少影響を与えると考える。例えば、最近は折りたたみ最薄部で10ミリという薄型モデルも登場するが、この数値は一応最薄部。カメラやヒンジ部分はその値よりやや厚く(それでも薄いのだが)、結果、段差のある形状になっていることが多い。そうでなくても“角”はどうしても擦れやすく、ここから塗装がはげていってしまいがちだ。
今後、分割払いや“年数縛り”付きで携帯を購入してやや長期間使い続けることも想定するとなれば、“経年劣化が少なそう”な端末を選ぶ、という選択ポイントも考えなければならなくなったりして(それとも、同じく極薄化と同時に採用例が増えた金属素材の多用活用で、そんな経年劣化も気にならなくなっていくのだろうか。ただ……デザインのハヤリ廃りの移り変わりも早いしなぁ)。
“なんかめんどくさい……”をきれいさっぱり消し去ってくれた端末──「D01NX」
私は仕事柄、ノートPCを常時持ち歩き、常に通信手段を確保しておくよう半ば強制的に“管理”されている。というのは大げさだが、あながち嘘ではない。それが、3月31日のイー・モバイル開業とともに導入した「D01NX」で、モバイル利用時に感じていた“なんかめんどくさいなぁ”が消えた。
D01NXの導入前は無線LAN対応の店舗(喫茶店やファストフード店、ファミリーレストランなど)を探し、無線LAN環境が確保できない時は、ウィルコム(旧DDIポケット)のPCカードスロットから“出っ張らない”名機(と私は思っている)「AH-H407P」(旧本多エレクトロン製)を差しっぱなしで運用。さらに通信速度がどうしてもがまんできない状況時に、USBあるいはBluetooth接続で携帯によるデータ通信へ切り替えて使用していた。
ウィルコムは定額ではあったものの、AH-H407Pの最大4xパケット通信の実質速度はがまんできないことが多かった。なにより、遅いわりに月額料もやや高額だった。
USBないしBluetooth接続する携帯もしかり。接続しても認識しないことがたまにあり、時間とバッテリーの無駄だぁと思いながらやむなしにPCを再起動することもあった。しかも当時の携帯データ通信はPHSよりは高速だが“定額”がまだなかった(2007年後期、ドコモやKDDIもデータ定額を開始した)。それを忘れて“パケ切り傷”(“パケ死”ほどではない)してしまった時の容赦ない携帯会社の請求額と、“ソウイエバソウダッタンダヨ”感を呪ったものだ。
速さと定額、場所も自由(都内で活動する分には)。何より、「あ、席はご自由にどうぞ。まずはドリンクバーですね(マタキタヨ)」と“常連対応”されてしまうほどになってしまった某ファミリーレストランに固執せずに済むようになったのがよい。何とも小市民な話ではあるのだが。
この先、どんな“ギミック”が──「P905i」「W44S」「F904i」「D800iDS」
ストレート、折りたたみ、回転2軸、スライド、サイクロイド、横開き、裏返し、そして……何? 使い勝手はそれぞれだが、人はその形状やデザインを携帯の購入ポイントの1つに据える。
ワンセグ携帯の流行とともに、携帯メーカー各社はワンセグを軸にした映像視聴スタイルを工夫し、提案してきた。2007年は携帯の機能向上や新サービスの開始とともに、次はどんな形になるのか新機種の発表ごとにうきうきさせてくれたものだ。
2006年末に発売されたauの「W44S」(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製)は、ディスプレイが横にも開く“デュアルオープンスタイル”と横に飛び出たあのヒンジで、いい意味でも悪い意味でも「うわ、何だこれは」と驚かされた。画期的と思わせたこの端末もディスプレイの解像度や本体の厚さなど、約1年で少し時代遅れに思えてしまうのが携帯の進化の著しさを端的に物語るものの、カスタマイズ性やスケジュール表示と連動できる視認性のよい待受機能全般、日本語入力システムPOBox Proの相性も合い、2007年前半は好んで使い続けた。
ドコモの「F904i」(富士通製)も、左右へディスプレイを倒せる“ヨコモーション”なるギミックを備えた端末。富士通は、2006年冬モデルの「F903i」からこの機構を採用したが、F904iでさらに洗練された。例えばシャキッと右に倒すとワンセグ、左に倒すとカメラが起動する、その“起動の仕方”がきちんとギミックと連動していたのも心揺らされる機能だった。これは、2007年冬モデルの「F905i」にも継承され、さらに進化している。
W44Sの厚さや“出っ張り”の有無、基本機能など、細かいながらいくつか感じていた不満の多くを解決していた“好ましいギミック端末”が、ドコモの「P905i」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ製)だ。P905iはまだ使い始めたばかりなので、今後、不満も多々出てくるとは思うが、まず、ディスプレイが横に開く「Wオープンスタイル」を実現するための“魔法のフック”なる第2のヒンジの構造にグッと来てしまった。
そのほか、完成の域に達しつつあると思えるシャープのAQUOSケータイ(とくにソフトバンクモバイルの「920SH」)、国内初の2画面ケータイ「D800iDS」(三菱電機製)も印象に残る。D800iDSの登場は、かつて全面液晶の(当時)J-フォン「J-PE02」(パイオニア製/1999年発売)という端末に「うわ、これすげぇ」と感じたのを思い出したものだが、これで終わりではなく、今後、さらにどのような「これすげぇ」を見せてくれるか期待したい。
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